宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回はNISAの投資先として米国株か日本株かで迷っている相談者に向けて、そもそも現在主流の「世界株式のインデックス型投資信託」での運用が今後も有効なのかどうかを考えていきます。

  • 世界株式のインデックス運用の投資信託がNISAの入り口として選ばれている
  • 米国株式は30年で約12倍に成長したが、今後もその成長が続くとは限らない
  • 日本株は成長が続くかもしれないが、リスク回避のためアクティブ型商品も検討する

世界株式インデックス型の投資信託は「安全パイ」?

【質問】
NISAを活用して投資信託を始めたいです。いろんな勉強会へ行ってみて、ようやくやってみたいと思うようになりました。ただ、米国と日本とどっちに投資するか迷っているところです。ぶっちゃけ、どっちが良いと思いますか?

資産運用の入り口であり、王道である「投資信託」ですが、厄介な点もあります。それは、約6000本もある商品群です。この中から、NISAで活用ができる商品を探していくという行動が待っています。
この行動が面倒くさい、どれを選んでいいかわからないからと、金融機関の「お勧め商品」に走ってしまうケースが見られます。

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商品を選別するためには、投資対象をグローバルに広るのか、それとも日本中心に考えれば良いのかなど、資産運用の考え方によってスタートも違ってきます。
投資家にとっては「お金が増えれば何でもいいよ」と言ってしまえばそれまでですが、リスクが伴う金融商品、そんな簡単にお金が増えるものでもありません。

その中でも、金融機関の窓口で勧められたからなどの理由もあって、最近売り上げが圧倒的に多い、世界株式(主に米国)を主体としたインデックス商品群などが、今ではNISAの入り口的な商品になっています。
数年間で利益が出ていることもあり、「それだけ人気がある商品だから失敗はないよね」などと、「安全パイ」として選んだ投資家が大半ではないでしょうか。
初心者の投資家にとって、「みんなやっているから怖くない」という感覚は、これからの運用にズッシリと重くのしかかってくるかもしれません。

30年で12倍に成長した米国株式市場、今後は?

相談者の悩みに答えると、金融機関で勧められた米国株主体のインデックス商品と、日本株主体のインデックス商品ではどちらが良いのか? これは、米国株と日本株の過去30年間の株価の推移を見ていくと理解しやすくなります。
例えば2025年2月から30年間さかのぼって、日本株を代表する株価指数「TOPIX」と、米国株を代表する株価指数「S&P500」パフォーマンスを比較すると一目瞭然で、パフォーマンスの差がわかります。S&P500は、約30年間で約12倍成長しています。それだけ米国の成長は凄まじいと言わざるを得ません。

【図表】日米の株価指数の過去30年のパフォーマンス
TOPIX(日本) S&P500(米国)
1995年2月末 1348.39 487.40
2025年2月末 2682.09 5954.50
上昇 2.0倍 12.2倍

これだけを見せられると、絶対的に米国株投資が安泰だと思われがちですが、私はとても楽観的に思えません。特に米国は出来過ぎの感があり、最近の10年間は怖いほどですが、実際の経済がどうなっているかはわかりません。それほど理解に苦しむ状況です。
私には、どうも大きな景気サイクルが延長した末に、トップの政策で経済があたふたしながらも、ようやく次のサイクルに移行を目指す過程のように思えます。
そして日本では、NISAによって動かされた経済が、今度はNISAによって苦しめられる経済になるかもしれません。

今までは「たまたま上手くいっただけ」

「資産運用立国実現プラン」「資産所得倍増プラン」……。日本がそんな国を目指すためには、NISAは欠かせません。これらの言葉によって米国中心のインデックス商品ブームが始まりました。「インデックス商品で積み立てをすれば問題ない」という考え方で、簡単に商品が決められるので、専門家などのアドバイスを頼む必要もない……ほとんどの投資家が、そんな幻想に陥っているように思えます。

たまたま米国、日本とも30年あまりの大きな長期成長サイクルに当てはまっていただけで、これからのサイクルには何の保証もないことに気づいてほしい。インデックス商品が成功したのは、株式市場全体が右肩上がりで上昇しただけで、たまたまインデックス商品の積み立て運用が上手くいっただけ。これまで短期の景気サイクルで下落したこともありましたが、大きなサイクルの中ではその影響は打ち消されます。

次の大きな30年のサイクルが右肩下がり相場になったとしたら、お金が必要な時には、損失覚悟で解約しなければなりません。
相場は、大きなサイクルが上昇、下落のいずれの場合でも、短期では上げ下げを繰り返していきます。どうせなら上がったときに解約したいし、その時は専門家の助言が必要な場合もでてくるはずです。

インデックス商品は完璧ではありません。上がり続けなければ儲けはなく、非課税で投資ができるNISAの意味もなくなります。

米国株は成長の反動に警戒。日本株は今も成長途上か

これから次の景気サイクルはどうなるのか? 特に米国株は、これまで金融緩和で経済を良くしてきた感がぬぐえません。金利が下がることによる株価の押し上げが続いただけという可能性もあります。現在、トランプ大統領がFRB(米連邦準備理事会)に金利引き下げを要求しているのも、目先の相場にプラスの影響を与えるものだとわかっているからです。

FRB
米国のFRBがいつ利下げを行うか、世界が注目している

今後、米国で金利引き下げの恩恵があるかどうかは、短期であればあるでしょうが、中長期では金利水準からしてもないでしょう。株価への恩恵は限られてくるはずです。債務残高も増加していることから金利は上げられないが、ハイパーインフレにはしたくないなど、課題は多くなりつつあります。米国株は、いよいよ大きな波に突入するのかもしれません。

日本はどうなのか? 過去30年を見ると、確かに米国には大きな差を付けられています。世界的な金融危機が発生した当時、日本はデフレ脱却のためにゼロ金利政策真っただ中で、当然ながらこれ以上の利下げはできませんでした。海外に目を向けると、海外は利下げ余地がある状態でした。このために内外金利差の縮小は避けられず、円高は防げませんでした。よって株価も安定しないというジレンマがありました。

今まで一本調子で急激に成長してきた米国と違って、日本は1990年のバブル崩壊からの下落相場が約22年間続いた後、2012年末以降のアベノミクス相場から現在まで、相場の上昇が約13年続いています。日本株を30年の大きい景気の波で考えるとすれば、米国の関税などの影響はこれからではありますが、上昇は継続中になっていると考えることもできます。

一方、貿易は日本に対して優位で、利下げ余地もあり、中間選挙に向けた経済刺激策も考えられるなど、今も強さが際立つ米国ですが、一気に上昇してきた成長相場から、成長に陰りが出始めた時の反動は凄まじいものとなっていく危険も感じています。

市場全体の成長に頼らないアクティブ運用商品も検討

結論付けると、これからの相場は荒れると思われるので、インデックス商品だけに頼るのは非常に危険です。

日本、米国ともリスクは増大しますが、日本株の方がリスクは低いかもしれません。しかし、日本株であってもリスク回避のために、市場全体の成長に頼らないアクティブ運用の商品への分散も絶対に必要になると思います。
できれば専門家にアドバイスしてもらうことも、これからは肝心になります。