2024年、長年続いてきたマイナス金利政策が解除されたニュースが大きな話題となりました。しかし、具体的に自分の家計にどのような影響があるのかなどをわからないままで、なんとなく不安に過ごしている人も少なくないでしょう。今回は、マイナス金利とはなんだったのか、その解除が私たちの生活にどんな影響があるのか解説します。
※本記事では金利とローンのしくみの概要を解説しています。詳細は銀行などのウェブサイトをご確認ください。
- 金利の上昇によって住宅ローンの返済負担が増える可能性もある
- 一方、生命保険は将来受け取れる金額が増える可能性もある
- 金利の上昇が、家計にどんな影響を与えるか考えてみることが大切
「マイナス金利」はお金の動きを生み出す政策
日本では、1990年代から続くデフレへの対策として、1999年にはゼロ金利政策を、2016年にはマイナス金利政策を導入しました。
ここでいう金利とは、日本銀行が短期金利の誘導目標として設定する「政策金利」のことを指します。
この金利が低く設定されていると一般の金融機関は資金調達をしやすくなり、結果として企業や個人もお金を借りやすくなるので、お金の動きが発生します。
このお金の動きを促す目的で取られていたのが、マイナス金利政策です。
さて、金利には大きく、短期金利と長期金利の2種類があります。
この短期と長期とはお金の貸し借り期間の長さを指し、1年未満であれば短期、1年以上であれば長期として扱われます。
マイナス金利政策の解除が決定した2024年に政策金利は0.25%へ引き上げ。翌2025年にはさらに0.5%への引き上げが決定され、この指標に則って短期金利が誘導されることになりました。また、長期金利の指標として用いられている10年物国債利回りも、上昇傾向にあります。
金利上昇でどうなる? 気になる住宅ローンへの影響
では、マイナス金利が解除され、金利に動きが出るようになると、私たちの生活にはどんな影響が出るのでしょうか。
マイナス金利政策の解除が報じられた際に話題となったのが、住宅ローンの金利への影響です。
住宅ローンには、変動金利型と固定金利型とがあります。実はこの2種類の住宅ローンは、それぞれ短期金利と長期金利どちらの変動に影響されるかが異なります。
- 変動金利型:一般的には半年ごとに金利が見直される。短期金利の変動に影響される。
- 固定金利型:金利が一定期間あるいは全期間固定されている。長期金利の変動に影響される。
特に、変動金利型を選択した人は、どれくらい影響するのか心配になった人も多いかもしれませんね。
変動金利型は金利が固定金利型を下回ることも多いため選ぶ人も多いようですが、マイナス金利政策の解除などをきっかけに金利上昇が発生するとそれがそのままリスクとなり、総返済額の増加といったデメリットが発生する可能性もあります。
また、固定金利型の場合でも、一定期間のみ金利が固定されるタイプですと、その期間が終わった後はその時点の金利が適用されるので、こちらも金利上昇がリスクとなりえます。
しかし、変動金利型を選択していても、急激な金利上昇があった場合には以下のような救済措置があるローンもあります。
- 5年ルール:金利の引き上げが発生しても、返済額が5年間は固定されるルール
- 125%ルール:5年ルールが採用されている場合の6年目以降、それまでの返済額に対して125%の金額までしか上げられないルール

「変動金利型を選んでいるけれどどうしよう」と思う経済動向があったときも、このルールの適用期間に、ローンの見直しをするなどの対策ができるでしょう。
ただし、これらのルールが適用されても、金利の上昇幅が大きい場合は未払利息が発生するケースがあること、またこれらのルールが適用されないタイプの住宅ローンもありますので、その点は留意が必要です。
変動金利型が固定金利型に比べて金利が低い傾向にあることは変わりありません。これからローンを借りる予定がある人も、金利上昇リスクと現時点での金利などを踏まえた返済総額を材料にして判断するのが良いでしょう。
生命保険にも影響。貯蓄型保険は特に要チェック
金利の変化は、生命保険の保険料にも影響します。
保険会社は契約者から預かった保険料を運用し、保険金の支払いに向けた準備などを行っています。
その運用時にどれくらいの利率で運用するかを、事前に契約者へ約束します。これを「予定利率」といいます。
金利の上昇が起きるとこの予定利率も上昇する可能性があり、実際に2024年のマイナス金利解除以来、大手生命保険会社で予定利率の引き上げが行われています。
この予定利率が高いと保険金の準備を終えるまでに必要な保険料も少なくなるので、予定利率が上がると保険料は下がるという関係にあります。
また、終身保険や養老保険などの貯蓄型保険で将来受け取れる金額にも影響し、予定利率が上がれば受け取れる金額も増える可能性があります。
ただし、こうした予定利率は原則、これから契約する保険に適用されます。現在加入している保険には影響しません。

しかし、今入っている保険を解約して入り直すという選択肢には、デメリットがあります。
新しく保険に契約をすると今時点での年齢で保険料が再計算されるためほとんどの場合値上がりすること、また健康状態や職業によっては新しい保険に契約できない可能性もあります。
また、今入っている貯蓄型保険の加入期間が短いとこれまで払った保険料よりも解約返戻金のほうが少なくなることがほとんどです。
金利など経済動向は私たちの生活に影響する
金利などの経済的な動きは、あまり身近なものには感じられないかもしれませんが、ローンや生命保険など、ここに書いた以外のことも含めて私たちの身近な生活に関係するものにも影響します。
ニュースなどでこうした動きを見たら、ただ不安になるのではなく、自分の何にどんな影響を与えるものなのか考えてみるきっかけにするのが良いでしょう。
お金に関する不安がある場合には、早い段階でFPなどのプロの力を借りながら、家計の見直しなどをするようにしてみてくださいね。
参考URL
- 日本銀行「総裁定例記者会見(1月24日)」
- 日本銀行「金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか?」
- 日本銀行「金融市場調節方針の変遷を教えてください。」
- 全国銀行協会「Q. 住宅ローン、変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか悩んでいます」
- 全国銀行協会「変動で返す?固定で返す?住宅ローンの金利タイプ」