気象変動の激甚化を食い止めるべく、グリーンテクノロジーの導入が急がれています。「そのカギを握るのがレアメタルの活用である」と株式アナリストの鈴木一之さんは語ります。そもそもレアメタルとは何か。どのように応用されているのか。生産にあたりどのような問題があるのか。詳しく解説していただきました。

  • 日本のレアメタルの需要は世界需要の半分を占める。国内先端産業を支える
  • レアメタルは必ずしも資源量が少ないわけではない。問題は産出地域の偏在
  • レアメタル、レアアースを代替する技術や新素材を開発する努力を続けるべき

レアメタルの定義は意外とむずかしい

新型コロナウイルスの世界的な感染で1年間延期されていたCOP26(気候変動枠組み条約締約国会議)がイギリス・グラスゴーでいよいよ始まります。

感染症の拡大も深刻な事態ですが、それと並んで人類を脅かす気象変動の激甚化はますますひどくなっており、それを食い止めるべく「グリーンテクノロジー」の導入が急がれています。しかし理念の崇高さとは裏腹に、関係国の間での利害調整はあくまでむずかしく、参加国・地域の間で合意がどこまで進むのかまったく予断は許されません。

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カギを握るのが環境負荷の小さなテクノロジーの導入であり、中でもレアメタルの活用です。今回はレアメタルおよびレアアースに焦点を当てます

最近はレアメタルが話題となる機会が増えました。2010年9月に日本と中国との間で、尖閣諸島の帰属をめぐって争いが起こった際に、中国は日本に対して3か月に及ぶレアメタルの禁輸措置を取りました。政府はもとより産業界は大騒ぎとなり、あれから10年が経過しましたがその時の衝撃はいまだに脳裏から離れません。

レアメタルの定義は意外とむずかしく、人によって国・地域によってその範囲は変わります。「レアメタル」とは、元素として発見が新しく、資源量が少ないために生産量が少なく、採掘するコストが高い希少な物質、ということになります。

日本では資源エネルギー庁所管のレアメタル分科会によって、ニッケル、クロム、コバルト、マンガン、タングステン、モリブデン、バナジウム、インジウム、ガリウム、白金、を伝統的なレアメタルと定義しています。

それに「レアアース」と呼ばれるスカンジウム、イットリウム、さらに「ランタノイド」と呼ばれるランタンの種類、合わせて17種類の元素を加えたものを正式に「レアメタル」としています

採掘
レアメタルは希少で採掘するコストは高いが、先端産業には欠かせない(写真はイメージです)

工業国家である日本はレアメタルの上に成り立つ

レアメタルは白金のように、それ自体を金属材料として用いることもありますが、用途の大部分は化合物や添加材として用いられます。レアメタルを添加した機能性材料、およびその材料を使用した工業製品は、わが国の高度な基幹産業につながっているケースがほとんどで、産業的に重要な意味を持っています。

市場規模としては、素材としてのレアメタルの生産額は17兆円程度です。しかしレアメタルを材料として生産された2次製品の生産額は42兆円に膨らみます。さらにレアメタルを直接・間接的に使用した産業部門の生産額は100兆円にも達するとされています。

素材よりも材料、材料よりも最終製品になるほどレアメタルを含んだ工業製品の付加価値は高くなり、それによって出荷価額も大きくなってきます。日本の先端産業を支えているのはレアメタルであり、日本のレアメタルの需要は世界需要の半分を占めるとされています。関連する製品群は広範囲に及び、工業国家として発展してきた日本はレアメタルの上に成り立っていると言っても過言ではありません。

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