現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第3回は、世界No.1の総合モーターメーカーである日本電産(6594)を取り上げます。
- 日本電産は精密小型モーター世界一のグローバル企業
- EV、省エネ家電の需要増が追い風。多くの世界シェアNo.1の製品を有する
- 2022年3月期は売上高、営業利益ともに過去最高を見込む
日本電産はどんな会社?
日本電産は精密小型モーター世界一の企業です。1973年、創業者の永守重信代表取締役会長によって京都市西京区にて設立されました。
有名な「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」「知的ハードワーキング」といった企業精神で技術開発やコスト競争力を付け、積極的な海外展開で成長を続けました。M&Aなども巧みに活用し、事業規模の拡大を続け、今日では世界44カ国300社超のグループ会社を持ちます。従業員は約12万人となり、モーターでは世界一のグローバル企業となりました。
日本電産の本社は現在では京都市南区に移転していますが、本社1階のロビーには創業時の精神を忘れないために当時のプレハブ小屋が展示されています。中には永守会長が銀行から融資を受けるために担保として差し出した生命保険の証書が展示されており、創業時の苦労が忍ばれます。
日本電産のモーターは身の回りのあらゆる所に使われています。冷蔵庫、掃除機などの家電、パワーステアリングや駆動システムの車載モーター、ハードディスクや光ディスクなどのサーバーやパソコン用の精密小型モーターなど様々です。
世界の消費電力の半分はモーターによって消費されていると言われており、自動車や家電製品、産業機械の性能はモーターの改良による部分も大きい昨今ではさらに重要度が増しています。
日本電産の強みは?
日本電産の強みは軽薄短小と呼ばれるモーターの技術です。長年の技術開発によって軽くて薄く(小型)かつ省エネ性能の高いモーターを徹底したコスト削減で大量に製造することにより、製品の競争力では業界随一となっています。
近年では電気自動車(EV)向けの駆動用モーターが業績の成長ドライバーとなっています。ガソリン車に比べて電気自動車は部品の点数が少なく組み立ても容易となるため、モーターとバッテリーなど部品の性能がそのままクルマの性能となります。日本電産は現在世界一の自動車市場である中国の電気自動車向けモーターでシェアを拡大、欧州でも大手メーカーと協業するなど競争力をさらに増しています。
自動車だけでなく省エネ家電への需要もコロナにより在宅時間の増加で大きな商機となっています。日本電産のブラシレスDCモーターは従来のモーターに比べて消費電力が約半分と省エネ性能に優れており、扇風機、冷蔵庫、洗濯機、自動掃除機、エアコンなど収益性の高い白物家電を中心に採用が進んでいます。
このほかにも日本電産は技術力を生かした事業展開で自動車の電動パワーステアリング用モーター、スマホの振動モーター、ハードディスク用のスピンドルモーターなど多くの世界シェアナンバーワンの製品を有しています。
日本電産の業績や株価は?
日本電産の今期2022年3月期は売上高が前期比で5%増の1兆7000億円、営業利益が12%増の1800億円とともに過去最高を見込んでいます。
新型コロナ感染拡大後の省人化や脱炭素の流れで、省エネ性能の高い小型モーターの需要が加速しています。成長ドライバーである電気自動車の駆動用モーターも価格競争の激しい中国市場でさらに伸びを見せています。
9月10日の終値は13255円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約133万円弱です。
永守会長と自動車部門のトップである関社長を中心とした経営手腕による事業拡大が続いています。脱炭素化などの追い風が続くこともあり、当面は成長への期待が株式市場でも継続しそうです。