現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第72回は、電線や光ファイバーケーブル、自動車のワイヤーハーネスなどの大手メーカーであり、グローバル展開にも積極的なフジクラ(5803)をご紹介します。

  • フジクラは光ファイバーなどの大手メーカーで、売上高の約7割が海外
  • 内製による開発力とコストパフォーマンスが強み。国内外で設備投資を進める
  • 2025年3月期は大幅な営業増益を見込む。AI需要拡大で株価の早い戻りに期待

フジクラ(5803)はどんな会社?

フジクラ電線ケーブルや光ファイバーケーブルの大手メーカーです。古河電気工業(5801)、住友電気工事(5802)と並んで電線御三家とも呼ばれています。
自動車向けでは、情報や運動エネルギーを伝達するワイヤーハーネス、エレクトロニクス向けでは、フレキシブルプリント配線板(FPC)などが主力製品です。

1885年(明治18年)に創業者の藤倉善八翁が東京・神田淡路町にて、絹・綿巻線の製造を開始しました。その後1945年(昭和20年)に戦災で主力工場が全焼する苦難の中、戦後復興のためのインフラ需要で光ファイバーや電線を中心に社業を発展してきました。

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1992年(平成4年)には藤倉電線から株式会社フジクラへと社名変更を行いました。長年の主力商品の電線から、電子材料や光システムといった新規事業分野に進出するため、新たな企業イメージをアピールしました。
またグローバルでの進出も順調に進み、現在では売上高の約4割が米国、約2割がアジア、その他が約2割と、合計7割が海外からの売上高となっています。

内製を武器に光ファイバーケーブルなど戦略製品を生産

光ファイバー
フジクラは大量のデータ伝送が可能な光ファイバーケーブルの戦略製品を、内製により生み出した(写真はイメージです)

フジクラの強みは、長年創造的なものづくりを自社で行いつつ、信頼性の高い製品をコストパフォーマンスよく生産できる技術を高めてきた点です。新製品の試作段階から、事業部門と一体になって、量産を見据えた生産技術開発をスタート。多くの生産設備を内部で作る内製を強みとしています。

光ファイバーケーブルの戦略製品の「SWR(Spider Web Ribbon)」も内製により生み出された製品です。複数の光ファイバー心線を間隔を空けて接着した独自のテープ心線で、柔軟性に富んでいるため、細径化、高密度化し大量のデータ伝送が可能な点が特徴です。

現在、AI(人工知能)による大量のデータ処理のため、世界各国でデータセンターの建設が急ピッチで進められています。こうした中でデータを伝送するための光ファイバーケーブルも需要が拡大しており、将来的にも収益の柱として期待されています。
同社は光ファイバーだけでなくコネクターや融着機、配線部材などの関連製品も手がけています。データセンター内の光ケーブルの高容量・高密度化が進めば、フジクラの「SWR」のような高品質品がさらに求められるとみられ、同社は国内外で生産設備への投資を進めています。

フジクラ(5803)の業績や株価は?

フジクラは8月8日に、今期2025年3月期の業績見通しを上方修正しました。25年3月期は売上高が前年同期比9%増の8700億円、営業利益が28%増の890億円と大幅な営業増益を見込んでいます。売上高、営業利益ともに過去最高の予想です。

直近の24年4~6月期は売上高が前年同期比15%増の2183億円、営業利益が95%増の244億円と非常に好調でした。
情報通信事業部門において、生成AI需要拡大を背景とした光ファイバーケーブルなどの堅調な需要が見込まれます。自動車向けは自動車生産の復調や生産性向上、コスト転嫁による値上げがプラスに働いています。

【図表】フジクラ(5803)の株価(2024年4月~直近、週足)
フジクラ(5803)の株価

8月9日の終値は3038円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約30万円、予想配当利回りは2.14%です。

株価は7月11日に上場来高値3605円を付けたのち、相場全体の下落もあり8月5日に2210円まで調整しました。しかしAIの拡大によるデータセンターの増設への投資家の関心は高く、フジクラなど光ファイバー関連銘柄への注目が集まっています。
前日の決算発表を受けて8月9日はストップ高となりましたが、直近の予想PER(株価収益率)は約14倍と割安感のある水準で、今後の業績の拡大への期待を考えると株価の戻りは早いのではないかとみています。

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