宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、年明けから日経平均株価が高騰する中で、今から新NISAで100万円を運用したいと考えている方に向けて、どんな商品をどうやって買えばいいのかアドバイスします。
- 新NISAで盛り上がっているのは証券会社? 息の長い運用を心がけることが重要
- 100万円あっても1~2万円ずつ積み立てる。日米の株価の上がり過ぎを懸念
- 米ドル建ての債券などを組み入れるのもあり。株価が暴落したらスポット購入を検討
息の長い運用を心がけたい
【質問】
今自由に使えるまとまったお金が、100万円ほどあります。新年度にお金の運用を新NISAでやる場合、一番だと思われる運用方法は何ですか?
初めに、能登半島地震にて犠牲になられた方には哀悼の意を表します。また、被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げたいと思います。まさか新年度早々に……日本に住むということは自然災害と隣り合わせなんだと、あらためて考えさせられます。これ以上被害に遭われた方々が苦しむことのないように、政府には支援など万全な体制を望みたいものです。
さて、新年になり新NISA口座の開設が数多く進んでいると報じられています。開設者が増えているのは、「貯蓄から投資」という国の方針にとっては大変喜ばしいことです。
しかしながら、盛り上がっているのは商品を創り出している運用会社ではなく、販売側の証券会社だと思うのは私だけでしょうか? 本来は資産運用の担い手である投資信託の運用会社がもっと存在感を発揮しなければ、新NISAも失敗に終わる可能性もあり得ます。商品を販売する側の力加減で、運用会社の実力までも左右される傾向が強くなる流れもあり得る話です。運用会社の本来の姿であるべき実力(レーティング)も、販売する側の都合で左右されてしまいます。
運用会社も、証券会社に商品を売ってもらって資産総額が増えれば、それが実力だと思っていないでしょうか。今までの日本の資産運用は、富裕層中心のカリキュラムであり、運用会社も証券会社も多くの手数料収入を得られましたが、新NISAでは富裕層ではない一般の人々が投資します。証券会社が、手数料で儲からない投資信託よりも、株式投資などの短期運用を勧める方向に走っていかないか心配でもあります。
運用の結果は10年、20年先でしか分かりません。そして、10年経ったら売却するのでなく、11、12、13年、20年と運用してもオッケーです。たとえ10年後は低迷していても、待っていればいい。いずれ景気は戻ります。一方で、証券会社はどれだけ息の長い運用を心がけられるか? 将来、一般投資家が心から喜べる日まで、サポートは必要なのです。
米国のように、アクティブ型の投資信託を運用する独立系の運用会社の躍進が待たれます。長年にわたるサポートが信頼を作っていくのです。
今から100万円を新NISAで運用するならどうするか?
では本題に入りますが、今から100万円を新NISAで運用するならどうするか? 「私だったらこうするかも」という基準で話していきますので、ご承知頂ければと思います。
100万円あっても、1~2万円ずつ積み立てていく
簡単に言えば、「粛々と運用に徹する」でしょうか。運用口座に100万円を預けながらも、NISA口座で毎月1~2万円ずつ積み立てしながら様子を見ると思います。そして、決して残りのお金に手を付けない。なぜならば……今は日本、米国とも「出来過ぎ」だと思うからです。
特に米国はインフレ抑制のために金利を上げてきましたが、そろそろ金利低下に向けた政策により、景気と金利を両立させるソフトランディングを目指していますが、そもそも景気を良くしながら金利を低くすることなど難しいと感じています。
金利を下げれば景気は悪くなるはずで、逆に景気が安定している場合は、それほど金利は低くならないと思います。景気安定と金利低下の両立は難しいと思っています。日本株も高値更新でお祝いムードですが、米国株が下がり金利が下がるとなると円高が進行しやすくなるので、短期的には日本株も暴落するとみています。それがいつか? 誰にも予想できませんが、明日か、1年後かも知れません。もしそうなると、ここ10数年で運用を始めた投資家は、味わったことのない相場の怖さを知ることになります。
米国株と日本株の下落に備えて、米ドル建ての債券・REITを組み入れる
株価暴騰の要因が見つけにくい状況で、今の株高は出来過ぎです。冒頭で新NISA口座開設増の話をしましたが、政府や証券会社主導の口座増が少なからずあり、「今買わないともったいない」という心理が株価を押し上げた要因になっていると思っています。この調子でいくと、もしかしたら1989年に付けた日経平均3万8915円の高値を抜いてくるかもしれません。
しかしながら、その後バブル崩壊となって大暴落したことを忘れてはいけません。日本は、少子高齢化が進み人口減少が解消できない限り、長期的には円安が進行していくでしょう。長期運用の手段として、米ドルにシフトするのもありだと思います。米ドル建ての債券、REIT(リート)を対象とした投資信託を利回り重視で積み立て運用に組み入れてもいいかもしれません。
株価が暴落したら、安くなった株式のスポット買いを検討する
米国と日本、どっちがダメージ少ないのか? それは分かりませんが、両方入った株式投信で運用するのも良いです。とにかく、今は「粛々と運用に徹する」ことにして、大切なお金を大事にとっておきます。100万円を全部投資せず、少しずつ積み立てていけば、予想が外れても大損することはないので安心です。
積み立て運用をしている途中で株価が暴落したら、残りのお金でスポット買いするなどしていき、あとは10年以上待つだけです。先は長いので焦りは禁物ですよ。