現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第75回は、スマートフォン向けの手ぶれ補正ソフトのほか、車載カメラ向けソフトなど画像解析関連のソフトウェアを提供するモルフォ(3653)をご紹介します。

  • モルフォは画像処理技術に優れ、ソフトウェア開発を行う東京大学発のベンチャー
  • スマホ向け手ぶれ補正ソフトのほか車載カメラ、OCR、見守りなど対象は幅広い
  • 他企業との提携やスマホの市況回復で業績の黒字転換を見込み、株価の戻りを期待

モルフォ(3653)はどんな会社?

モルフォは東京大学発のソフト開発ベンチャーです。2011年に東証マザーズ市場(現在の東証グロース市場)に上場しました。画像処理技術に優れており、手ぶれ補正ソフトなどを提供しています。

主力のスマートフォン向けでは、シャオミ(小米)などの中華圏メーカーを中心に多くのメーカーに手ぶれ補正ソフトや画像処理ソフトを提供しています。同社の製品の強みは、機能をすべてソフトで実現しているため製品の小型化が可能となり、壊れにくく消費電力が少ない点です。

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売上高はソフトを提供した機器の出荷台数に応じたロイヤルティー収入や、保守・実装支援のサポート収入、画像処理エンジンなどを提供しソフトの開発を請け負う開発収入などに分かれています。

同社は、2004年に平賀督基代表取締役社長によってソフト開発ベンチャーとして設立されました。設立後に開発した手ぶれ補正ソフトがNTTドコモのスマートフォンに採用され、ドコモから出資を受けるなど事業を拡大していきました。

スマートフォンで写真撮影
モルフォはスマートフォンの手ぶれを補正するソフトウェアなど、画像処理技術に強みを持つ

車載・DXの成長分野への期待

今後は、同社が成長領域として注力する車載やデジタルトランスフォーメーション(DX)分野の成長が見込まれます。

車載カメラ向けでは、前方を走行中の車の急ブレーキなどによる接近を認識したり、道路標識などを検知・分析する技術などを研究しています。2015年には自動車部品大手のデンソー(6902)と資本業務提携し、出資を受けるなど、自動車関連企業と共同で車載カメラ用の画像処理ソフトの研究開発を進めてきました。
2022年からは東京都足立区で、録画データ流通サービスのミックウェアとともに、ゴミ収集車の車載カメラによる道路状況監視の実証実験などを進めています。

DX分野では、文書などの画像をテキスト化するOCRソフトを展開しています。2021年には国立国会図書館デジタルアーカイブ上の資料画像をテキスト化するOCR処理ソフトを提供。自治体や一般向けにソフトの市販も開始しています。

そのほか、社会の人口減少に向けて、見守りや無人把握などで活用が期待される監視カメラ画像解析ソフトの提供も行っています。監視カメラの画像をAIで解析し、介助が必要な人を検出しサポートにつなげるといった取り組みもすでに開始しています。

モルフォ(3653)の業績や株価は?

モルフォの今期2024年10月期は売上高が前期比3%増の33億円、純利益が2億7000万円の黒字転換を見込んでいます。コロナ禍の影響や、製品の売上高比率の高かった中国の通信機器メーカーのファーウェイ(華為技術)が米中貿易摩擦でスマートフォンから撤退したこともあり、前期まで4期連続の最終赤字と、近年はさえない業績でした。
しかし、中国スマートフォンメーカー向けに再度注力し、車載やDX向けの開発収入なども伸びを見せていることで、今期は黒字転換が予想されています。

【図表】モルフォ(3653)の株価(2022年5月~直近、週足)
モルフォ(3653)の株価

9月20日の終値は1825円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約19万円です。

株価は2016年の上場来高値の1万1080円から長らく下落基調が続きましたが、業績の底入れ観測もあり、株価は反騰ムードとなっています。
13日には、ソニーグループ(6758)の半導体子会社のソニーセミコンダクタソリューションズと資本業務提携を発表。新株式の発行により約1.5億円を調達し、研究開発や人材投資に振り向けます。モルフォの強みである組み込み向けのAIやソフトの先端技術が評価された結果ともいえます。

近年は低迷していた世界のスマートフォン販売は、2024年には買い換えサイクルの到来などで市況回復が見込まれます。また、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)、監視カメラなどDX向けの需要の本格拡大はこれからであり、株価も戻りを試す展開を期待したいところです。

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