宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、家庭を持つ40代男性会社員のiDeCoのポートフォリオ(資産配分)について考えていきます。
- 40代の資産運用は中期的な目線を中心に、長期的な目線も交えて将来を描く
- 毎月の積立額は3万円、うちiDeCoは1.5万円が目安。NISAや積立預金も
- iDeCoは長期で安定的に運用するか、先にリスクを取って増やしておくか
40代の資産運用は「中期」と「長期」の両方の目線で
【質問】
結婚して10年目、子供も小学生一人います。このご時世なのに、株がどんどん上がっているみたいですね。子供と家内のためにも、iDeCoをやってみようと思っています。どうでしょう、何も知りませんが、心構えと、もうかる商品の組み合わせを教えてくれませんか?
前回に引き続き、iDeCo(個人型確定拠出年金)の商品の組み合わせに関する質問にお答えしていきます。
今回の相談者は、社会人18年目の41歳。私が相談を受ける割合が多い年代になります。
この年代、つまり40代前半というのは、私の中では「老後にどうやって生きていくか、最初で最終のターニングポイント」として、非常に重要な時期だと思っています。老後まで含めた、まだまだ長い人生を生きる方向性を示していける、また示していくべき年代だと思います。
今あるお金や働いた収入を、将来の資産として増やしたいのか? なすがまま生活していくのか? そもそも、なすがままで生活可能なのか? 現実に向き合わなければ、もしかしたら65歳以降の生きる力を失うことにもなります。
私が運用の世界に入ったのもこの年代で、当時は株価が低迷していたので、まさか30年半ぶりに日経平均株価が30,000円を突破するとは思いもしませんでしたが、そのおかげで、私は長期投資のメリットを実感した一人になりました。
30年前と今との大きな違いは、昔の日本には物価上昇があったことです。そして、物価以上に株と不動産の価格が激しく上がりました。当時の状況を指して「バブル経済」とも言われます。
さて、現在の日本経済はというと、いまだデフレ脱却に向けて迷走中でもあり、GDP(国内総生産)は停滞しています。日銀の緩和政策(マイナス金利、株買い進め)で景気を維持するのに一生懸命の状態が続いています。今の株高は、コロナ後の景気に対する大きな期待が株価に反映された結果としか思えません。さすがに日経平均が3万円を超えてしまうと、ここからは慎重に見ていくべきか、と感じます。
ところで、前回の連載で「20・30代の方は長期的な目線で描いていきましょう」と話しました。現在の経済状況をみると、長期的な視点が大切だというのはうなずけることだと思います。ですが40代ともなると長期的な目線だけでは不十分で、「中期的な目線を中心に、長期的な目線も交えて将来を描く」という姿勢が大切だと思います。iDeCoで積み立てられる期間も最大で20年間となります。儲けるという発想よりは、「お金を働かせて維持させる」という感覚が正しいでしょうか?
まずは、配偶者がいるか? 扶養家族がいるか? 持ち家など、大きい買い物はしていないか? など、自分の今の状況をもとに判断していただくために、私からは最善のポートフォリオというよりは、「割り切り案」と「チャレンジ案」を提示することにします。その割り切り案とチャレンジ案をもとに、iDeCoなどで運用する場合のリスク許容範囲を決めていく流れとします。
大きな失敗を避けて長く運用するか、40代のうちにリスクを取るか
あらためて、今回の相談者について詳しく見ていきましょう。
工具関連製品を製造する工場に勤めている男性のサラリーマンで、年齢は41歳。配偶者有り、子ども1人(小学2年生)、年収約450万円の方になります。現在の預金は約200万円。数年前に自宅を新築して、住宅ローンの残高が2000万円ということでした。
お子様が小学校低学年で、教育資金が必要なことを考えると、お子様が独立する前にお金が不足してしまう事態があるのではないか心配です。したがって全額をiDeCoに回すのではなく、一部を換金しやすい形で運用することも必要だと思います。
私でしたら、毎月iDeCoに1.5万円と、いつでも換金できる投資信託をNISAかつみたてNISAで1万円、普通積立預金5,000円の、合計3万円でスタートします。前回と同じく「永久に積立を続けるiDeCo、何かあったら途中下車もできるNISA、そして簡単に下車できる普通積立」というイメージで、今後も最低でも毎月3万円を積み立てることにします。
ただ、ローンの支払いもしながら毎月3万円を資産運用に回すと、相談者のおこづかいが減らされてしまうのでは? 私としては心配になってしまいますが……。
次にiDeCoのポートフォリオです。
①割り切りポートフォリオ(運用期待値=年2%)
元本確保型商品40%、国内株式商品15%、外国株式商品10%、バランス型商品(債券多く含む)35%
②チャレンジポートフォリオ(運用期待値=年4%)
元本確保型商品20%、国内株式商品40%、外国株式商品20%、バランス型商品(債券多く含む)20%
①割り切りポートフォリオは、元本確保型を多くしてリスクを減らし、中長期的に一定の利回りを目指す運用になります。大きい失敗を避けるためのポートフォリオとも言えます。
このポートフォリオで毎月1.5万円を20年間積み立てれば、元本の360万円が、20年後には442万円になるという計算です。最悪、市場環境が悪くなって運用期待値=0%になった場合でも、結果として20年間で約360万円を積立できます。もちろん、運用で増えなくてもiDeCoによる節税効果があるので、運用が0%でも資産全体ではプラスの収益になります。
iDeCoのお金を65歳以降の年金、死亡保険、相続の代わりとみなせば、一生涯の死亡保険の減額など保険料の見直しにもつながるでしょう。
そして、40代はこれから教育にお金がかかり始める年代になりますので、NISAなども活用しながらお金を運用し、できれば少しずつでも教育資金の原資を増やしていきたいものです。
次に、②チャレンジポートフォリオです。毎月1.5万円を年4%で運用できれば、20年後には548万円になります。こちらはリスクの大きい株式の比率が高めなので、本来は長期的な目線での運用法になります。マーケット状況によってはポートフォリオのメンテナンスが絶対必要になってきますので、ご承知ください。
②は、先々までリスクを負いたくない方に選んでいただきたいポートフォリオとも言えます。既婚でお子様がいるケースでは、さまざまなお金の入用を想定して、総合的に考えなければなりません。まだ若い40代から50代の頭までにリスクを取ってお金を増やして、60歳を迎える前に普通積立預金中心の運用に切り替えるという方法もありうると思います。
この先20年、資産運用をしながらローンを支払い続ければ、つらい時もあるかもしれません。ただ、決して悲観することはありません。お子様がいることによって、お子様からは「夢」や「希望」を与えてもらえます。そして持ち家があることによって、「自由なる居場所」を確保できます。
奥様の協力を得ながら、借入金の返済や教育資金の準備、そしてiDeCoと向き合っていただきたいものです。
次回は、50代の方のポートフォリオを考えていきます。
(次回は3月5日を予定しています)