現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第63回は、インターネット専業銀行として預金やローンなどの金融サービスを展開し、BaaSなど事業会社向けのサービスにも強みを持つ住信SBIネット銀行(7163)をご紹介します。

  • 住信SBIネット銀行の強みは住宅ローン。金利や手数料は業界最低水準
  • 都市部に代理店を設置して「相談したいニーズ」を取り込む。BaaS事業も強み
  • 金利上昇に向けた住宅ローンの駆け込み需要と、今後の収益力の向上に期待

住信SBIネット銀行(7163)はどんな会社?

住信SBIネット銀行は、インターネット専業銀行です。2023年3月に東証スタンダード市場に上場しました。

同社は1986年に、住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)の子会社で事務作業を受託する「住信オフィスサービス」として設立されました。その後、2007年に住信SBIネット銀行に商号を変更し、銀行業の営業免許を取得しました。現在、SBIホールディングスと三井住友信託銀行が、ともに同社の発行株の34.18%を保有しています。

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社是の「テクノロジーと公正の精神で、豊かさが循環する社会を創っていく。」が表す通り、デジタルを活用したサービスが若年層を中心に支持されています。2023年12月末には、ネット銀行最速で預金総残高が9兆円を突破しました。

事業構造は、預金やローンなどの「デジタルバンク」事業と、住宅ローンの「モーゲージ」事業が収益を稼いでいます。また、金融機能を事業会社などに提供する「BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)」事業やビジネスマッチングなどの「THEMIX」事業は、成長領域として今後の伸びが期待されています。

競争力の高い住宅ローンが強み

住信SBIネット銀行の強みの1つは、競争力の高い住宅ローンです。

ネット銀行や大手メガバンクと比べても、住宅ローンの金利や手数料は最低水準で、消費者の支持を受けています。高性能AI(人工知能)を活用した審査モデルにより、的確でスピーディーな与信審査を実現しています。

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また、ネット銀行でありながら、全国の都市部や地方の政令指定都市にFC代理店の出店を進めており、住宅ローンならではの「相談したいニーズ」を取り込んでいます。住宅ローン実行額は2023年10月に10兆円を突破しました。

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ネット専業銀行として定期預金や住宅ローンなどのサービスを提供しながら、リアル店舗での相談も受け付けている(写真はイメージです)

銀行サービスを提供するBaaS

成長事業として注目したいのは、BaaS事業です。「NEOBANK」のブランドで「融資・決済・預金」のすべてのサービスを事業会社に提供できる点が強みとなっています。また、システムの高い開発力や設計力を背景とした強固なセキュリティーレベルも評価されています。

現在、プロ野球の北海道日本ハムファイターズや、日本航空、京王電鉄、ヤマダホールディングス、松井証券など様々な業種の企業にBaaSサービスを提供しています。

住信SBIネット銀行(7163)の業績や株価は?

住信SBIネット銀行の今期2024年3月期は、経常利益が前期比16%増の340億円、純利益が17%増の234億円を見込んでいます。

2月に発表した2023年4~12月期(第3四半期)は、売上高に相当する経常収益が前年同期比20%増の853億円、経常利益が15%増の250億円と増収増益でした。住宅ローン関連や資産形成ローン、デビット決済などにより利益が伸びました。

【図表】住信SBIネット銀行の株価(日足、2023年10月~直近)
住信SBIネット銀行(7163)の株価(日足)

3月22日の終値は2261円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約23万円、予想配当利回りは約0.7%です。

3月19日、日本銀行は17年ぶりに金利を引き上げ、「マイナス金利政策」を解除しました。現在の金利水準では、住宅ローンの変動金利の指標となる短期プライムレートに影響を与えることはないと目されます。しかし市場では先行きの金利引き上げを予想する向きが増えており、消費者の借り換えや駆け込みでの住宅ローンの利用が増えると予想されます。

また、実際に金利がさらに上がった場合は、住宅ローンを含めて銀行業界の収益にプラスの影響があることから、住信SBIネット銀行の株価にも恩恵が大きいと予想されます。

直近の予想PER(株価収益率)は約15倍、PBR(株価純資産倍率)2.32倍と、株価指標で同業の銀行と比較すると一見して割高なようにも見えます。しかし、新規事業や住宅ローンなどの競争力や強みを勘案すると、むしろ市場からの期待の裏返しであるともみることができます。

2023年6月のオリコン顧客満足度調査ではネット銀行部門で第1位を獲得しており、使い勝手の良さと便利な機能を徹底的に追求する同社の姿勢は今後も市場で評価されると期待しています。

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