「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、株式だけでなく債券などにも投資する投資信託「バランスファンド」の効果について考えてみたいと思います。

弊連載をご覧くださいまして、ありがとうございます。
ところで読者の皆さまの中には、「どんな奴が書いているのかな?」と思って、文末のプロフィール欄の「趣味」をご覧いただいた方もいらっしゃると思いますが……。
「こいつ、暗い奴だな」と思われたのではないでしょうか?
そうなんです。筆者には一人も友達がいません!
などと自慢できることではないのですが、筆者は人間関係が非常に不器用なものですので、他人に利用されてしまったり、だまされてしまうことが、よくありました。

さて、人間関係が不器用な筆者が言えることではないのかも知れませんが。

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人間関係や夫婦の関係は、「相性」がとても大切だと思います。
やはり、「相性の合う」方とお付き合いする方が、人間関係はとてもスムーズになりますよね。
(そうか、筆者と相性の合う人なんて、いるハズもないよな。なんせ、変わり者ですから)

投資では「相性の合わない」のがベストな組み合わせ?

ところで、人間関係とは異なり、投資の世界では「相性が合わない」どころか、「性格が真逆」な方が、ベストな組み合わせといえそうです。

あらためて、債券と株式の違いとは?

  株式 債券
目的 外部からの資金調達 外部からの資金調達
満期 ない ある
満期時には額面で返す約束
貸借対照表では 自己資本
(返済不要)
他人資本
(返済必要)
インカムゲイン
(保有中の利益)
配当金
(業績に基づき配当する)
利息
(発行時に約束されている)
キャピタルゲイン
(売買益)
損益のどちらもあり得る 損益のどちらもあり得る
価格が動く理由 その会社の業績や噂、
金利・社会・世界情勢などに
左右される
主に金利に左右される
景気に対して 株価は先んじて動く傾向 債券価格は景気とは逆に動く傾向
インフレに対して 強い 弱い
最悪のケース ゼロ ゼロ
万が一の時は他人資本の債券から優先して弁済される
株式は自己資本なので弁済は、まず見込めない
発行者 企業 政府、地方自治体、企業など

※お断り
マイナス金利の影響もあり、実際の債券の動向は本稿とは異なることがあります。
また、本稿における「債券」とは利付債を意味し、劣後債や仕組債などは含まれていません。

上の表は、拙稿の第4回の表にアレンジを加えて(パワーアップして)、再び載せたものです。

表の「貸借対照表では」という行をご覧いただくと、株式は自己資本なので、(株式を発行して資金調達をした企業は)返済が不要です。それに対し、債券は他人資本ですから、資金を出してくれた人、つまり債券を買ってくれた人に返済の義務が生じます。
という具合に、株式と債券って、その目的は同じ「資金調達」でも、性格(?)が真逆なのが分かりますよね。

ほかにも、「満期」という行や、「インカムゲイン」という行をご覧いただくと、それぞれに「約束」という文字が含まれています。しかし、株式には「約束」の文字が含まれていません。
こういった点でも、株式と債券は、その性格が真逆、つまり「相性が合わない」者同士と言えると思うのですが、いかがでしょうか?

さらに、表の「景気に対して」という行をご覧いただくと、株価と債券価格の、それぞれの動きは逆の傾向にあり、インフレに対してもお互い背中合わせのような性格なのです。

ごはんとみそ汁
考えてみれば、ごはんとみそ汁も「個体と液体」「炭水化物(米)とたんぱく質(大豆)」ですから性格は真逆ですが、確かにベストな組み合わせです

株式がアクセルなら、債券はブレーキ?

拙稿第5回でも申し上げている通り、(株式に比べれば)債券は値動きが安定しているが、(株式に比べれば)債券には成長が見込まれません。なので、やはり資産の成長には株式への投資が欠かせません。
とはいっても、長期では成長が期待できる株式も、短いスパンでは株価は上下に変動します。(特に「預金が絶対!」という方は)株価が下落し、元本割れを起こすのは絶対に嫌ですよね。

では、「株式と併せて、債券にも投資をする」というのはいかがでしょうか?

先述の通り、株式と債券は真逆の性格です。
株式への投資が、資産を成長させる「アクセル」だとするのなら、債券への投資は「ブレーキ」の役割を担っているといえるのではないでしょうか?

自動車はアクセルだけでは危険です。ブレーキの働きがあってこそ、目的の場所へ安全に移動できます。
これを投資に当てはめてみると、株式だけでなく債券にも投資したら、

「価格が変動(価値が上がったり下がったり)するリスクを抑えられる」

と考えることができそうですよね。

株式と債券の値動きは完全に真逆ではない

ところで、勘の鋭い読者のみなさまの中には、

「えぇ? 価格の動きが逆なら、もしかして株式と債券の両方に投資してもプラスマイナスゼロになるだけなのでは?」

と、突っ込んでいらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。

ごもっともです!

でもあいにく、性格は真逆でも、その価格の動きまで合わせ鏡のように真逆ということではありません。あくまでも「価格の動きが逆の傾向」にあるだけなのです。

なので、性格が真逆の株式と債券に投資すれば「リスクを抑えられる」、つまり「価格の変動の幅を狭められる」可能性があるのであって、決して「リスクがゼロになる」わけではありません。

ここまでの文章読んだ「預金が絶対!」という方は、「なーんだ、やっぱりね。世の中、おいしい話はないよね」と、心の中で念を押していらっしゃいませんか?
結論を出すのは、まだまだ早いですよ。

ハイブリッドな投資信託「バランスファンド」

ところで、「株式への投資」と「債券への投資」という、性格が真逆な、異種な資産への投資を同時に行う、手間なく気軽にできる方法ってないものでしょうかね?

ガソリンと電気という、異種な燃料の組み合わせで動く自動車を「ハイブリッドカー」といいますよね。
投資の世界でも、ハイブリッドな商品があります。

株式と債券という異種な資産をワンパッケージにした投資信託を、投資の世界では「バランスファンド」といいます(投資信託協会の分類では資産複合型といいます)。
バランスファンドという一つの商品に投資するだけで、相性の合わない者同士、つまり株式と債券に同時に投資することができるのです。

ハイブリッドカー
電気とガソリンを組み合わせることでエネルギー効率を高めるハイブリッドカーのように、バランスファンドも価格の変動を抑えながら一定の値上がりを目指して、投資の効率を高める効果が期待されます

リーマンショック時のバランスファンドの思い出

バランスファンドの効果について、まだ半信半疑という方も多いことでしょう。
ここで、筆者が若い時のお話をしたいと思います。

同じ運用会社で、「株式100%」の株式ファンドと、「株式20%と債券80%」のバランスファンドの2つを持っていたのですが、2008年のリーマン・ショックの時に、バランスファンドの実力をまざまざと見せつけられました。

株式ファンドの方は、1万口=1万円で始まった基準価額がみるみる下落し、3000円くらいまで下がりました。一方、バランスファンドの方は同じ1万円で始まった基準価格が、8500円くらいで推移していました。
(基準価額とは投資信託の価格のこと。株式の株価にあたります)。

その後、株式ファンドの方は投資額に対して、2.1倍くらいになったところで売却しました。バランスファンドの方は投資額に対して1.3倍くらいで売却したような記憶がありますね。
長く待てば結果的に株式ファンドの方が値上がりしたのですが、当時は多くの人が株式ファンドの急激な値下がりに耐えられず、売ってしまったと聞きます。

投資も実はライフプランニングが大切

ここ7年ほど、筆者はバランスファンドに投資していません。
と申しますのも、今の(つまり年齢を重ねた)筆者はバランスファンドを好まないからです。

筆者がなぜ、バランスファンドを好まないのでしょうか?
ちなみに、筆者のお客様でバランスファンドに投資いただいている方もいらっしゃいません。その理由は、実はお客様のライフプランニングとの関係によるからです。
ライフプランニングというと、「生命保険の見直し」をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、実は投資もライフプランニングが大切なんです。投資はギャンブルでも、投機でもありませんからね。

とは言いながら、筆者は、この3月にはバランスファンドに、再び投資する予定です。

なぜ、ライフプランニングのための投資でバランスファンドを選ばなかったのか?
そして、なぜ再びバランスファンドへの投資を始めようと思ったのか?
その理由については、「投資とライフプランニングの関係」とあわせて、稿を改めて述べてみたいと思います。

まとめに代えて

「インフレによる現金資産の価値の目減りを防ぐ」ことを目的に、具体的にはインフレ率2%と同じくらいのパフォーマンス(=投資の成果)を目指した投資には、世界の株式と債券に投資するバランスファンドが向いていると、筆者は考えています。

〈お断り〉
筆者は、今では好まないバランスファンドを、7年ぶりに、そして3月に購入予定と書きましたが……。
「じゃあ、バランスファンドは3月が買い時なの?」と心の叫びが聞こえた方や、「リーマン・ショックの時に実力を発揮したバランスファンドに投資するということは、また金融危機が?」と頭が回転した方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
投資とは、「未知の未来への投資」です。
「自己責任」というと厳しく聞こえてしまいますが、叶うことなら、その判断も含めて、楽しみながら投資に取り組んでいただきたいと思います。

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