現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第78回は、冷凍食品の主要メーカーにして業界トップシェアの商品を数多く抱え、低温物流にも強みを持ち海外でも事業を展開するニチレイ(2871)をご紹介します。
- ニチレイは炒飯や唐揚げなどの冷凍食品が人気。低温物流と生産技術力が強み
- 加工食品事業などが好調で、今期は売上高、営業利益ともに過去最高を見込む
- 株価は上昇基調。9月に上場来高値も11月に調整が入り、押し目買いの好機か
ニチレイ(2871)はどんな会社?
ニチレイは加工食品事業と低温物流事業を中心に、水産・畜産事業、不動産事業などを国内外でグループで展開しています。売上高の約4割を占める主力の加工食品部門は、炒飯や唐揚げなどが好調で、国内の冷凍食品では売上高ナンバーワンです。家庭用のほか業務用の取り扱いも多くなっています。
ヒット商品も多く、例えば「本格炒め炒飯」は発売以来23年連続で冷凍炒飯部門の年間売上高1位です。最近では単身世帯の増加で「香ばし麺の五目あんかけ焼きそば」といった個食に適した商品が売れるなど、社会課題を解決する新たな価値の創出にも取り組んでいます。
ニチレイは戦時中の1942年に、日本政府が水産資源管理のため、国内の水産会社を集めて設立した帝国水産統制株式会社という国策会社が前身です。その後、戦後の混乱期から日本の成長期にかけて、果汁入りアイスキャンディー「レイカ」や冷凍茶碗蒸し、冷凍天ぷらセットなどの人気商品を発売していきます。1964年の東京オリンピックでは選手村に多種多様な冷凍食品を提供し、運営委員から感謝状を受けとっています。その後海外進出などを経て、長期での事業拡大を続けています。
低温物流と生産技術力が強み
ニチレイの強みは低温物流サービス力と食品加工、生産技術力です。その1つが低温物流事業によるグローバルな低温設備能力や輸送能力です。冷凍・冷蔵・常温(3温度帯)に対応できるトランスファー・センター(TC)で、在庫を持たずに仕分け作業を行います。TCを介して一括納品することで、配送ルートを最適化しています。海外でも欧州・中国・ASEANで海上輸送手配から通関、運送まで一貫して手がける「ワンストップサービス」を提供。冷蔵設備能力は国内でトップ、世界でも第5位と存在感を示しています。
食品加工や商品開発力では、独自の素材調達ネットワークを生かし、高度な専門知識と経験を有する人材によって担保される「おいしさ」を再現する開発力を有しています。ニチレイでは目指す「おいしさ」を具現化できるよう、生産ラインの装置などの一部を独自に開発して使用しています。検品 異物混入防止などの安全面での視点も確保しつつ、AI(人工知能)のような最新技術を活用した技術開発を行っています。
ニチレイ(2871)の業績や株価は?
ニチレイは今期2025年3月に売上高が前期比3%増の7000億円、営業利益が10%増の405億円と、ともに過去最高を見込んでいます。
足元の業績は、加工食品事業では家庭用の米飯やスナック類、業務用のチキン加工品や米飯類、惣菜向け商品の販売が好調です。低温物流事業も輸配送事業の好調や集荷の拡大、欧州での小売り向け事業の堅調が続いています。
11月8日の終値は4187円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約42万円、予想配当利回りは2.2%です。
ニチレイは長期経営目標の2030年に向けて売上高1兆円、海外売上高比率30%、営業利益率8%の財務目標をかがげており、現在は「変革の期間」と位置づけています。こうした中で主力事業の成長と低収益事業の改善、事業ポートフォリオ管理に取り組んでおり、加工食品の値上げや低温物流事業での資本効率の向上などにも取り組んでいます。円安進行による輸入コストの増加が続いてきましたが、日銀の利上げや米国の金利引き下げによる円安一服で円高基調が再開した場合は、さらなる収益の押し上げが期待できそうです。
株価は週足、月足ともに上昇基調が続いており、9月に上場来高値4554円まで値上がりしました。直近では利益確定売りも入り11月に入り4000円近辺まで調整しており、押し目買いの好機といえるかもしれません。