テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第161回は「いきなり!黄金伝説。」で放送作家デビューし「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」など人気番組を手掛ける、飯塚大悟さん。

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飯塚大悟さんの写真
飯塚大悟
放送作家

1時間の特番でギャラ10万円

放送作家がお金について書くリレーエッセイということだけど、皆さんの興味のありそうなことが全く思いつかないので、とあるテレビ番組の特番で私が頂いたギャラを公開したいと思う。とりあえずお金で興味を惹かせるという、いかにもテレビ的な手法を使わせて頂く。

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詳細は何も言えないけど、とある1時間の特番で「10万円」だった。

1回の放送で10万円も貰えるなら、放送作家はボロい商売なのかもしれない。ではめちゃくちゃ野暮だけど、1つの特番が生まれるまでにどれだけの時間がかかるか計算してみた。

まずテレビ局に特番の企画書を出すところから始まる。だいたい平均3回くらいは会議を重ねて出すことが多い(2時間×3=6時間)。そこから企画書を書く作業があり、自分の場合は4時間くらいかかる。ここまでで10時間

奇跡的に企画が通ったら、放送の3ヶ月前くらいから特番の会議が動き出す。定例会議(2時間)と分科会(1〜2時間)がだいたい週に1回ずつ。会議に出す宿題や台本を書く時間も考えたら、週にプラス1〜2時間は作業時間がかかる。単純計算で5時間×12週だと、60時間になる。

つまり70時間働いた結果が10万円ということになる。時給にしたら1400円くらいだ。対面の会議ならプラス交通費もかかったりする。レギュラー番組になれば全く話は変わるのだけど、そこまで行ける番組はほんの一握りだ。

こんな話を先輩の作家にしたら「昔はもっと貰えたよ」と言われるだろうし、後輩の作家にしたら「ネットのほうが儲かりますよ」と言われると思う。

筆者は現在41歳で、ちょうどYouTubeが生まれた頃から放送作家業に手を染めている。常にネットメディアの脅威にさらされ、「テレビはもうオワコンだ」と言われ続けてきた世代だ。諸先輩方のようなお金のある時代のテレビの甘い汁も吸えなかったし、後輩たちのようにネットメディアの波にも乗れなかった。完全に“はざまの世代”になってしまった。

電卓をたたいて計算するイメージギャラは70時間働いて10万円、時給にすると1400円ぐらいだった

テレビを叩くとバズる時代

かつてのテレビ業界にはお金が湯水のようにあったと聞く。影響力があるから、人や物を「テレビに出してやってる」という気持ちになる。取材対象や視聴者を舐めてしまう。その結果、行き過ぎた演出も多かったんだと思う。そんな時代を生きたテレビマンが軒並み管理職になり、部下たちには「攻めた企画はやるな!」「予算を抑えろ!」と言うらしいので、現場はたまったもんじゃないらしい。きっと言う側も心が痛むはずだと思って、気持ちを収めるしかない。

テレビはどう考えても逆風だ。SNSではテレビ叩きがトレンドになっていて、過去にテレビ関係者からされた横暴な振る舞いを投稿すると必ずといって良いほどバズるし、元テレビマンを名乗る業界通っぽい人が、業界の裏側めいた事を語る記事や動画も、テレビ叩きのための格好の素材になっている。「テレビ持ってない」「テレビ見てない」すら、マウンティングに使われるくらいの時代だ。

過去何10年間、テレビ制作者が「テレビ様」として振る舞ってきた尊大な態度が、いま一気にブーメランのように跳ね返ってきていて、そのツケを現役世代の我々が必死で払うターンに入っている。

YouTubeとTVリモコンイメージテレビには逆風が吹いている 写真:rafapress / Shutterstock.com

でも「昔は良かったな〜」という気持ちは不思議と湧いてこなくて、むしろ「やっと健全化できたんだな」といううれしさすらある。何気なく昔のバラエティー番組とか目にすると、冷笑で溢れていてゾッとすることがある。人の痛みに鈍感な時代だったと思う。

自分はそういう時代のテレビを視聴者として無邪気に楽しんで育ってしまった最後の世代だと思うので、その責任を背負ってテレビの生き死にを見届けたいという気持ちがある。ちなみに今日の時点で“ある”と言っているだけで、明日どう思っているかは全然わからない。「やっぱYouTube最高!」と言ってても責めないで欲しい。

この逆風の中でどうやって面白いものを作るかが、放送作家の頑張り所なのだと思う。そうだ!今こそやりがいがあるんだ!そうなんだ!……と本当に思っているのだけど、「時代に乗り遅れた人間の負け惜しみじゃん」と言われたら、何も言い返せない。ごめんなさい。

もしくはテレビの寿命より早く、自分が淘汰される可能性も大いにある。もうその時はその時だ。もうやけくそだ。テレビへの恨みつらみを吐くYouTuberになるか、テレビ絡みのうさんくさい記事の、「放送作家・談」のアレをやって、食いつなぐしかないと思っている。

次回は宮地ケンスケさんへ、バトンタッチ!

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