「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、「国の成長に託す投資」を実現する方法として、「インデックスファンド」について考えていきます。

「国への投資」についての2つの課題

前稿では、話の後半に

「お金の価値を守るための投資」……企業ではなく、国に投資するという考え方は、いかがですか?

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ということを申し上げました。そして、その投資先の選び方として、

IMFの見通しから、「GDPの伸び」が年2%以上の国や地域を探して選べば良い

ということも申し上げました。その前稿では、2つの課題を残して締めくくりました。

課題の1つ目として、実は企業の成長とGDPの伸びは、完全にイコールではありません。
課題の2つ目として、そもそも「国への投資」はどのように行うのか、という点です。

前稿の最後に申し上げた通り、本稿では課題の2つ目から考えてみたいと思います。
株式は「トヨタ」や「アマゾン」といった企業の名前で上場するもので、決して「日本」や「アメリカ」などの国単位で上場しているわけではありません。
それでは、どのようにしたら「国への投資」ができるのでしょうか?

「国への投資」って、どうしたらいいの?

結論から申し上げてしまいますと、インデックスファンドの活用を検討することになります。

「じゃあ、インデックスファンドって、ナンなのさ?」

ファンドとは、投資信託のことです。
では、インデックスとは何のことでしょうか?

インデックス=株式市場全体の傾向を示す数字

「インデックス」を具体的に挙げると、我が国では「日経平均株価(日経225)」や「東証株価指数(TOPIX)」、アメリカの「ダウ・ジョーンズ工業株30種平均(NYダウ)」が有名です。テレビやインターネットのニュースなどでご覧になられることも多いと思います。

株価指数イメージ
代表的な株価指数は新聞やテレビのニュースなどでも目にする機会が多い

インデックスとは、株式市場(東京証券取引所やニューヨーク証券取引所など)の動きを示す数字のことです。インデックスの値動きによって、その国の株式市場全体の値動きの傾向を知ることが可能です。

インデックスがその国の株式市場全体の値動きの傾向を示すということは、もし「TOPIXに投資をする」「NYダウに投資をする」ということができれば、それは「日本に投資をする」「アメリカに投資をする」ことと同じになるのではないでしょうか?

インデックスファンド=インデックスに連動する投資信託

そんな「TOPIXに投資をする」「NYダウに投資をする」という機能を備えた投資信託が、インデックスファンドというわけです。
インデックスファンドは、TOPIXなどのインデックスと連動し、ほぼ同じ値動きになるように作られた投資信託です。

例えばTOPIXであれば、TOPIXに連動するインデックスファンドを1万円で買ったら、東京証券取引所の第1部市場に上場している2000社以上の企業の株式を1万円でまとめ買いするのと同じことになります。日経平均株価であれば日本企業225社、NYダウならアメリカのトップ企業30社にまるごと投資するのと同じ効果が得られます。中国のような、GDPが年6%くらい成長する見込みの国の株式市場にも投資できます。

インデックスファンドは、ほとんどの証券会社や銀行などの金融機関で取り扱っており、つみたてNISAの対象商品にも多く選ばれています。

インデックスへの投資は、自分のお金を「国の成長に託す」ことになるのか?

ということで、さっそく具体的な例を1つ挙げてみましょう。

表は、アメリカのGDPの推移(赤い折れ線)と、NYダウの年平均の推移(青い折れ線)をグラフにしたものです。
NYダウはアメリカのインデックスの1つで、アメリカを代表する30社の株価の平均を表します。つい最近も、NYダウが史上最高値を更新したというニュースが連日のように報じられていましたが……。

【図表】アメリカのGDPとNYダウの推移
アメリカのGDPとNYダウの推移
※NYダウは各年末の終値

いかがでしょうか?
株価とGDPの動きは、一致しているとはいえないですよね。

「NYダウへの投資をもって『アメリカのGDPの成長に託す』というのは、かなり無理があるのでは?」

という読者の冷ややかなお声が聞こえてきそうです。

でも、ここで少し、視野を広げてみてご覧ください。
赤い折れ線グラフはなだらかに右肩上がりの傾向を示しています。アメリカのGDPが順調に増えているということは、アメリカの経済が時間の経過とともに成長している、ということが言えそうですね。
一方、赤い折れ線グラフに比べて、青い折れ線グラフは、ナンともまあダイナミズムと申しますか、上がったり下がったりが激しいですね。

確かに、読者の冷ややかなお声も分かります。
でも、ここでもう一度申し上げます。視野を広げて、ご覧ください。
2000年以降の長期間で見てみると、青い折れ線グラフ、つまりアメリカの株価も「時間の経過とともに右肩上がりの傾向」と言えるのではないでしょうか?

課題の1つ目「企業の成長とGDPの伸び」も、ここで解決?

さて、アメリカのGDPの推移も、インデックスの1つであるNYダウの年平均の推移も、いずれも「時間の経過とともに右肩上がりの傾向」という点をご確認いただきました。

さて、前稿の最後と、本稿の冒頭でも申し上げました「課題の1つ目」についてです。

「実は企業の成長とGDPの伸びは、完全にイコールではありません」

という課題でしたが、表をご覧いただければ、一目瞭然。
「完全にイコールではありません」どころか、全く違う動きですね。
しかし、長い期間で見れば、「時間の経過とともに右肩上がりの傾向」という点は同じであるといえます。

ということで、インデックスへの投資は「(自分のお金を)国の(GDPの)成長に託す」ことになるのを確認できました。

1つの国が成長し続けるとは限らない

インデックスファンドを使えば、「GDPの伸びが年2%以上の国や地域」を選んで投資することが可能です。でも、現時点のGDPの伸び、つまり国の成長が、この先も続いていくかどうかはわかりません。
当然、以下のような疑問をお持ちの読者もいらっしゃると思います。

「一国を代表する人物の“つぶやき”で国政が左右されてしまうような国で、ホントに良いのか?」
「(前稿のGDP伸び率の表から)インドなどの新興国はGDPの伸び率が大きいようだが、まだまだ国民は経済的に厳しいのでは?」
「そもそも、コンスタントに年2%以上の成長を実現している国なんてないのでは?」

はい、おっしゃる通りです。

しかし、インデックスファンドは、何も「アメリカだけ」とか、「日本だけ」など、1つの国のインデックスへの投資だけではありませんよ。
ということで、次稿からは「分散投資」について考えてみたいと思います。

〈お断り〉
本稿では、「読者の皆さまのわかりやすさ」を慮って、日経225やTOPIX、それにNYダウなどを例として挙げました。決して、これらのインデックスファンドなどへの投資をおすすめしているわけではありません。

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