宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは「複利効果」。マネーセミナーなどでもよく語られる、長期の資産運用における重要なテーマについて解説します。

  • 単利は最初の元本のみに利息が付き、複利は利息をプラスした元本に利息が付く
  • 複利効果は「分配金を出さず、利回りが高い投資信託」への投資で実感できる
  • 下がった時に安く買える積立投資は安心して運用できるため、長く続けやすい

「単利」と「複利」の違いを復習

【質問】
ある金融機関のマネーセミナーに行ってきました。「お金を増やしたいなら長期でやるもので、途中で引き出したりすると複利効果がなくなる。あまり解約しない方が良い」と言われました。そこで疑問に思ったのですが、ならば定期預金を長くやれば良いのでは? そもそも長期投資などで複利効果があるというのが、今ひとつわかりません。これって金融機関が投資してくれと言いたいだけの、だましの言葉じゃないですか?

ここ数年でやたらに増加した「マネーセミナー」。TVコマーシャルも含め、猫も杓子もマネーセミナーとなっています。これもNISAの活用が一気に加速している要因の一つなのですが、セミナーで勧める商品が偏るなど、弊害も出ているのも事実。セミナーでは誤った知識を教えることも多々あるようです。

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そして、金融機関主催のセミナーとなるとどうしても偏った説明になりかねないので、受講者には今一度、復習を必達として、運用の知識を頭に入れていく必要があります。
今回の疑問「複利効果」もその一つで、金融の言葉にある「単利」、そして「複利」の例など、まさに頭がこんがらがっていく原因になっています。

ここで復習しますが、「単利」は初めの元本に対して利息が付く方法で、期間が長くても初めの元本に対して毎年受け取れる利息は変わりません。
例として、100万円を単利の年利1%で運用すると、毎年の利息は1万円だけとなります。

次に、「複利」は利息に対してプラスして利息が付く方法です。要は、利息を引き出さないで元本にプラスしたものに対して、利息が付いていきます。
例として、100万円を複利の年利1%で運用する場合、1年目の利息は1万円ですが、2年目は元本100万円に1万円をプラスした101万円に対して利息が付きます。そのため、2年目の利息は1万100円です。さらに3年目には、102万100円に利息が付くわけです。

20年後は元金と合わせて122万190円で、単利と比較すると2.2万円の差が出ます。年利5%の複利だと20年で65万3300円の差と、年利が高く期間が長いほど、複利の恩恵にあずかれるわけです。
そのため金融機関では、利回りが大きいほど複利効果も大きいことにポイントを置きかえながら説明していきます。

以前から資産運用の常識として複利効果について説明していますが、果たして実際の運用の世界では、どのように当てはまるのか? 
マネーセミナーで流れていくだけの話では、相談者には理解ができないとのことでした。そこで今回は、複利効果を実際のお金の運用と、どうつなげられるかを解説していきます。

複利効果を実感できる「投資信託の積立投資」

初心者投資家が失敗を避け、複利効果を実感するには、お金の運用の方法では「つみたて」が一番です。
「最初にまとまったお金をある程度の期間預ければ良い」と思われがちですが、それだと利回りは、単利・複利とも、最初から最後まで確定したものになります。理由は後ほど説明します。

当たり前のことですが、インフレ時代の今であれば、定期預金の年利が1%でも、3%の物価上昇で実質利回りはマイナスとなります。
では利回り重視なら何が良いか? 前号までの利回りランキングで説明してきましたが、NISA活用の王道「投資信託」で複利効果を体感するしかありません。

投資信託の利回りは手数料を含む総額で考える

利回り商品ランキング

①債券 10,000円~(1%~)
②外貨預金(米ドル) 30,000円~(3%~)
③不動産投資 30,000円~100,000円(3%~10%)
④投資信託 30,000円~150,000円(3%~15%)
⑤株式投資 マイナス~300,000円(~30%)

商品選定の答えを先に出すと、先ほどの例のように長い期間(20年前後)分配金を出さず(出しても再投資)運用している、5%以上の利回りを出している商品を選定して「つみたて」して、ほっとけば良いだけです。

分配金を出さない、または再投資できる商品を選ぶ

「長い期間」は理解できるが、「分配金を出さない」のはなぜなの?と思われるかもしれません。株式投資などで配当金が出るのは助かるのに、投資信託では分配金を出さない方が良いのはおかしいと思うのは当たり前です。

投資信託の分配金の性質は、運用で得られた利益の一部を、投資家に対して「分配金」として還元するものです。ただ投資信託は、お金を投資家に還元すれば、それだけ大元の元本を減らすことにもつながります。
最初で述べましたが、複利効果はなるべく元本を増やすことが命題なので、利益は受け取るのではなく、再投資に回すことです。
なので、複利効果を出したいのであれば、スタート時から長期で分配金なしの商品選びが必達だと思います。

一括投資の方が利益が大きくても「つみたて」が良い理由

次に、「なぜ、つみたて?」の回答ですが、高い利回りの商品はそれだけリスクも付いてきます。特に株式中心の投資信託であれば、運用成績が悪くなることも多々あります。市場は毎日動き、日々の経済を動かしています。

例えば、最初に一括で180万円の日本株の投資信託を買って、15年間持ち続けたⒶさん。買ったとたんの大暴落で、その後の4年間はほぼ横ばい。元本が最大80万円のマイナスも出るなど、不安で夜も眠れませんでした。しかし、諦めず強い忍耐力で売らずに持ち続けると、5年目から順調に上がり続け、最終的には年利7%での運用となって15年たった今、497万円に増えました。

一方、月1万円ずつの15年間、日本株式の投資信託を積立投資していたⒷさん。同じように4年間の大暴落でしたが、元本は上げ下げしながらも順調に推移しました。最終的に年利6%で運用でき、15年間で431万円に増えました。

この結果で何が言いたいかというと、確かに15年後の運用成績はⒶさんが勝ちました。Ⓑさんも増えています。ただ、つみたてを選んだⒷさんの場合、暴落など不測の事態が発生してもメンタルへの影響が最小限に抑えられました。長期で運用するのに大事なのは、いかに安心して運用できるかです。

結果的にⒶさんは、利益につながり元本を減らすことなく解約を逃れましたが、大半の初心者投資家は、最初の4年間で解約に走ることが考えられます。これではマイナス運用、最悪の行動です。
運用成績は上昇する見込みがあるときはいいのですが、経済は動きますので、下降もあり元本割れも考えられます。たまたま上がっていたのなら良いのですが、解約時に下がっていたらショックです。

投資信託を選ぶ際は長期の実績を見る

上昇相場が続く場合には一括投資が有利です。一括投資もつみたても下降相場が続くと損しますが、つみたてはドル・コスト平均法の効果で安く買うことができるため、下降が有利に働きます。そのことから、つみたては万能とも言えます。

下降相場での運用で、投資家がどう動くかが重要です。複利効果を最大限に生かしたいなら、商品選びは直近の成績ではなく、過去の長期実績を参考にするのがお勧めです。

ただ忘れないでください。「儲かったお金は、たまに使うこと」。楽しみがなければ運用しがいもありません。

最後にこの例題、実は2008年のリーマン・ショック後の投資家行動でした。