投資のリスクの1つとして「カントリーリスク」というリスクがあります。
一般的にカントリーリスクは、価格変動リスクや為替変動リスクに比べて発生頻度が低く、主に新興国で発生しやすいリスクとして認識されています。しかし、米国大統領選挙でトランプ氏が選ばれたり、日本では衆議院選挙で与党の過半数割れ、ドイツでは連立政権崩壊が起こったりと、先進国においても政治的な要因によるカントリーリスクが発生する可能性が高まってきているように思われます。この記事では、カントリーリスクの概要や要因について説明します。

  • カントリーリスクは、投資している国や地域の情勢の変化で価格が変動するリスク
  • 特に注目したいのは政治的要因と法的要因。トランプ氏の政策にも注目が集まる
  • 地域分散した株式投資信託でも米国の比率が高い。カントリーリスクの影響に注意

カントリーリスクの概要と要因

カントリーリスクは、投資している国や地域の政治状況や経済状況、社会情勢の変化により投資している資産(株式や債券、投資信託など)の価格が変動するリスクです。

カントリーリスクの主な要因として、政治的要因、経済的要因、社会的要因、法的要因、自然災害要因があります。下表に具体的な内容を記載しています。

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【図表1】カントリーリスクの主な要因
政治的要因 政権の交代、政策の急激な変更、クーデター、内戦、戦争など
経済的要因 急激なインフレ、過度の為替変動、国債の債務不履行など
社会的要因 デモやストライキなど社会不安にさせる事態
法的要因 法規制の変更、知的財産権の保護など
自然災害要因 地震や台風、洪水など

今後、注目しておきたいカントリーリスクは

上記の具体的な要因のなかでも注目しておきたい要因は、政治的要因と法的要因の2つになります。

冒頭でも触れましたが、米国の大統領選挙で共和党のトランプ氏が選ばれたり、日本の与党(自民党と公明党)が衆議院で過半数割れ、ドイツの連立政権崩壊など、先進国においても政治的要因のカントリーリスクが高まってきていると思われます。

特に次期米国大統領になるトランプ氏の外交政策は、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ガザ戦争など中東の紛争の行方を左右します。また、法的要因でもある輸入物品にかかる関税の引き上げが行われると、米国へ輸出している企業の業績に影響を与えることになります。

日本では、与党の衆議院過半数割れによる政策運営が停滞するリスクが挙げられます。また、日本は他国に比べ地震や台風など自然災害要因が高い地域というリスクもあります。

ドイツでは、連立政権崩壊によるドイツ国内の政治の不安定化する以外にEU(欧州連合)の政策運営に影響を与える可能性がある点も懸念材料です。

ホワイトハウス
世界最大の経済大国であるアメリカで、次期大統領に選出されたトランプ氏の外交政策が世界経済に与える影響は大きい

地域分散した株式投資信託への影響は

地域分散した株式のインデックス(株価指数)として、日本を除く先進国を投資対象にしたMSCI-コクサイや、先進国と新興国を対象にしたMSCI-ACWI(オールカントリー)があります。

それぞれのインデックスのファクトシート(2024年10月末)から米国が占める比率を確認しますと、MSCI-コクサイが76.97%、MSCI-ACWIが65.21%です。

【図表2】株価指数における米国が占める比率
株価指数における米国が占める比率
出所:MSCI

地域分散しているとしても、両インデックスとも米国比率が高いため、このインデックスに連動した運用をする投資信託では、米国発のカントリーリスクの影響をある程度は受けてしまうでしょう。

最後に

2025年に向けて高まることが予想されるカントリーリスクによる相場(株式・債券・為替)の変動に一喜一憂しないように、事前にカントリーリスクに対する理解を深めておきましょう。

また、相場が急変した時には、投資信託の運用会社などから臨時レポートが発行されます。そのレポートを丹念に読み変動要因などを理解し、冷静な投資判断をすることが大切です。

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