「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回も「50歳以上の方のためのNISA」という切り口で、インカムゲインとも呼ばれる株式の配当金、投資信託の分配金に注目します。
- NISAは「確定した利益」が非課税となる。配当金などのインカムゲインが該当
- 配当利回りの高い株式を保有するのは有効だが、無配や倒産の可能性がある
- 投資信託には「特別分配金」がある。分配金が利益となる高利回りのETFが狙い目
七夕決戦と言われた都知事選挙。56人という、掲示板が足らなくなってしまうほどの候補者数はさまざまな議論を呼びました。ちなみに筆者宅の近隣の掲示板は、せいぜい10箇所が埋まっていたくらいでした。都知事選は選挙の目的と申しますか、争点がイマイチでしたね……。皆、どんな東京都にしたいのか、どんな首都にしたいのかが、ハッキリしませんでした。
NISAの目的って?
よく「NISAを始めたい」とか、「NISAに興味がある、やってみたい」というお声を耳にします。そもそも、NISAって何でしょうか?
NISAのメリットは、株式や株式投資信託(以下、単に投資信託といいます)から生じる利益を非課税で受け取れるというものです。しかも、その利益とは「確定した利益」でなければなりません。いわゆる含み益の状態では意味がありません。
「確定した利益」を確実に得ることができる方法は?
投資とは「未知の未来への投資」ですから、「利益を確実に得る」ということは断言できません。
しかし、キャピタルゲイン(売却益)に比べると、より確度の高い利益があります。インカムゲイン(保有することで得られる利益)です。
NISAで非課税の対象になるインカムゲインは、株式なら配当金。投資信託なら分配金です。
配当利回りの高い株式を買って、保有し続ければ良いのか?
2024年のNISAから、非課税期間は「無期限」となりました。ですので、図表1にあるような配当利回りの高い株式を買って保有し続けるという考え方は間違いではありません。しかし、いかに配当利回りの高い株式とはいっても、「確実に配当金を受け取れる」という約束はできません。事実、コロナ禍において、配当金の支払いを止めた企業もありました。コロナ禍後は、配当金の支払いが復活しましたが。
NISAは非課税期間が「無期限」なのですから、やはり時間をかけて配当金を受け取ろう、という考え方の方もいらっしゃるでしょう。しかし、いかに配当利回りの高い株式とはいえ、個別の株式では倒産の可能性もゼロではありません。
順位 | コード | 名称 | 配当利回り | 決算年月 |
---|---|---|---|---|
1 | 3205 | ダイドーリミテッド | 11.57% | 2025/3 |
2 | 5950 | 日本パワーファスニング | 11.31% | 2024/12 |
3 | 4845 | スカラ | 6.09% | 2024/6 |
4 | 197A | タウンズ | 5.94% | 2024/6 |
5 | 2497 | ユナイテッド | 5.91% | 2025/3 |
6 | 8975 | いちごオフィスリート投資法人 | 5.87% | 2024/10 |
7 | 3136 | エコノス | 5.74% | 2025/3 |
8 | 3470 | マリモ地方創生リート投資法人 | 5.72% | 2024/12 |
9 | 8890 | レーサム | 5.66% | 2025/3 |
10 | 2408 | KG情報 | 5.65% | 2024/12 |
株式の配当よりも、投資信託の分配金がいい?
投資信託なら、複数の銘柄にまとめて投資することになり、倒産リスクもグッと低くなります。しかし、ファンドとも称され、銀行でも販売されている投資信託の分配金は、お勧めではありません。
別の機会に具体的に申し上げることにしますが、ざっくりと説明すると、投資信託の分配金は「特別分配金」(元本払戻金ともいいます)になることがあるからです。特別分配金は利益ではないので、そもそも非課税です。NISAとは全く無関係なのです。
結論は「分配金利回りの高いETF」
同じ投資信託でも、株式市場に上場しているETFの分配金には、特別分配金がありません。これは株式投資信託の分配金とETFの分配金とで、その原資の違いによるものなのですが、詳細は別の機会に述べることにします。
ETFの中には、分配金利回りの高いものもありますし、名称の中に「高利回り」をうたっているものもあります。NISAの成長投資枠では、この「高利回り」のETFの活用が視野に入ることになります。
ただし、投資は自己責任で。
順位 | コード | 銘柄名 | 分配金利回り |
---|---|---|---|
1 | 2865 | グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF | 9.79% |
2 | 2868 | グローバルX S&P500・カバード・コール ETF | 8.20% |
3 | 1497 | iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債ETF(為替ヘッジあり) | 5.75% |
4 | 2866 | グローバルX 米国優先証券 ETF | 5.50% |
5 | 2253 | グローバルX スーパーディビィデンド-US ETF | 4.93% |
6 | 1325 | NEXT FUNDS ブラジル株式指数・ボベスパ連動型上場投信 | 4.86% |
7 | 1566 | 上場インデックスファンド新興国債券 | 4.81% |
8 | 1495 | 上場インデックスファンドアジアリート | 4.76% |
9 | 2519 | NEXT FUNDS 新興国債券・J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(為替ヘッジなし)連動型上場投信 | 4.54% |
10 | 2622 | iシェアーズ 米ドル建て新興国債券 ETF(為替ヘッジあり) | 4.38% |