現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第73回は、沖縄でスーパーマーケットやショッピングモール、他企業のフランチャイズなどを手がける地域最大の小売企業、サンエー(2659)をご紹介します。

  • 沖縄の小売業ナンバーワンのサンエーは、インバウンドや観光の好調が業績の追い風
  • 2025年2月期は過去最高益を見込む。ネットスーパーやDX機器の導入を進める
  • 8月の日本株の急落からもすぐに戻す。予想PER・PBRともに割安感

サンエー(2659)はどんな会社?

サンエーは沖縄県を中心に、沖縄本島や石垣島などの離島でショッピングモールやスーパーマーケットなどを展開する地域密着型の企業です。沖縄県での企業規模は大きく、2022年の沖縄県企業売上高ランキングでは、沖縄電力(9511)に次いで2番目です。

創業者の故折田喜作氏が1950年に宮古島市に創業した、雑貨店のオリタ商店が同社の前身です。戦後の物不足の中で、折田氏は少しでも人々の生活を支えたいという思いで同社を設立しました。その後、衣料品などにも取り扱いを広げ、1970年に社名を現在の「サンエー」として那覇市に1号店を出店しました。

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その後着実に事業を拡大し、2006年に東京証券取引所市場の第一部(現在のプライム市場)に上場しました。ローソンなど他企業との合弁会社の設立、マツモトキヨシ、エディオン、良品計画などとのフランチャイズ展開も進め、沖縄県の小売りナンバーワン企業となっています。

インバウンドや観光で湧く沖縄経済の恩恵

サンエーの強みは、インバウンド(訪日外国人)や観光で好調な沖縄の経済の恩恵が業績の追い風となっている点です。沖縄県の資料によりますと、2024年6月の入域観光客数は前年同月比12%増の74万人と、31カ月連続で増加しています。

那覇市・首里城
コロナ禍が明けて、国内外の観光者数が増えていることが沖縄の小売業にとって追い風となっている

また、若年層の増加も消費の基調を支えています。沖縄県の人口は本土復帰直後の1972年の95万人から、24年3月には146万人と増加傾向が続いています。また、1人の女性が一生に産む子供の数は平均1.76人と、全国一となっています。

円安によるインバウンド需要の増加に加え、大型クルーズ船などの寄港、リゾートホテルの新設などにより、沖縄県内の小売り企業の売上高は堅調な推移が続いています。2025年には、沖縄本島北部にジャングルをテーマとした巨大テーマパーク「ジャングリア(JUNGLIA)」が開業予定です。総面積は60ヘクタールと東京ドーム約13個分の広さの敷地で、アトラクションやホテル、スパなどリゾート施設を満喫することができます。北部で有名な「美ら海水族館」とともに、沖縄県の大きな集客施設となることも期待につながっています。

サンエー(2659)の業績や株価は?

サンエーの今期2025年2月期は営業収益が前期比4%増の2361億円、営業利益が1%増の166億円と増収増益を見込んでおり、ともに過去最高を予想しています。インフレによる値上げで収益力の改善が期待されます。

また、前期にリニューアルした石垣島のサンエー石垣シティーでは品揃えを充実させるとともに、ネットスーパーを導入するなど顧客満足度を高めており、増収効果も織り込んでいます。浦添西海岸のパルコシティは開業5周年となる今年、秋の改装で新規テナントが出店するほか、県内のクリエイターやショップを集積させたイベントを開催する予定です。フルセルフレジやタブレットオーダーシステムなどのDX機器の積極導入により、人手不足に対応した生産性の改善も続けています。

【図表】サンエー(2659)の株価(2022年4月~直近、週足)サンエー(2659)の株価(週足)

8月23日の終値は4945円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約50万円、予想配当利回りは2.22%です。

株価は7月25日に年初来高値5280円を付けたのち、8月5日の日本株急落で4615円まで下落しましたが、その後すぐに戻りを見せています。沖縄の観光産業のさらなる発展による経済の好調で今期も最高益更新が予想される中、2015年の上場来高値6520円を試す展開は十分に期待できます。

業績成長ととも配当性向も引き上げを続け、増配と株価上昇の2つの面で株主にリターンを提供しています。予想PER(株価収益率)は13倍、PBR(株価純資産倍率)は1.1倍と割安感があることも投資妙味につながっています。

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