テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第25回は、九州で活躍する放送作家の盛多直隆さん。

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フォークソングと映画

盛多直隆さんの写真盛多直隆
放送作家
日本放送作家協会九州支部長

どこから放送作家になろうと思ったんだろう? フッとそんなことが過ぎった。思い返してみると起点なるものがあったような気がする。もう、昔の話になるが……。

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学生の頃、巷はフォーソングで満ち溢れていた。私もかぶれてしまいバンドを組んでステージに立ったこともあった。ただ、立っただけのことですが。当時、博多では財津和夫さんの「チューリップ」が人気のバンドでした。その「チューリップ」が東京に行くことになり、大学の先輩だったので「追い出しコンサート」を企画し実行委員となり、コンサートは大盛況に終った

その日からずいぶん過ぎた後、財津さんにインタビューする機会があった。終了後、「追い出しコンサート」で実行委員をしていたことを話すと……。「あ、そう」の一言。勢い込んで聞いた情熱みたいなものがモヤモヤとしたまま残った。

その頃、映画にもはまっていた。とにかく時間があれば映画館に行った。大学の近くに古ぼけた今にも崩れそうな映画館があり、もぎりの叔母ちゃんは親戚の方でした。ずいぶん優遇してもらい、任侠、ポルノ、ヌーベルバーグ、アメリカンニューシネマとあらゆる映画を観た。それが今でも財産になっている

意識したのか、しなかったのかよく分からないが、たぶん放送作家になった起点はフォークソングと映画にある。それも、たぶん望んだことなんでしょう? 薄く漂う意識がそう呟いている。

フォークシンガーのイメージ
盛多さんが放送作家になったのは、フォークソングと映画が起点だという(写真はイメージです)

そして。

コロナ禍で自宅にいることが増えました。そんな中、昔聞いた70年代フォークを聞くことが多い。その中で耳に残ったのは岡林信康の曲で「私たちの望むものは」でした。歌い出しの……「私たちの望むものは 生きる苦しみではなく 私たちの望むものは 生きる喜びなのだ」。70年代は反戦歌のイメージだったが、今は願いみたいに聞こえる。

その歌詞が体に残ったまま、一本の映画を観にいった。「アメリカン・ユートピア」だ。監督はスパイク・リー。出演は元トーキング・ヘッズのディビット・バーンと仲間たち。21曲を歌い上げるライブ映画だ。ロックなのに哲学的な歌詞。歌の間のトークは政治的なものから人種差別へと発言が続く。アメリカって何のかんのと言いながら風通しのいい国だ。

福岡で放送作家の仕事って、そんなに需要がない。CM、会社の宣伝VP、番組のディレクターを続けながらドラマのシナリオを書いていた。ある時、ベテランのラジオドラマの演出から、「メディアの仕事って風通しをよくすることだよね」って言われた。風通しもそうだが、先にあるものが何なのか探していくこと。それが放送作家の仕事みたいな気がする

さて、九州支部では年1回。「南のシナリオ大賞」を実施。今年で15年目。応募も300通近くにもなる。九州支部全員で審査をして、ラジオドラマとして制作。15年前に何かやろうねと言いながら生まれた企画でした。ドラマは九州支部のHPで聞くことが出来ます。

未来を見るイメージ
放送作家の仕事は、先にあるものが何なのか探していくこと(かもしれない)

年1回舞台の公演を続けて来た。昨年、今年とコロナで公演まで辿りつかなかった。そんな中、5年ぐらい前から福岡の劇団と韓国の釜山の劇団とが共同公演をしている。海を挟んだ福岡と釜山を演劇で繋いで共存しょうと認識しあっている。生活習慣の違いからぶつかることが多く、まだまだ道半ば。しかし、地道に積み上げて行けばいずれ形になってくるでしょう。

地方の場合、需要がなく放送作家が生き残っていくには難しいものがある。しかし、ぼんやりと見える光を手繰り寄せていけば何かが見えてくるかもしれない。思い描く未来図は、きっと近くにある

次回は放送作家の藤本昌平さんへ、バトンタッチ!

ラジオドラマのシナリオ募集! 締め切り迫る!

一般社団法人日本放送作家協会九州支部では現在、第15回 南のシナリオ大賞を実施しています。
募集内容は、15分のラジオドラマ脚本。応募締め切りは、2021年8月31日(火)です。

応募原稿はインターネットにてのみ受け付けます。郵送での応募は出来ません。

詳しくは、下記サイトをご確認ください。
第15回 南のシナリオ大賞

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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