債券には、国や地方公共団体が発行する「公共債」と、民間の事業会社が発行する「社債」があります。また、公共債は国が発行する「国債」と、地方公共団体が発行する「地方債」があります。
この記事では、公共債の国債と社債の概要と違いについて解説しています。安定した収益を期待して債券投資を検討されている方はぜひご一読ください。

  • 社債は個人向け国債や新窓販国債と比較して最低購入単価が高い傾向
  • 繰上償還条項がある社債は、満期までの利子が受け取れなくなるリスクがある
  • 利回りと発行体の信用力だけでなく、繰上償還のリスクにも注意して債券を選ぶ

国債と社債の概要

国債は国が発行する債券です。個人に販売される国債には「個人向け国債」「新窓販国債」があります
個人向け国債は額面金額1万円から1万円単位で購入ができ、新窓販国債は額面5万円から5万円単位で購入することができます。

また、満期までの期間は個人向け国債が3年、5年、10年の3種類あり、3年、5年が固定金利、10年が変動金利です。
新窓販国債の満期までの期間は2年、5年、10年の3種類で、すべて固定金利になります。

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新窓販国債と個人向け国債の違いは?

事業会社が発行する社債(事業債)は、額面金額や満期までの期間については社債を発行する企業が決定するため、額面金額、満期ともさまざまです。
中には「額面金額100万円」といった社債もあり、国債に比べると一般的に最低購入単価が高くなります。

また、社債は固定金利が大半ですが、変動金利で発行する場合もあります。

【図表1】個人向け国債・新窓販国債と社債の比較表
個人向け国債 新窓販国債 社債
満期までの期間 3年、5年、10年 2年、5年、10年 発行体が決定
金利タイプ 3年、5年は固定金利
10年は変動金利
固定金利 固定金利・変動金利
発行体が決定
利率 一般に、社債の方が国債より高い傾向
最小購入単位 1万円 5万円 発行体が決定
国債より高い傾向
繰上償還 なし 発行条件により異なる
購入できる金融機関 証券会社・銀行など 証券会社

債券で期待できる収益とリスク

債券で期待できる収益は、定期的に受け取れる利子と、満期までの間で換金することで得られる値上がり益(売却時点の債券価格によって売却損になることもある)の2つになります。
ただし、個人向け国債は満期前に売却しても額面金額で換金されるため、売却益を期待することはできません、逆に売却損を心配する必要もありません(中途換金した場合は直前2回分の利子が差し引かれます)。

国内債券の主なリスクは、信用リスク価格変動リスクの2つです。

信用リスクは、発行体の財務状況が悪化して、利子の支払いや元本の償還が遅れたり、できなくなってしまうリスクです。
(国や企業などの、債券を発行する主体のことを「発行体」といいます)

価格変動リスクは、発行体の財務状況や世の中の金利の状況などにより、日々の債券価格が変動するリスクです。このリスクは、満期を待たず中途換金した場合に発生するリスクになります。

社債特有のリスク「繰上償還」とは

社債によっては、発行条件の中に「繰上償還条項」を設定している社債があります。
繰上償還条項とは、償還期限(満期日)より前の特定の日に繰上償還ができる、つまり発行体が満期を待たずに社債の額面金額を返還できる権利を付与した条項です(なお、額面金額=投資元本とは限りません。額面金額が、投資家が購入する価格である発行価格と異なる場合もあります)。
繰上償還条項は発行体が行使できる権利ですが、特定の日に確実に繰上償還をするわけではない点に注意しましょう。

投資家から見たデメリットは、満期まで保有することで得られた利子が、繰上償還されることで満期までの利子が得られなくなる点になります。
「繰上償還条項」については、債券の目論見書に記載されていますので、購入前にしっかり確認しておきましょう。

【図表2】満期償還と繰上償還のイメージ
満期償還と繰上償還のイメージ

また、国債は繰上償還を行いません。
財務省のサイトにある「よくある質問」の「国債とはどのような金融商品ですか?」の答えで、

国債は、国が発行し、利子及び元本の支払(償還)を行う債券です。利子は半年に1回支払われ、元本は満期時に償還されます。ただし、割引国債は、途中での利払いは行われず、満期時に額面金額で償還されることになります。
なお、定められた償還日より前に、債券を額面金額で償還すること(繰上償還)はありません。

と回答されています。

まとめ

以上、国債と社債の概要、期待できる収益とリスク、社債特有のリスクとして繰上償還について解説してきました。

社債は発行体の信用力によっても利回りに差が出る(信用力の低い発行体の債券の利回りは高く、信用力の高い発行体の利回りは低い)ので、発行体の選択によっては高い利回りを期待できる債券です。最近も表面利率(額面金額に対する利息の割合)が年率2%台で満期まで3年の個人向け社債が発行され、10分で売り切れたということがありました。
しかし、社債によっては国債にない繰上償還のリスクがあるものもあります。

この点も理解して、ご自身の投資目的に合った債券(個人向け国債、新窓販国債、個人向け社債)を選ぶようにしましょう。

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