宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に引き続き、投資初心者がNISAでREITを活用する方法について、商品の種類別に考察します。

  • 日本のREITは好調。市況の回復や金利政策、家賃収入の上昇が要因と考えられる
  • 初心者がNISAでREITに投資するなら単体やETFではなく、投資信託が良い
  • NISAを活用する場合はキャピタルゲイン重視の長期投資が向いている

REITが好調な3つの要因

【質問】
最近、新聞で「REITが売れている」と書かれているのを見ました。REITは耳にしたことはあるのですが、深く興味を持ったことはありませんでした。新NISAのつみたて投資枠で積立投資をするのに、REITってありなんでしょうか?

今回も前回に引き続きREIT(不動産投資信託)について考察していきます。

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NISAでREITはあり? REIT投資の魅力

前回は3つのREIT商品(単体、ETF、投資信託)について特徴などを話していきました。ここからは本題である「これからのREIT投資はありなのか?」、そして相談者のように投資歴が短く、なおかつ興味本位という動機で、NISAでの運用のためにREITを購入して大丈夫なのかを考えていきます。

さてREITの現状ですが、今年になって国内の東証REIT指数は反転に転じ、長期トレンドライン(テクニカル指標については相談室第117121回参照)も上昇の兆しが見えてきています。

【図表】東証REIT指数の推移(週足、2023年1月~直近)
東証REIT指数の推移(週足、2023年1月~直近)

好調な主な要因に、分配金の増額などが示すように不動産市況が安定して好調なことと、この好循環によりREITが新たな不動産を取得でき、物件の拡大にもつながっていることが挙げられます。今の環境がREIT投資に有利に働いているのは確かです。

ではなぜ、REITが好調になったのか? 具体的に言うと、3つの要因が考えられます。

① 不動産市況の回復

REITの運用は現物不動産への投資が主なものです。多くの投資家から集めたお金で不動産を購入し、管理維持していき、管理している不動産物件を貸すことで賃貸収入を得て、さらには売却することにより売却益などを得て、利益を出していきます。

近年ではコロナ禍も落ち着き、大都市圏でのオフィスビルなどの需要の回復に加えて、旅行などインバウンドが戻りを見せていることもあり、外国人からの買いも増えています。円安効果もあり、日本の不動産は外国人から投資しやすい環境にあります。

② 国内の金利政策

不動産投資にとって最大の障壁が金利の上昇です。現物不動産の購入に、現金払いの購入は原則あり得ません。REITによる不動産運用は原則、金融機関からの借入金で賄いますので、金利の上昇は家賃収入を削り、REITにとって負担が増えることになります。

多額の借入金がある不動産業者にとって、これからの金利上昇はデメリットの1つとして考えられていました。しかし、金利は景気動向にも関わりがあることから、日本銀行は利上げの時期を慎重に見極めています。当面はどうも急激な変化はないと考えられており、利上げの見送りがREITにとってメリットに働いているようです。

③ 家賃収入の上昇

最後に家賃収入の上昇があります。保有物件の賃料は、不動産の活況と同時に上がっていきます。たとえ今後金利が上昇しても、賃料の上昇と相殺しても十分ペイできる環境と考えられます。インフレ経済が進む限り、家賃高は当分続くと思われます。

以上の3つの要因をみると、REITの投資は「あり」と考えます。

投資初心者がNISAでREITに投資するなら

ただし、投資の経験が浅い方が、NISAの活用のためにREITに投資することに問題はないのか?と言われると、疑問が残ります。

REIT投資の醍醐味は、キャピタルゲイン(値上がり益)とインカムゲイン(分配金収入)の両方にあると思っています。株式投資でバリュー(割安)銘柄を選ぶように、REITも「今が買いなのか?」などの判断が必要です。

安く買えればキャピタルゲインの利益を得られますが、高く買うと損失が出るかもしれません。一方、保有すると得られる分配金によるインカムゲインの収益もあります。どこに重点をおいて投資するのかを決めておく必要性があります。

ここからは、NISAを活用できる3つのREIT商品の特徴を見ながら、投資法を考えていきましょう。前回で3つの商品についての詳細説明はさせていただいているので、今回は主に投資手法について、私の独断と偏見で見ていきます。

① 単体のREIT……初心者には×

最初の商品はREITの王道である上場投資法人、上場不動産投資信託(J-REIT)で、単体REITと言われるものです。

直近の新聞紙面でも日本最大手のREITの『日本ビルファンド投資法人』が、増益と増資による物件取得という本来の成長の姿を取り戻したとあり、不動産市況が活況であることが伝えられています。

単体REITをNISAで取引する場合は、株式投資と同じく証券会社経由でしかできないため、安易な購入はお勧めできません。トレンドラインを含めた勉強をしてからの投資が適しています。キャピタルゲインとインカムゲインの両方を得たい方向けの、短中期での投資だと思います。初心者には難しいでしょう。

② REITのETF……初心者には△

次にREITのETFです。REIT全体の値動きによって作られた指数に連動するETF(上場投資信託)です。NISAで取引する場合は、①と同じく証券会社経由のみです。こちらもキャピタルゲインとインカムゲインを両方得たい方向けの、短中期投資だと思います。

東証に上場しているETFは全てインデックス型であり、単体に比べてリスク分散ができることから、初心者向けかどうかは「△」とします。

③ REITの投資信託……成長投資枠を利用するなら初心者には○

最後にREITの投資信託です。証券会社、銀行などで購入できます。さまざまなREITの投資信託があるために、商品の選択に戸惑いますが、NISAの活用では「成長投資枠」の対象商品を選ぶのを間違えないことが先決です。

わかりやすく、2つの商品を例に説明していきます。『ダイワJ-REITオープン(毎月分配型)』と『野村Jリートファンド』では、後者がNISAが使える商品ですが、大きな違いは分配金を確約するか、しないかにあります。

9月2日の基準価額は、前者が1,675円、後者が21,630円と、10,000円で始まった基準価額にこれだけ大きな差が出ています。前者は純資産総額も安定感がなく、分配金を先取りした結果として複利効果の影響がなくなっています。いかに前者が長期運用に適していないか、わかると思います。

REITの投資信託をNISAで活用する場合は、キャピタルゲインを得たい方向けの長期投資が適していると思います。分配金はなしがいいでしょう。初心者は、成長投資枠を利用するなら「○」です。

分配金狙いなら、株式投資に慣れてから単体かREITで

相談者がもしREITに投資するのであれば、資産全体の分散投資と位置付けて、投資信託を長期で持たれるのが賢明ですとアドバイスさせていただきましたが、やっぱりREITをNISAで活用するなら不動産投資に興味がある方で、かつキャピタルゲイン重視の方向けだと思っています。

一方、REITの運用では分配金が重視されます。インカムゲインも必要な方は、単体REITかREITのETFを選ぶべきです。ただし、いずれも株式投資に慣れてからでも遅くはないでしょう。