「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、外貨建ての資産に対する関心が高まる中で、「外貨建てMMF」と「外貨預金」のそれぞれの特色を見ていきます。

  • 外貨建てMMFは投資信託の一種で、証券会社が扱う。外貨預金は銀行が扱う
  • 利回りなどのパフォーマンスは、外貨建てMMFが外貨預金を上回る傾向
  • 外貨建てMMFは株式や投信と損益通算できる。外貨預金の収益は雑所得

「ドル利上げ」などの報道で、外貨への投資に関心をお持ちの方も多いと思います。

外貨への投資といっても、その選択肢は様々です。外国為替証拠金取引(FX)や外貨建てMMF、外貨建て預金、それに外貨建て生命保険などなど。FXは保証金を差し入れての取引で、元本以上の損失が生じることもあり得ますので、本稿では、ひとまず採り上げません。外貨建て生命保険も別の機会に採り上げるとして、本稿では、よく似ている(?)「外貨建てMMF」と「外貨建て預金(外貨預金)」を考えてみたいと思います。

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外貨建てMMFと外貨預金の共通点は?

想定される共通のリスクは、何といっても「為替リスク」です。このほか、想定される利益として金利(外貨建てMMFは利回り、外貨預金は適用利率)が表示される、コストとして交換手数料(円貨から外貨に換える、外貨から円貨に換える)が生じる、などの点も同じです。

外貨建てMMFと外貨預金の違いは?

まず取扱い金融機関の違いです。外貨建てMMFは証券会社で、外貨預金は銀行で、それぞれ取り扱われています。

そして外貨預金が「円と外貨を交換している」イメージなのに対し、外貨建てMMFはれっきとした投資信託の一種です。
つまり、外貨建てMMFと外貨預金とでは、一般的な投資信託と預金ほどの違いがあるのです。

ですので、外貨建てMMFを案内しているサイトを見ると「元本の保証はありません」と書かれています(外貨預金は、外貨建てでの価格変動はありませんが、外貨建てMMFは変動します)。また信託報酬など、投資信託に特有の費用の案内もあります。そして利回りの表示をよく見てみると「運用実績」となっています。利益の予想も保証もない、投資信託ならではの表現ですね。

トラリピインタビュー

と申し上げても、外貨建てMMFの投資先は、コマーシャルペーパーや短期国債などの限りなく低リスクな有価証券です。また、購入時手数料はありません。
外貨建てMMFは、他の投資信託に比べれば値動きは非常に小さく、元本割れのリスクは著しく低いと言えるでしょう(ただし、為替変動の影響は受けます)。

また、外貨預金は元本割れのリスクはありませんが、円預金と違って預金保険の対象になっていません。ですので、外貨預金を預け入れた金融機関に万が一のことがあれば、最悪の事態も無きにしもあらずです。

一方で、外貨建てMMFは投資信託ということで、証券会社や信託銀行の資産とは分別保管が義務付けられていますから、証券会社に万が一のことがあったとしても、最悪のケースにはならなさそうです。

外貨建てMMFと外貨預金……パフォーマンスと課税は?

交換手数料と金利について、以下の表にまとめてみました。こうして見ると外貨建てMMFの方が、パフォーマンスは有利に見えます。

  外貨建て普通預金
(メガバンク)
2022年4月10日現在
外貨建てMMF
(老舗証券会社)
2022年4月8日現在
金利 適用利率
0.01%
利回り
0.25%
交換手数料 往復2円 往復1円
複利の時期 2月と8月 毎月末

最後に、課税についてみていきましょう。
金利(外貨預金は適用利率、外貨建てMMFは利回りで示される)に対する課税は20.315%と変わりません。譲渡益(≒為替差益)の税率も、同じく20.315%となります。
外貨建てMMFの利益は、株式や投資信託の譲渡損失などと損益通算することができます。逆に譲渡損(≒為替差損)も、株式や投資信託の売却益などと損益通算できます。

一方、外貨預金の為替差益は雑所得ですので、株式や投資信託とは損益通算できません。ただし、もし雑所得の合計額が20万円以下でしたら(医療費控除やふるさと納税など他に確定申告の必要がなければ)、確定申告は不要ですので、実質、非課税です。
仮に確定申告をすることになったとしても、給与所得などと合算しての総合課税ですから、所得税の税率が低い方(5%や10%)ですと、課税上は有利ですね。

なお、外貨預金の為替差損は、年金などの雑所得と内部通算することができます。

まとめに代えて

パフォーマンスでいえば外貨建てMMFの方が有利ですが、課税の面では外貨建て預金に魅力を感じますね。

なお、本稿では外貨建て普通預金を採り上げましたが、外貨建て預金には他にも外貨建て定期預金や、為替予約の付いた外貨建て預金などがあります。これらは別の機会に採り上げてみたいと思います。

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