世界的にインフレ懸念が高まっているようですが、日本はまだインフレというには、ほど遠い状況です。とはいえ、物価が下がっている実感がない人も多いでしょう。それどころか最近では、「値段は同じだけどなんか前よりも中身が少なくなった……」なんて感じることが増えていませんか? それには「名目値下げ」や「実質値上げ」、「シュリンクフレーション」について知っておくことが重要です。

  • 「価格はそのままに中身を減らしては販売する」実施値上げが増えている!
  • いつの間にか家計に負の影響を与える「シュリンクフレーション」には注意が必要
  • 経済指標には「名目」と「実質」がある。実質を確認することが重要

「なんか前よりも少なくなった……」が増えている

消費者庁が2019年3月から4月にかけて行った調査によると、価格は変わらないが中身を減らす「実質値上げ」商品が、日用品や弁当、菓子など食品類を中心に増加していると公表されています。「そういえば、いつも買っているあの商品、中身が減ったような気がする……」と感じる人も多いかもしれません。

デフレ下においては、商品の値上げはできないが、製造コストの負担を軽減するために「商品の価格はそのままに内容量を減らして販売する」という、実質値上げを選択するメーカーが増加傾向にあるようです。

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値段を上げれば必然的に「消費者離れ」の可能性が高くなります。そのため「内容量の変化は気付かれないだろう」と、ある意味、消費者をこそっりだますようなやり方で、気付かないうちに実施されていることから「ステルス値上げ」とも呼ばれています。

物流コストや燃料費の高騰により、利益の確保が困難だけど、なかなか値上げできないという状況においては、メーカーにとっても苦肉の策なのでしょう。しかし、消費者庁の調査データでは、実に82.2%もの消費者が負担を感じている結果となっています。

【図表】実質値上げに関する意識調査結果
消費者庁実質値上げに関する意識調査結果
出所:消費者庁(COLUMN1 実質値上げ(ステルス値上げ)に関する消費者の意識(物価モニター調査結果より)

シュリンクフレーションとは何か

価格はそのままで容量だけを減らすことを、経済用語で「シュリンクフレーション」と呼びます。英語の「シュリンク(縮む)」と「インフレーション」を組み合わせた造語です。

例えば、昨年100円だった菓子が今年は95円だった場合、5%の実質値下げです。しかし、菓子の容量が10%減っていた場合には、中身を10%減らして価格を5%下げているため、5%の名目値下げ、かつ実質値上げというシュリンクフレーションになるわけです。

モノの価格が上がるインフレーションよりも、いつのまにか家計に響くシュリンクフレーションのほうが恐ろしい状況といえるかもしれません。この傾向は数年前から見られましたが、消費税が8%から10%に引き上げられた2019年10月以降に一層顕著になったといわれています。

日本のスナック菓子
いつも買っているあの商品もいつの間にか中身が減らされているかもしれない……。
Ho Su A Bi / Shutterstock.com

経済指標を見る際には、名目と実質を理解することが肝心

経済は、生産と消費のバランスで成り立っています。また、景気の動向は賃金と物価の相関関係で読み取れます。国全体の経済指標は、これらにGDP(国内総生産)や金利などの要素を加えて判断することが可能です。

物価と同様に、GDPや金利、賃金などにも「名目と実質」があります。例えば、GDPにおいては、国内生産の数量に市場価格をかけて算出された総合計額を「名目GDP」と呼び、名目GDPから物価変動の影響を除いた額を「実質GDP」として算出する方式がとられるようになってきました。

物価が上昇すると名目GDPも上がります、しかし、経済規模は比例しないため、近年は名目GDPよりも実質GDPを重要視することが、正しい経済指標の見方とされています。

経済構造がより複雑化してきている現代においては、名目の数値だけを見て一喜一憂するのは、時代遅れといえるかもしれません。物価に関しても名目上の値下げではなく、実質的な価値や内容量などに着目する必要があるでしょう。

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