現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第70回は、総合ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」などを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)をご紹介します。

  • PPIHは「ドン・キホーテ」や「アピタ」などを運営。海外にも出店を進める
  • PPIHはプライベートブランドとインバウンドの効果で同業より高い利益率を確保
  • 足元の株価はレンジ内での推移だが、年後半は消費の伸びや海外事業の改善に期待

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)はどんな会社?

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、総合ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」などを運営しています。

主要の国内ディスカウント事業では、「ドン・キホーテ」を中心に特化型店舗の「お菓子ドンキ」なども手がけており、営業利益の約5割を稼いでいます。
次いで総合スーパーの「アピタ」「ピアゴ」を手がける国内GMS事業は、営業利益の約2割を占めています。

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さらに成長事業と位置づける海外事業では、米国やハワイ、シンガポール、タイなどで出店を進めています。
営業利益の割合はまだ4%程度となっており、今後の成長がグループ全体のカギとなっています。

同社は1978年に創業者の安田隆夫氏が、前身の18坪の雑貨店「泥棒市場」を東京都杉並区に開店し、創業しました。当時としては珍しかった深夜12時までの開店や、多く雑貨を並べた品揃えが受け、たちまち年商2億円を超える繁盛となりました。
その後は1989年にドン・キホーテの1号店を東京都府中市に開設。1997年に株式を店頭公開、2006年には海外展開を始めるなど常に成長を続けています。
実際前期2023年3月期まで34期連続増収、営業増益を続けている点も評価されるポイントです。

ちなみに社名のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスには、日本のみならず環太平洋地域において小売業の有力な企業として発展していくという決意が込められています。

ドン・キホーテ
免税店でもあるドン・キホーテは外国人観光客にも人気だ
yu_photo / Shutterstock.com

プライベートブランドとインバウンドを軸に収益性拡大

同社の強みは、顧客最優先主義を貫きながら高い利益率を確保している点です。前期の営業利益率は6.5%とイオン(8267)の約2.6%、セブン&アイ・ホールディングス(3382)の約4.7%を上回っています。

強みの1つは、利益率の高いプライベートブランド(PB)商品です。
同社のPB商品は、価格の設定や売り場への導入の決定の権限を店舗の現場が持っている点が特徴です。また商品の開発に際しても現場の従業員が議論に参加し、顧客最優先主義を体現しています。
さらに、スケールメリットを活かすため直接貿易商品の強化や工場統一化、物流の効率化などの最適化に常に取り組み、利益率を向上させています。

強みの2点目はインバウンド消費の獲得のための施策です。
アジア地域で出店を加速していることにより、ブランドの認知度が上昇しています。インフルエンサーや旅行会社を通じ、SNSを介してプロモーションを強化しています。結果的に海外での来店客が国内で来店し、SNSでその様子を発信するといった来店自体が体験になるブランディングに成功しているのです。

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)の業績や株価は?

2024年6月期の決算は、売上高が前期比8%増の2兆860億円、営業利益が28%増の1350億円と、過去最高かつ増収増益の見通しです。5月13日にインバウンドやイベント需要の増加や利益率の高いPB商品の販売好調を受けて、通期予想を上方修正しています。

【図表1】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)の株価(週足、2021年11月~直近)
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)の株価(週足、2021年11月~直近)
【図表2】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)の株価(月足、2015年1月~2024年6月)
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)の株価(月足、2015年1月~2024年6月)

7月5日の終値は3951円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約40万円、配当利回りは0.53%です。

株価は3月に上場来高値4122円を付けたのちは調整含みとなり、レンジ内での株価推移が続いています。しかし年後半にかけてはインフレの一巡や賃上げによる消費の伸びが期待されます。成長の期待される海外事業も北米やアジア地域での改善の兆しが見え始めている点も評価できます。

チャートの週足、月足ベースでは中長期の上昇トレンドは崩れておらず、再度の上昇再開を狙うタイミングかもしれません。

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