株式投資型クラウドファンディングとは、インターネットを通じて未上場株式を発行する企業と投資家を結びつける仕組みのこと。投資家は投資先企業の株主となり、将来的に上場するなどして株価が上昇した場合、株式を売却することでキャピタルゲイン(値上がり益)を得ることができます。日本初の株式投資型クラウドファンディングとして累計成約額約85億円の実績を持ち、約11万人のユーザーを抱える「FUNDINNO(ファンディーノ)」を運営する柴原祐喜さんに話を聞きました。(取材:2022年7月22日)

柴原祐喜

株式会社FUNDINNO 代表取締役CEO
柴原祐喜(しばはら・ゆうき)さん
2009年カリフォルニア大学卒業。2012年明治大学大学院グローバルビジネス研究科修了。大学院での研究テーマは「未上場企業の価値算出」。2012年システム開発・経営コンサルティング会社を設立。日本のスタートアップ環境を盛り上げていきたいとの思いで共同代表の大浦学氏とともに、2015年株式会社日本クラウドキャピタルを設立。代表取締役CEOに就任。

ベンチャー企業への投資はハイリスク・ハイリターン

ベンチャー企業への株式投資にはどのような特徴がありますか?

柴原さん 株式市場に上場していないベンチャー企業の株は、「未上場株」とも呼ばれます。未上場株への投資と上場株への投資には大きな違いがあります。

まず、未上場株には換金性に劣るというデメリットがあります。株式市場で取引されている上場株は買った後すぐに売ることができますが、未上場株の場合は購入後すぐに手放す環境がないケースが一般的です。

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加えて、ベンチャー企業の未上場株は上場株に比べてハイリスク・ハイリターンな投資対象と言えます。チャレンジを続ける新興企業は不確実性が高く、倒産するリスクもあります。 一方で、ビジネスを軌道に乗せることで業績が急成長する可能性を秘めており、上場株の比ではないほどの株価上昇への期待を持つことができます

投資家と会社の距離が非常に近い

貴社は株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を通じて、ベンチャー企業への投資機会を提供されています。投資家にとっては、ハイリスク・ハイリターンという特徴以外にどのような魅力がありますか?

柴原さん リスクが高い半面、うまくいけば大きなリターンを得られることが魅力ですが、ベンチャー投資の醍醐味はそれだけではありません。

もうひとつの大きな特徴は、投資家と会社の距離が非常に近いことにあります。株主総会などでは会社の代表者と対話する機会も多く、会社の現状や成長を直に感じられます。「FUNDINNO」では投資家ご自身のプロフィールを投資先へ公開する機能も用意しており、投資先が求める知見やスキルを提供することで直接支援することも可能です。中には、投資家が投資先企業の顧問になったケースもあります。

投資先企業の経営に参加するような形で、一緒にビジネスを成長させていくこともできるのですね。

柴原さん はい、キャピタルゲインの期待にとどまらない「投資体験」を得られることがベンチャー投資の大きな魅力だと考えています。

当社では投資家と会社の関係づくりをお手伝いするために、投資家に向けた積極的な情報開示を促すほか、新商品・サービスのお披露目イベントを企画するなど、さまざまなオンライン・オフラインのコミュニケーションを支援しています。

ベンチャー企業にとって資金調達の機会が増えるのはありがたいことだと思います。それだけでなく、投資家とのコミュニケーションまで支援してくれるなんて。至れり尽くせりですね。

柴原さん ベンチャー企業が投資家から長期的な支援を得るためには、資金を調達して終わりではいけません。情報開示が不十分だと投資家の不満が溜まっていきますし、事業を応援しようとする気概も失っていってしまいます。現状は、情報開示に積極的な会社が多い一方で、必ずしもそうでない会社もあり、もっと力を入れて取り組んでいきます。

日本経済をボトムアップさせるためには、新興企業や新たなチャレンジをしようとする会社への投資を促し、新たな産業を育成していくことが欠かせません。しかしながら、ベンチャー企業への出資額は、アメリカの約38兆円に対して日本は0.8兆円にとどまり、雲泥の差があるのが現状です。

そうした中で、株式投資型クラウドファンディングを通じて、ベンチャーマーケット拡大の一翼を担いたい、というのが当社の考えです。そのためには、単に投資や資金調達の機会を提供するだけでなく、その後の関係づくりを支えることも不可欠だと考えています。

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