現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第76回は、ポンプを祖業とする大学発ベンチャーとして1912年に創業、現在では半導体製造装置などで国内外で高いシェアを獲得している荏原製作所(6361)をご紹介します。

  • 荏原製作所は石油・ガスプラント向けコンプレッサーで世界トップシェア
  • CMP装置やドライ真空ポンプなどの半導体製造装置が荏原製作所の成長ドライバー
  • 2024年12月期は最高益を見込む。半導体株の復調で再度の株価上昇に期待

荏原製作所(6361)はどんな会社?

荏原製作所はポンプを祖業とする産業機械メーカーです。熱や流体などをコントロールする技術を軸に冷熱機械や送風機、タービン、半導体製造装置などを手がけています。高い技術が評価され、社会インフラのさまざまな場面で荏原製作所の装置が用いられています。

長年培ってきた技術と高い信頼性により、国内の標準ポンプではシェアNo.1です。また、石油精製プラントなどの心臓部の圧縮工程で使われる石油・ガスプラント向けコンプレッサーでの世界シェアはトップです。

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海外では、ラスベガスの取水ポンプやシンガポールのマーライオンの噴水システム、国内では沖縄の美ら海水族館の水槽向け特殊ポンプ、東京・渋谷ストリームや国立競技場の空調設備のターボ冷凍機など、有名な施設でも幅広く同社の製品が採用されています。

荏原製作所は1912年に創業者の故・畠山一清氏が「水を安全かつ安定的に供給するための事業を通じて、国作りに貢献する」 という意志により、ゐのくち式渦巻ポンプと呼ばれる製品を大学発のベンチャーとして製造し、創業しました。

創業後は水道用ポンプ、浄水装置の国産化、災害に備えた水インフラの整備などに取り組み、日本の近代化に大きく貢献しました。戦後には、食糧増産用や農地造成用のポンプを大量に生産し、国民生活の安定に貢献。1980年台にはダイオキシンを完全分解する次世代型ごみ処理装置としてガス化溶鉱炉を実用化し、環境問題に対しても同社の技術を生かした製品を開発しています。

生成AIの拡大で伸びる半導体製造装置が成長ドライバー

生成AI(人工知能)の拡大で需要が拡大する半導体の製造装置は、同社の成長ドライバーの1つです。半導体向け装置を手がける精密・電子カンパニーの売上高に占める割合は、前期末時点で33%と年々増加しています。

トラリピインタビュー

中でも強みとしているのが、半導体の表面を化学的に研磨して平坦化するCMP装置です。半導体の性能が上がるにつれ、より微細な加工が求められており、高い精度の同社の装置のニーズが高まっています。
特に生成AIの計算や学習に用いられるGPU(画像を処理する半導体、米エヌビディアなどが設計)やHBM(高速度メモリー)などの製造に不可欠となっており、今後の需要の伸びが期待されます。

こうした装置には、同社がポンプなどの製造で培った回転技術と流体を制御する技術が強みを発揮しています。
また、半導体の製造加工に不可欠なドライ真空ポンプなども手がけており、最先端半導体メーカー向けの売り上げの伸びが続いています。これまでに高額なCMP装置を累計で3000台以上出荷しており、ともに世界シェアは2位と業界内での存在感を示しています。

荏原製作所(6361)の業績や株価は?

荏原製作所の今期2024年12月期は売上収益が前期比9%増の8270億円、営業利益が1%増の870億円と、ともに過去最高となる見込みです。
前述の半導体向け需要の増加で精密・電子カンパニーが伸びを見込むほか、国内では建築・産業カンパニーなども堅調に推移しています。また、海外では北米と中国向けが好調です。

【図表】荏原製作所の株価(2024年4月~直近、日足)
荏原製作所の株価(2024年4月~直近、日足)

10月4日の終値は2410円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約25万円です。

株価は半導体向けの伸びなどを手がかりに、4月に2859円の上場来高値をつけています。しかしその後は中国の景気後退や世界的に半導体株が調整ムードとなっていることもあり、相場急落の8月5日は1500円割れまで値下がりしました。しかしマーケットの業績拡大への期待は根強く、足下では中国の景気刺激策や半導体株の復調などにより、2600円近辺までいち早く戻しており、再度の上場来高値更新からの上昇トレンド回帰の可能性も見込んでいます。

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