宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。新しいNISAのスタートを控える中、金融機関から投資を勧められる機会も増えているようですが、これから投資を始めようか迷っている方に向けて、「投資初心者が陥りがちな失敗」についてお伝えします。

  • インフレの日本では資産運用が重要。非課税制度のNISAを正しく理解したい
  • NISAでやってはいけないのは「人任せにする」「勧められるまま買う」
  • まとまったお金で一気に買うことや、友人が買った商品をそのまま買うのも避けたい

金融商品を売る側に求められる金融リテラシー

【質問】
NISA、新NISAと、銀行に行くたびに「した方が良いですよ」と声を掛けられます。そもそもNISAって何なのかもわからないし、何か怪しいような感じがするので、聞いてもいませんが、知人からも「やった方が良いよ」と言われています。私もNISAをやるべきか迷っていますが、めんどくさいのも嫌です。私でも簡単にできるのでしょうか?

新しいNISAが始まるまで3か月を切った今、金融機関に出かけると、NISAの話を聞かされることが増えてきています。今回の相談もその中の一つですが、まだまだ少額投資非課税制度が浸透していない地方では、いまだに「NISAが金融商品」だと思っている人も多くいるのです。お金の知識も含めた教育が必要と感じます。
販売側がただただ専門用語を並べるだけでは理解することが難しいので、そのような方には具体的ではなく、簡潔な説明が求められていると思います。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

日銀もどうやら、国債価格を維持するためのイールドカーブコントロールは終わらせながらも、ETF(上場投資信託)は買って株価の維持はしたいようで……緩やかなインフレと、完全なデフレ脱却とのバランスに右往左往しています。

ロシアによる戦争、パレスチナ問題による紛争と地政学リスクも勃発した今、エネルギー価格を含め、短期的にも波乱があるかもしれません。金融商品を売る側にも、経済の仕組みやお金の流れ、そしてお金の価値とは何かを理解し、さらには心も豊かになれるような、金融リテラシーの再構築が必要になってきています。

例えば、非課税という言葉一つにしてもわかりづらく、説明しても預金者はうなずくだけで、本当に理解できているか定かではありません。
そんな場合は、

日本ではお金が増えたら増えた分、税金として約20%のお金を納める義務があります。預金に付く微々たる利子でも、きちんと税金としてお金を納めているんですよ。
物価高でインフレに強いリスク商品などでお金を運用している人は、運用で儲かっても税金がかからないようにしています。お金が増えても、税金がタダでオッケーというわけです。それができる制度をNISAというのです。

などといった簡単な説明によって、販売する側もワンクッション置いて買う側に理解を深めてもらいながら、販売に時間をかけるなどするか、もしくは助言者に意見を求めるなどの工夫が必要だと感じます。

とにかくインフレに突入した日本、資産を増やすには預貯金から投資へとチェンジしなければ、お金の価値は減り続けて、預貯金が意味がないものになります。

そこで今回は、初めてNISAで運用商品を買う人がやってはいけないことを後ろからランキングにしてみましたので参考にしてください。

初めてのNISA“だめよーだめだめ”ランキング

〈第5位〉「毎月お金が入ってくる商品」だから買う

さて今回の新NISAでは、約6000本ある投資信託のうち、買える商品は2000本くらいしかありません。NISAと違って、新NISAは商品が決まっています。
当たり前のことですが、今までは全ての投資信託が買えたNISAと違って、新NISAでは商品が絞り込まれていますので、非課税制度が使えるのか確認が必要になります。

新NISAを利用するのなら売る側も勧めないと思いますが、「決算頻度が毎月で、分配金が定期的に入る商品」や「信託期間(運用期間)が20年以下」などの投資信託は、新NISAでは選ばれていません。分配金などは再投資して複利運用を重視するなど、新NISAでは長期投資を基準に商品が選ばれています。間違えて別の商品を買わないことです。

〈第4位〉「お金のことは分からない」と商品選びを人任せにする

「金融取引は怪しい? 危ない?」
「株式や証券取引は金持ちのやっていることだ」

そう思っている方は、その固定観念を変えてください。今は高度成長期の昭和ではなく、税収不足の令和です。老後の年金も含めて、未来の自分を誰も助けてくれません。今やれることはやっていきましょう。

最低2冊くらいのマネー雑誌などを自分で読んで情報を得て、勉強会などがあったら率先して参加しましょう。
「どうせ自分では分かるわけがないから、プロに任せよう」などと、お金のことを他人に全部任せるのは本末転倒です。自分でもある程度、お金の配分をどうすればいいか? そのための投資商品はこれでいいのか? など判断できる力がないと、詐欺でだまされることもあり得ます。

情報収集は金融庁や証券会社が提供しているコンテンツで学ぶこともできますが、やっぱり身近にファイナンシャルプランナーなどの専門家を探して、相談できる師匠を探すのが早道かもしれません。
私の場合、直接運用会社に電話やメールなどして不明点を聞き、セミナーにも何度も足を運びました。何事も興味を持って行動するに限ります。

〈第3位〉「今、この商品が人気ですよ」などと勧められたまま買う

人気商品だという言葉の裏には、売る側の「買ってもらいたい商品」という意図が隠れている場合もあります。
投資信託にはコストが掛かっています。金融機関の「売りたい」=「手数料が欲しい」と置き換えてみて、立ち止まってもう一度考えてみることも大切です。

NISAのスタート時には、インデックス型商品などの信託報酬が低いノーロード(購入時手数料なし)のものが中心になってくると思われますが、コストだけでなく、アクティブ商品も含めてパフォーマンスの見極めも必要になります。
とりあえず話を聞いて、持ち帰って調べるのが一番ですね。

金融商品を勧められる家族
金融機関で投資信託などを勧められたときは、即決せずに一度持ち帰って調べてみる

〈第2位〉まとまったお金で、一気に商品を買う

前回でも述べていますがたとえ5万円のお金だとしても、1万円を5回に分けて、毎月一回同じ日に買うなどして、期間を空けて買ってください。

買う期間を分けることで購入単価を下げる効果がある「ドルコスト平均法」は安心できる一方で、一気買いは購入単価が上がってしまうことがあり、お金を減らすリスクも高くなります。
まとめ買いは、リスクを負えるベテラン投資家のやっていること。投資初心者にとっては、積立投資を長く続けることが運用成功の第一歩になります。

長期投資に合った投資信託の買い方・選び方

〈第1位〉友人・知人が買ったから、自分も買ってみる

そしてだめだめランキング1位はこれしかありません。多くの人が、これに当てはまる経験をしたのではないでしょうか?

リスク商品を買うのは全て自分の責任です。投資においては、他人ほどあてにならないものです。たとえ友人に言われた通り投資をして損したとしても、相手を責めてはいけません。自分の責任しか残りません。

金融リテラシーが未熟な日本では、「友人が買ったから安心、大丈夫」は絶対ありません。自分にとっては初めての商品ですから、自分自身で調べて、慎重に見極めることです。

投資を勉強する
リスク商品の運用は自己責任。自分自身で判断するためには、金融リテラシーを高める努力が大切

新NISAになって生涯投資枠が1800万円になり、期間の制限もなくなって一生涯非課税で運用できるのは確かにありがたい話ですが、いち社会人として、少額でもコツコツと積立投資をしていければ、それで充分だと思っています。何よりも心が豊かになるよう、生活を楽しむことが先決ですから。

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