「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、海外に投資する際に「台湾」がその選択肢になりうるかどうかを考えてみます。

  • 世界の半導体メーカーのトップ3に台湾のTSMC社がランクイン
  • 新型コロナによるテレワークの需要や自動運転車など、時代の波に乗る台湾経済
  • 台湾の輸出額の4割強が半導体関連で、偏りが大きい

※台湾は日本政府が国家として承認していないため、日本の基準では台湾は「中国の一地域」という扱いですが、独自の政府や通貨など国としての機能を有しているため、本稿では便宜上、台湾を「国」と表現しています。また、本稿は情報や筆者の考え方を述べているだけで、投資を推奨しているわけではありません。投資は「未知の未来への投資」ですので、その結果は、ご自分で引き受けてくださいませ。

前回では「未知の未来への長期分散の投資に『日本株』の選択肢はなし?」と締めくくらせていただきました。
いよいよ「海外への投資」を本格的に考える時が来たようです。

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「海外旅行なら、よく行っているし、わくわくもするけど、海外への投資って……」と躊躇う方も、いらっしゃることでしょうね。

ちなみに、筆者は実は海外には行ったことがありません。海外投資の経験は豊富かもしれませんが。

本稿では、昨年の暮れに、筆者のお客様からいただいたご質問にお応えするカタチで、海外への投資について述べてみたいと思います。

投資先としての台湾を考える

「台湾って、新型コロナウイルス感染症の抑え込みが上手くいっているようですね? 投資先として、検討に値しますか?」
と、筆者のお客様から尋ねられました。

トラリピインタビュー

そこで、本稿では投資先としての台湾を考えてみることにしましょう。

九份老街
観光地としても人気の台湾

インターネットで、「台湾 新型コロナウイルス感染症」と検索すると、

「世界から称賛される台湾の新型コロナウイルス対策」
「域内感染「ほぼゼロ」の台湾にみる、正しいコロナ対策」

という見出しが出てきます。
面積の大小はともかく、日本と同じ島国という環境で、新型コロナウイルスの対策は日本と違ってうまく行っているみたいですね。

日本のように、オリンピックを控えながら、新型コロナウイルス感染症への対策が「うまくいっていない」状況で、株価が上がっていると、そこはかとなく不安が胸を過ります。
しかし、もし台湾のように「世界から称賛される」ほどの新型コロナウイルス感染症への対策を実行し、なおかつ、株価が上昇傾向なのであれば、納得ですよね。

台湾がGAFAを支える?

さて、台湾の経済を牽引しているのは「半導体」です。
世界の企業ごとの半導体メーカーの売り上げで、堂々、世界のトップ3にランクインしているのが、台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.)です。

世界の半導体メーカーの売り上げ上位10社のうち、台湾の企業は1社だけですが、台湾の輸出額の内訳を見てみると、電子部品と情報通信部品の合計で輸出の4割強を占めています(2018年、台湾財政部統計の資料による)。

新型コロナウイルス感染症による、いわゆる巣ごもり需要やテレワークに応えるスマートフォンなどの端末、そして自動運転化への進化が著しい自動車産業など、台湾の経済はまさに時代の波に上手く乗っているといえるでしょう。

GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)に代表されるような、巨大ICT(情報通信技術)・AI(人工知能)企業を支えているのが台湾だと考えられます。

【図表1】TSMCの株価(ニューヨーク証券取引所、2016年2月~2021年1月、終値)
TSMCの株価
【図表2】台湾加権指数の推移(2016年2月~2021年1月、終値)
台湾加権指数

長期投資の視点に立って台湾を見る

さて、まさにトレンドに乗る台湾ですが、長期的な視点で考えてみましょう。

台湾の輸出額のうち、4割を占めているのが半導体なのは先述の通りです。台湾の経済はモノカルチャー経済とはいいませんが、偏った傾向が否めません。

半導体素子
半導体の輸出に頼る傾向が強い台湾経済

ICTやAIは、常に進化し続けていますので、その進化にさえ応えることができれば、その需要が途切れることはないと考えられますが、世界市場で支配的な地位にあるGAFAや自動車メーカーに、(表現としては微妙ですが)事実上、国ごと振り回されてしまうことも考えられます。

先述のとおり、島国の台湾。その面積は九州よりも少し狭い程度で、2300万人ほどの人口です。ですので大きな内需は期待できません。「国ごと振り回されてしまう」という表現も、あながち大袈裟ではないのではないでしょうか?

また、台湾でも、日本と同じく少子高齢化が進みつつある点も気掛かりです。
若い人が減っていく台湾の社会が、ICTやAIなどの進化の激しさに対応し続けることができるのでしょうか? という心配を抱くのは筆者だけでしょうか?
加えて、少子高齢化が進みつつあれば、内需が縮小していく一方なのは、これまた日本と同じですよね。

ところで半導体売上高上位10位に名を連ねている企業の国は、台湾のほかはアメリカ、中国、韓国、そして日本です。
日本はともかく、GAFAがあるアメリカや、世界一の人口を抱える中国がいて、競合が激しいことが察せられます。
競合が激しいことが、台湾の企業にとってプラスなのかマイナスなのか、今のところは何とも申せませんが。

半導体に続く主力産業が育つかが、台湾の将来の成長のカギともいえそうです。

このように考えてみると、やはり投資先が「台湾だけ」と言うのはリスクの高さが否めません。
繰り返しになりますが、内需が期待できない国で、輸出産業が半導体関連に偏っている点が気になります。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の抑え込みの成功と、現在の半導体メーカーの強さは魅力です。
台湾だけに絞らず、台湾とともに、他の国への投資も視野に入れて、考えるべきでしょう。

(次回は3月1日を予定しています)

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