「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回のテーマは日本株式。日本人にとってわかりやすく、為替の影響もない投資対象について、あらためて考えてみます。

  • 日本株式のメリットは為替リスクがなく、情報収集が容易で、時差がないこと
  • 「雇用者報酬」の伸びが、日本はほかの先進国と比べて小さい
  • 日本株式は投資する対象を選ぶことが大切だが、情報が多すぎて選ぶのが難しい

皆さん、こんにちは。警戒宣言が解除された街の様子は、いかがでしょうか?
ワクチンの接種も始まりました。このまま収束に向かうことを祈るのみですが、むしろ、感染は拡大の傾向にあるようです。

ところで、筆者はこれまで、さんざん外国株式を持ち上げる、いわば「外国かぶれ」でした。
とはいっても、やはり日本株式への期待と関心は高いようです。
先日も、お客様を訪問した時に、「どうせ投資をするのなら、日本の企業に投資をしたい。日本の企業を応援したい」とおっしゃっておられました。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

読者の皆さまも、同じお気持ちの方は多いのでしょうか?

あらためて、日本株式投資のメリット

日本株式に投資するメリットは、以下の3点に尽きると思います。

  • 同じ円建ての投資なので、為替差益や為替差損といった為替リスクがない
  • 情報が日本語で、また時差がなく、情報収集が容易
  • 時差がないので、(上場株式なら)リアルタイムの投資が可能

「当たり前のことなのでは?」と思われるかもしれませんが、外国株式への投資では、これらの「当たり前」がありません。

そして、まだ例外もあるようですが、東京証券取引所では、「1単元は100株」への統一が実現しました。1単元とは、上場株式の最低限の売買単位のことです。
では「1単元は100株」の何がメリットなのでしょうか?

それは、1単元が500株や1000株だった株式に投資できる最低金額が、5分の1や10分の1に下がることです。その中には、著名な企業もあったりします。
10万円未満で投資可能な上場株式が増えたような気がするのは、筆者だけでしょうか?

日本企業と株価の未来を「雇用者報酬」から考える

しかし、長期的に見て、日本株式に未来はあるのでしょうか?
そもそも投資は「未知の未来への投資」ですから、未知の未来に期待して、資金を投じることになります。では、日本の株式に期待することができる未来が、果たしてあるのでしょうか?

未来は未知なので、過去を振り返って、その実績で検討するしかなさそうです。
各国の株価指数などで比較すると、短期的にはバブルや金融危機などもあろうかと思いますので、ここでは目線を変えて、「雇用者報酬」を引用してみました。

【図表】雇用者報酬の国際比較
雇用者報酬の国際比較
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2019」第1-5表 雇用者報酬より抜粋
各国通貨基準。2005年の値を100として指数化。フランスの2016年以降の値は推計値

雇用者の中には公務員の方も含まれているとは思いますが、上の図は「雇われている」方の過去のお給料の推移について、長期的に国ごとの比較をしているものです。

多くの国で左から右に向かって、時間とともに、つまり長期的に、雇用者報酬の数値が伸びているのが分かります。日本も伸びてはいますが、伸びている数値がひと桁少ないようです。

ところで、雇用者報酬と株式投資の何が関係あるのでしょうか?
先述の通り、公務員の方も含まれている可能性もありますが、雇用者報酬は企業に雇われて働いている方の給料、すなわち、企業が払っている給料という考え方ができると思います。
他の国々に比べて、日本の雇用者報酬の伸びがひと桁少ないということは、それを払う日本の企業の「成長もイマイチ」と言えるのではないでしょうか?

短期的にはバブルや金融危機などに左右される株価ですが、長期的には、企業の成長が株価に反映されるはずです。
だとすると、結論は、やはり「日本以外の株式投資」になってしまいそうですが……。

情報収集が容易な点を活かし、投資対象を「選んで」投資をする

ところで、先ほど、日本株式への投資は、何といっても情報収集が容易という点を挙げました。その利点を活かしてはいかがでしょうか?

TOPIX(東証株価指数)などの、日本を代表し、日本の株式市場全体を反映した指数に投資をするのではなく、投資する対象を「選んで」投資をするのです。

もしかすると、他の国と比べて、長期的には成長の見込みがない日本株式といえども、中にはキラリと光る投資先が見つかるかもしれません。

宝石と石
日本の株式にも、磨けば光るダイヤの原石があるかもしれない

情報収集が容易とはいっても、どうやって日本株式の投資先を選ぶのか?

公募株式投資信託は、投資信託協会が発表している統計によれば、2021年2月末現在で5793本の設定があり、そのうち、国内株式だけに投資している投資信託の数は1018本もあります。

一方、東京証券取引所に上場している企業の数は、2021年3月26日現在で3711社(いわゆるプロマーケット上場企業を除く)あります。

この膨大な数の中から、どのように投資先を選びましょうか?
なまじ情報を得ることが容易なだけに、投資先を選ぶために情報を得ようにも、情報が多すぎておぼれてしまいそうです。

「ヤフーファイナンス」や「会社四季報」などの会社情報のページを見てみると、従業員の平均年収なども載っています。平均年収の推移などがあれば、検討する材料になるのかもしれませんが、その年次のもののみです。投資先を選ぶ以前に、情報を選ぶのも難しそうですが……。

まとめに代えて

2016年に日本銀行がマイナス金利政策を導入して以来、投資や外貨建て保険への期待と関心が高まっているようです。
特に投資については、外国株式を対象にした投資信託について、抵抗を感じている人が大きく減ったような気がします。

日本に住み、日本の企業に勤め、あるいは日本政府から年金を受け取り、日本企業が経営するお店から食料品や日用品を買う。日本株式に投資をせずとも、私たちの暮らしに日本の企業は欠かせず、「日本の企業が造った物だから安心ね」と、当たり前のようにつぶやいているのに。

でも、日本の企業への投資となると、その先行きに微妙なものを感じている方が少なくないようです。さて、日本株式への投資、どのように選びましょうか?

次回は、日本株式の投資先の選び方について、さらに踏み込んで考えてみたいと思います。

(次回は4月19日を予定しています)

メルマガ会員募集中

ESG特集