「ブレグジット」で注目を集めるイギリスですが、日々のニュースでイギリス経済について語られることは多くありません。今回のイギリスのEU離脱を機に、イギリスの経済規模や通貨ポンドの為替レート、イギリスの株価についてあらためて確認してみたいと思います。

  • イギリスは世界第5位の経済大国だが、2024年には7位に落ちる可能性
  • イギリスの通貨ポンドはドルやユーロより値動きが大きい傾向
  • イギリスを代表する株価指数「FTSE100」は米国などに比べて伸び悩む

ブレグジット=British Exit (from the EU)

日本時間の1月31日夜、イギリスはEU(欧州連合)を脱退しました。
イギリスがEUを去ることを「ブレグジット(Brexit)」と呼びます。イギリスを表す「British」と、出口を意味する「Exit」を合わせた造語です。

このブレグジットをめぐって、イギリスの政治は大きく揺れ動きました。
イギリスのEUからの離脱を問う国民投票が2016年6月に行われ、その結果は当初の予想に反して離脱派が51.9%の票を獲得し、残留派をわずかに上回りました。ところが、離脱後のEUとの関係などをどうするかについて英国議会は揉めに揉めました。メイ前首相の辞任、ジョンソン首相の就任を経て、国民投票から3年半かかってようやく離脱にこぎ着けたのが今の状況です。

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イギリスは市民革命と産業革命が起きた、現代社会の発祥の地ともいえる国です。世界最大の経済大国の座はアメリカに譲って久しいですが、現在もイギリスの首都ロンドンは世界有数の金融センターとして大きな存在感を示しています。だからこそ、ブレグジットは世界の金融関係者が注目するビッグニュースとなっているのです。

イギリスは世界第5位の経済大国

以下のグラフは、国の経済規模を表す名目GDP(米ドル)のランキングです(図表1)。

【図表1】名目GDP(米ドル)の上位10カ国
GDPランキング2002年GDPランキング2018年GDPランキング2024年予測
単位:10億米ドル
出所:IMF World Economic Outlook Database October 2019

EUの共通通貨である「ユーロ」の流通が始まった2002年には、イギリスは世界第4位の経済大国でした。2018年時点でも、中国に先を越されてしまいましたが世界第5位、ヨーロッパではドイツに次ぐ2位の座を保っています。

ところが、IMFの予測に基づくと、2024年にはGDPが世界7位に後退してしまう見込みです。経済成長を続けるインドはともかくとしても、フランスにGDPを抜かれるのは、イギリスとしては心中穏やかではないでしょう。
この予測は2019年10月時点なので、ブレグジットの影響はすでに織り込まれていたと考えられます。EU離脱派の望みどおりイギリスへの移民は減るかもしれませんが、今までのようにEU諸国と自由な貿易ができなくなることが、イギリス経済にとってマイナス要因と見なされており、残留派にとっては今後も頭を悩ませ続ける問題になりそうです。

価格変動が大きいイギリスの通貨「ポンド」

EU加盟国の多くはユーロという共通の通貨を使っていますが、イギリスはユーロを導入せず、ポンドという独自の通貨を持ち続けることを選びました。
ポンド/円の為替レートの推移を見てみると、ドルやユーロとの違いがよくわかります(図表2)。

【図表2】通貨別の対円為替レートの推移(週足、2002年1月~2020年1月)
ポンド、ドル、ユーロの為替の推移

価格の変動が大きくなりやすいのがポンドの特徴です。特に2008年9月のリーマン・ショックのときは、ドルやユーロと比べるときわめて大きな落ち込みとなりました。2016年6月の国民投票でEU離脱派が優勢になったときも、円高ポンド安が急激に進みました。
この「金融市場で何かが起きたときの振れ幅が大きい」というポンドの特性が、短期的に利益を出したいFX(為替証拠金取引)の投資家に好まれる要因にもなっています。

伸び悩むイギリスの株価指数「FTSE100」

最後に示すデータは株価です。イギリスの株価指数を目にする機会はあまりないと思いますが、日本における東証株価指数(TOPIX)と同じように、イギリスでは「FTSE100」という株価指数が知られています。

【図表3】FTSE100の推移(週足、2010年1月~2020年1月)
FTSE100の推移

上記がFTSE100の過去10年間の値動きです(図表3)。2015年の「チャイナ・ショック」と呼ばれる中国株式市場の暴落、2016年の国民投票のときこそ株価が落ち込んでいますが、長期的には順調に成長しているように見えます。

【図表4】英国、米国、日本、ドイツの株価指数の比較
(週足、2010年1月~2020年1月)

英国、米国、日本、ドイツの株価指数の比較

ところが、ほかの株価指数と比べてみると印象が変わります(図表4)。
2010年の年初の株価を100としたとき、2020年1月末時点で米国は約282、ドイツは215、東日本大震災の影響で一時は大きく落ち込んだ日本も179に増えているのですが、イギリスは132と伸び悩んでいます。
2010年代の株価の足踏み、つまりイギリス企業の全体的な伸び悩みが、国民がEUからの離脱を望んだ遠因になったのかもしれません。

FTSE100に採用されているイギリス企業

FTSE100は、ロンドン証券取引所に上場しているイギリス企業のうち、時価総額が大きい100社の株価をもとにした株価指数です。
実際にどのような企業が入っているのでしょうか。たとえば下記のサイトで、FTSE100に採用されている企業の一覧が確認できます。

FTSE 100 constituents shares prices – London Stock Exchange

2002年2月4日時点の100社の名前をざっと眺めてみると、バーバリー、グラクソ・スミスクライン、ロールスロイス、ボーダフォン、ユニリーバあたりは知っている方が多いと思いますが、大半は日本人にとってなじみが薄い企業です。このあたり、先日紹介したアメリカのNYダウの30社とはずいぶん趣きが違います。
ロンドンは世界有数の金融センターということもあり、銀行・証券・保険などの金融系企業が多いのもFTSE100の特徴といえます。

FTSE100にはETFで投資できる

株価指数を対象とした投資の方法は、主に「投資信託」と「ETF」の2種類があります。ただし残念なことに、今のところイギリスのFTSE100のみを対象とした投資信託は設定されていないようです。
株式と同じ方法で取引できるETFでは、FTSE100に連動する商品が東証に上場しています。今なら1万円程度で投資できるようです。

UBS ETF 英国大型株100(FTSE 100)

何が起きるかわからないのが投資の世界。大切な資産を守るためには、さまざまな資産にお金を振り分ける「分散投資」が大切です。
イギリス経済はEUからの離脱による悪影響ばかりが指摘されますが、今の世界経済はブレグジットの影響より、まったく収まる気配を見せない新型コロナウイルスの猛威の方が大きなリスクとみなされているようです。こんな時だからこそあえて、イギリスの通貨ポンドやイギリス株式に目を向けてみるのもいいかもしれません。

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