現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第81回は、寿司握りロボットを世界で初めて開発して、海外での日本食の人気にも乗って現在も世界トップシェアを誇る鈴茂器工(6405)をご紹介します。

  • 鈴茂器工は寿司ロボットで世界トップシェアを誇る米飯向けの食品加工機械メーカー
  • 「ほぐし」の技術に強み。省人化ニーズやアジア市場の成長が業績につながる
  • 株価は直近で上昇基調。おにぎりや丼ものなど新たな米飯商品の展開に期待

鈴茂器工(6405)はどんな会社?

鈴茂器工は、寿司握りロボットや米飯盛り付けロボットなど米飯向けの食品加工機械の大手メーカーです。特に寿司ロボットの分野では、世界シェア8割と存在感をみせています。

回転寿司や牛丼チェーン、スーパー・コンビニ・病院、介護施設など様々な場面で同社のロボットが利用されています。売上高の約7割が国内向け、約3割が海外向けとなっています。

鈴茂器工の創業は1961年で、創業者の鈴木喜作氏によって前身の鈴木商事が設立されました。転機が訪れたのは1981年で、この年に同社は世界初の寿司ロボットを開発しました。
当時は回転寿司がブームとなっていたこともあり、寿司職人と同じ完成度のシャリ玉握りを実現できることから、回転寿司業界の成長とともに拡販が進みました。寿司職人は10年で1人前と認められる修行の厳しい世界で、業界成長のペースに対して寿司職人の数が足りていなかったことも背景となっています。

寿司ロボット
寿司のシャリを自動で作る寿司ロボットが、回転寿司チェーンの成長を支えた(写真はイメージであり、特定の企業とは関係ありません)

米飯を扱う独自技術をコアに海外進出を進める

同社の強みはロボットの米飯を扱う独自技術です。コア技術の1つは「ほぐし」です。シャリ玉を握った際に米粒と米粒の間にほどよい隙間があり、空気を含むことによって、ほどよく口中でシャリが崩れることが求められます。ソフトウエアによる調整や部材の最適化などを繰り返し、ほど良い米粒のほぐれ具合を実現しています。

このほかにも「計量」や「成形」、「包装」など繊細な動作が要求される食品ロボットならではの技術の蓄積でおいしさとスピードを兼ね備えた動作が可能です。
こうした技術は、第2の売り上げの柱であるご飯盛付けロボットなどにも生かされています。

近年では海外で日本食レストランが人気で、スーパーマーケットなどでも日本の食品が多く売られるようになっています。同社はアジアや欧州など各地域で海外展開を進めています。北米では日本食が身近な食文化の一つとして現地に根付きつつあり、美味しさや生産性を追求する機械のニーズが高まっています。

トラリピインタビュー

アジア圏では中国、ASEAN諸国を中心とする経済成長に合わせて、日本の事業者の本格的な現地進出と、現地資本の事業者の成長により市場は大きく拡大しつつあります。

鈴茂器工(6405)の業績や株価は?

鈴茂器工の今期2025年3月期決算は、売上高が前期比10%増の159億円、営業利益が29%増の19億円を見込んでいます。
足元ではコロナ禍一巡に外食需要の回復が続き、インバウンド需要も盛り上がりを見せています。一方で、特にサービス業で人手不足が顕著なこともあり、省力化のニーズで設備投資需要が高止まりし、ご飯盛付けロボットの売り上げ成長が国内事業をけん引しています。海外でも同様に欧米を中心とした省人化の動きが業績につながっています。

【図表】鈴茂器工の株価(2024年6月3日~12月20日、日足)
鈴茂器工の株価(2024年6月3日~12月20日、日足)

12月20日の終値は1939円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約20万円、予想配当利回りは1.7%です。株主優待は毎年3月末時点の株主に持ち株数に応じたレストランやファーストフードで利用できるジェフグルメカードがもらえます。

株価は年足ベースで上昇基調が続いています。直近では11月5日の1424円から右肩上がりの株価上昇が続き、2000円台を上回り上場来高値圏で推移しています。

今後はファミレスや弁当店など盛付けロボットの新たな顧客マーケット開拓に取り組むほか、米飯に限らず厨房内の自動化や省人化に応える製品の開発を進める予定です。さらに寿司だけではなく、おにぎり、丼ぶりなどの新たな米飯商品の提案を進め、消費の拡大と潜在的な機械需要の掘り起こしも狙います。
市場の成長とともに業績のさらなる拡大と株価上昇が見込める銘柄として期待しています。