資産形成の近道は小型株にあり──。「小型株集中投資」を実践する気鋭の投資家・遠藤洋さんに、今からでも始められる小型株投資の極意を教えていただく連載。第9回は、遠藤さんが投資した医療ベンチャーのセルソース(4880)について、なぜこの銘柄に注目したのかを語ります。

  • 身近な富裕層の人たちが幹細胞を打つのを見て、セルソースの将来性を感じた
  • セルソースの筆頭株主は美容外科業界の著名人。経営者の考え方にも共感
  • 今の時代、人々が欲しいのは「健康な時間」。予防医療は投資家として無視できない

幹細胞に高いお金を払う富裕層

遠藤洋
遠藤 洋
投資家
投資コミュニティixi主宰

セルソース(4880)は2019年10月に上場したばかりの医療ベンチャー企業です。僕が最初にこの銘柄に興味を持ったのは、上場時点で黒字経営だったところです。

医療系のベンチャー企業は赤字で上場するところも多く、どちらかといえば赤字覚悟で先行投資して、薬が完成したときに大きな利益を出すといった、ある種のギャンブル的な要素をはらんでいる傾向があります。ところがセルソースは初年度から毎年連続して黒字を出している、医療ベンチャーの中では非常に珍しい会社でした。

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セルソースのビジネスは、幹細胞という特殊な細胞を製造して、それを病院や美容クリニックに卸すというものです。幹細胞は肌の若返りや再生医療に効果があるといわれていて、健康寿命を延ばす技術として期待されています。

セルソースに将来性を感じたのは、僕の周りの50代や60代のお金持ちの人たちが、数年前から幹細胞に興味を持ち始めていたことです。幹細胞を打つと健康になるとか若返るとか、注射するためにアメリカへ行ったとか、1本で100万円かかったとか、そんな話を複数の友人から聞きました。

僕も先輩経営者に連れられて、試しに幹細胞を打ってみました。高いお金を払っても、僕はこれといって効果を感じなかったのですが、その先輩経営者は「体がほかほかする」と言っていました。
とにかく、周りの人がみんな興味を持って高いお金を払う姿を見て、幹細胞のビジネスは今後間違いなく伸びていくと確信しました。

幹細胞
セルソースの主要事業は、再生医療や美容のための幹細胞の培養(写真はイメージです)

筆頭株主は美容外科の業界で著名な医師・経営者

セルソースについてさらに調べていくと、筆頭株主は経営者ではなく、山川雅之さんという方です。山川さんは美容外科の業界ではとても有名な方で、自身も医師として、たくさんの美容クリニックを経営しています。このような方が株主として経営に関わっているうえに、自身が経営するクリニックにセルソースの商品を卸して売上を作れることも強みといえそうです。

トラリピインタビュー

経営者の裙本(つまもと)理人さんについても調べました。インタビュー記事で裙本さんは「収益がなければビジネスではない」としっかり明言しています。赤字覚悟ではなく、資金管理をしっかりできているところは好感を持ちました。
そして裙本さんは、自社の商品が社会に提供する「価値」を重視しています。会社の利益は、その会社が社会に提供した価値の対価だということを、僕はよく投資コミュニティで話しています。そこの感覚が合ったのも、僕がセルソースに投資した理由です。

上場してすぐのセルソースの株価は600円前後(調整後)で、時価総額は100億円ほどでした。医療業界は市場が大きいために時価総額も伸びやすく、小さな会社でもわりとすぐに1000~2000億円に行きます。

セルソースは上場時点で黒字だと言いましたが、当初の売り上げは少なく、実績ベースで16億円、純利益が2億円くらいでした。それで時価総額が100億円ですから、PERは50倍です。PERの数字だけを見たら割高と感じるかもしれませんが、医療業界全体で見ると売り上げ16億円は非常に小さく、僕は「伸びしろしかない」と判断しました。

上場してしばらく株価は伸び悩んでいたのですが、去年の夏頃から上がり始めて、今では僕が買った時から7倍くらいになりました。時価総額は1300億円ほどで、今も上場来高値をうかがう動きをしています。セルソースの株は今も持ち続けています。

【図表】セルソースの株価(週足、上場~2021年11月19日)
セルソースの株価

予防医療という「健康な時間を延ばすビジネス」の将来性

医療や製薬の業界についてそこまで詳しくはないのですが、今の時代に人々が欲しいものは何だろうと考えたときに、それは「時間」だと考えました。充実した時間を楽しむには、健康であることが必要です。そう考えると、「健康な時間を延ばすビジネス」である予防医療は、投資家として決して無視できないと思いました。

知らない業界なので、いろいろ勉強しました。本を読むだけではなく、看護師や医師の方など医療現場の人にも話を聞きました。ちょうど僕の友人に裙本さんの友達という人もいたので、その人にも会って話を聞きました。

幹細胞のビジネスは、ある意味で地味かもしれません。医療ベンチャーとして注目されやすいのはどうしても、がんや認知症に効く薬を開発するような会社です。確かに夢はありますが、それに比べると、主力商品が関節の疾患を治療するための幹細胞の加工というセルソースは現実的で、地に足が着いたビジネスという印象です。僕が調べたときに、そうした上場企業はセルソース以外にありませんでした。

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