子どもを持つご家庭にとって教育費準備は、大きな課題の一つです。物価が上昇している現在、日々の生活費の出費と合わせて準備をしていくとなると、いくら必要になるのか、不安を抱えている親御さんも少なくないでしょう。今回は、幼稚園から高校卒業までにかかる教育費の金額と、受けられる支援制度についてご紹介します。
- 全て公立の場合に比べて、全て私立に通った場合の金額は実に3倍超
- 特に小学校で私立を選択した場合の学習費総額への影響度は大きい
- 条件を満たせば利用できる各種支援制度の活用で負担を軽減したい
幼稚園~高校までに必要な教育費の実態
文部科学省の「子供の学習費調査」によると、年間でかかる学習費(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)は、幼稚園から高校の教育段階の違いと、私立・公立かの違いでも差が出ます。
具体的な金額とその比率は以下の通りです。
・学校教育費:授業料や教材費など、学校での教育に直接かかる費用
・学校給食費:給食の提供にかかる費用
・学校外活動費:習い事や塾など、学校外での学習や活動にかかる費用
出所:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査の結果について」を基に筆者作成)
全体に共通する点として、私立の学習費は公立を大きく上回るということが挙げられます。また、「学習費」と聞くと学校教育費のイメージが強いかもしれませんが、習い事などにかかる金額についても意識が必要であることがうかがえます。
幼稚園では私立の総額は公立の約1.9倍で、特に保育料にあたる学校教育費と学校給食費は2倍以上の差が見られます。小学校ではこの差がさらに広がり、約5.4倍の学習費がかかっています。一方で、公立でも習い事などに行く子供が増えるためか、学校外活動費の増加が目立ち始めます。
中学でも私立の学校教育費の大きさは変わりません。公立では高校受験に向けてか、学校外活動費がさらに増していく時期でもあるようです。他の教育段階に比べると、高校は公立・私立の差が縮まりますが、やはり必要な費用は私立の方が多くなっています。
また、「子供の学習費調査」では、幼稚園から高等学校卒業までの15年間における公立・私立の選択の違いで4つのケースを挙げ、それぞれの必要額を提示しました。

ケース1:全て公立に通った場合…約596万円
ケース2:幼稚園は私立、小学校・中学校・高等学校は公立に通った場合…約647万円
ケース3:幼稚園・高等学校は私立、小学校・中学校は公立に通った場合…約776万円
ケース4:全て私立に通った場合…約1976万円
※ 上記の数値は、四捨五入している関係で、合計と内訳の計が必ずしも一致しない。
出所:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査の結果について」
全て公立の場合に比べて、全て私立に通った場合の金額は実に3倍超となっており、特に小学校で私立を選択した場合の学習費総額への影響度は大きいことがわかります。
子どものいる家庭が利用できる教育費支援制度まとめ
こうして必要な金額を知ると、不安を感じてしまう方もいるでしょう。しかし、条件を満たせば利用できる様々な支援制度もありますので、それらを活用していくことで負担を軽くすることもできます。ここでは、代表的な制度をいくつかご紹介します。
※ここでは制度の概要をご紹介しています。詳細は各自治体・省庁のウェブサイトでご確認ください。
【幼稚園・保育園】
・幼児教育・保育の無償化
満3~5歳の子供(住民税非課税世帯は0~2歳も対象)は、幼稚園・保育所・認定こども園の利用料(保育料)が無償(幼稚園は月額2万5700円が上限)になります。公立・私立いずれも対象です。ただし、通園バスでの送迎費や、給食費、行事費などはこれまで通り家庭での負担が必要です。
なお、第3子以降、または年収360万円未満の場合は給食費のうちおかずやおやつにかかる費用は免除されます。無償化には住んでいる自治体へ申請の手続きが必要な場合があります。
・預かり保育の無償化
共働き世帯などで保育が必要と認定された場合、利用日数に応じて月額1万1300円まで預かり保育の利用料が無償化されます。こちらも公立・私立いずれの幼稚園も対象です。
【小学校・中学校】
・就学援助制度(原則国公立学校のみ)
修学旅行費や学校行事費、通学費、クラブ活動費など、学校生活の中で必要になる費用の一部が自治体より援助されます。所得が自治体や教育委員会の定める基準以下であることなどの条件を満たす家庭が対象です。
【高等学校】
・高等学校等就学支援金制度
国立・私立の高校や高等専門学校など高校に準ずる課程を対象に、授業料の一部または全額が給付されます。2025年6月時点では、年収約910万円未満※の世帯の高校生が対象で、公立は最大で年額11万8800円、私立では最大で年額39万6000円を支援されます。対象となるのは授業料のみで、給食費や修学旅行費、入学金などはこれまで通り家庭での負担が必要です。
※両親の一方が働き、高校生1人(16歳以上)・中学生1人の4人世帯の目安
・高校生等臨時支援金
高等学校等就学支援金制度で所得制限の対象になる年収約910万円以上の世帯の高校生等に対して、最大11万8800円/年が給付されます。
この他にも、各自治体が独自に制度を設けている場合もありますので、各自治体の公式サイトもチェックしてみてください。
子どもの進路実現のため早めの情報収集と資金準備を
教育費の負担は決して軽くないものですが、子どもの希望する進路があるのなら、その実現に向けて動いてあげたいですよね。特に私立を選択する場合、早い段階から情報収集と資金準備を進めたいところです。
上記でご紹介した支援制度の利用はもちろん、NISAなど税制優遇のある投資も活用しながら、計画的に準備を進めていけるようにしましょう。
参考URL
- 文部科学省「結果の概要-令和5年度子供の学習費調査」
- こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」
- 文部科学省「就学援助制度について」
- 埼玉県「私立学校の父母負担軽減について(令和7年度)」
- 文部科学省「高校生等への修学支援」