「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回のテーマは物価上昇。新NISAを機に投資を始めた方にとって、8月の株価の暴落はショッキングな事件でしたが、それでも投資が必要な理由について、インフレを切り口に考察します。

  • 食料や電力をはじめ、日本人は生活の大部分を海外に依存している
  • 物価上昇により、日本人は「インフレ税」を支払うことになる
  • 「海外と比べて経済成長しない日本」を生き抜くためには株式投資が重要

いわゆる新NISAがスタートしてから、間もなく1年が経とうしています。世の中の方はNISAにすっかり馴染んだのか、あるいは単なるブームとなってしまうのでしょうか?

今年の8月5日のことだったと思います。恐らくは後の時代に「令和のブラックマンデー」と言われるであろう、日経平均が4,451円の大暴落をしたことがありました。こんな時は、あらためてNISAが注目されてしまいますね。そして、「言わんこっちゃない、だからNISAはやめておいた方が良いのに」とコメントした、経済評論家もいましたね。

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NISAを、株式投資を続けるか否かは、ご自身の判断です。しかし、日本はともかく、海外、特に新興国といわれる国々が経済発展を遂げつつ、国際政治の場で発言権を獲得しつつある今、「株式投資をやめる」とか、「株式投資はやらない」という判断の方が、よほどハイリスクなような気がしてなりません。

海外に依存する私たちの暮らし

何と申しましても、私たちは生活の大部分を、海外に依存していることを忘れてはなりません。食料自給率はカロリーベースで38%、つまり私たちが口にするものの62%は海外からの輸入品なのです。1日に3食召し上がる方にすれば、3食のうち、2食は海外からの輸入品だけの食事ということになります。

朝食の風景
日本人の食生活のおよそ6割が外国からの輸入で支えられている

そして電気。オール電化の家にお住いの方もいらっしゃるでしょう。いえ、住まいだけではなく、移動しながらスマートフォンを操作し、またパソコンの画面を閲覧することだってあります。車内にコンセントを設けた電車やバスも増えているようです。もはや食料と並んで、命綱と言っても過言ではない電気などのエネルギーも、その自給率は約11%です。つまり命綱の約89%を海外に依存しているのです。

そして人。コンビニエンスストアのカウンターで、解体工事の現場で、外国人労働者を見掛けることは、もう当たり前ではないでしょうか?

いつの間に? 知らぬ間に?……インフレ税とは?

さて、今ドキの若者は生まれた時から、スマートフォンを操作している「ネットネイティブ」な世代ですが、同時に納税者でもあります。お金の出所はともかく、買い物をするときに消費税も合わせて払いますからね。そして、働いている皆さんは、所得税に住民税、そして社会保険料を納めます。では、「インフレ税」とは何でしょうか?

インフレ税とは、インフレ(インフレーション)、つまり物価の上昇によって「お金の価値が下がる」ことで、政府の借金が実質的に目減りすることを意味します。

「いや、別に、そんな税金、納めていないよ。ビックリさせないでよ!」と声を挙げて突っ込まれた方。もう一度、お財布の中身の減り方や、電子マネーの利用額を思い出し、2~3年前と直近とを比べてみてください。「お財布の中身の減り方が激しくなった」とか、「電子マネーの利用額がふくらんだ」とおっしゃる方、それが、いわゆる「インフレ税」ということになります。

例えば。政府の「借金」は1200兆円だったように記憶しています。物価の上昇率(インフレ)が2.5%だと仮定します。「1200兆円-(1200兆円×1÷(1+0.025))」を計算していただくと、30兆円という数字をはじき出すことができます。政府の借金の額面はともかく、実質的な負担は30兆円、軽くなったことを意味します。

1200兆円のうちの30兆円では「大した効果はない」とおっしゃる方。思い出してください。2020年のことだったでしょうか?「国民1人につき10万円を給付」という政策がありました。あの10万円の政策を計算してみましょう。「国民1人に付き10万円×日本の総人口1億2500万人」で、12~13兆円になろうかと思います。つまり2020年の政策は、政府から出ていったお金が12~13兆円ということです。

一方で、インフレ率2.5%によって、政府の借金の額は実質30兆円、軽くなるのです。しかも、何の手間暇もかからず、人件費もゼロです。私たちの家計からの支出が増えるだけです。これが、いわゆるインフレ税ということなのです。

経済成長が伴わない物価の上昇

今年(2024年)は名目GDPの順位がドイツに抜かれたことが話題になりました。ドイツの人口はおよそ8千万人、日本の人口の4分の3ほどです。そして、今年のドイツは不景気だったはずです。日本のGDPは、そのドイツに抜かれてしまったのです。

そして来年か再来年には、日本のGDPはインドに抜かれると言われています。今の日本の経済に成長はありません。ですが、物価は上がり続けることでしょう。

【図表】各国の名目GDP(米ドル換算)の推移
各国の名目GDP(米ドル換算)の推移
2023年以降(インドのみ2024年以降)は予測値
出所:IMF World Economic Outlook database October 2024

海外では物価が上がり、給料も上がっています。それが経済成長です。そして、私たちの暮らしは、その多くが海外に依存しています。そんな時代を生き抜くために株式投資が必要なのです。

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