経済ニュースで時々見かける「長期金利」という言葉。長期金利が上昇する局面では、企業の資金調達コストが増加するため、株価が下がることも多いといわれています。ただし、最近は金利の上昇局面において、必ずしも株価が下落しているわけではありません。本記事では、長期金利とは何か、金利と株価はどういう関係にあるかを解説していきます。

  • 経済ニュースなどで報じられる長期金利とは「10年物国債の利回り」
  • 長期金利が上昇する局面では株価は下落することが多いといわれる
  • コロナ後は金利も株価も上昇。その時の情勢をしっかりと見極めることが大切

長期金利は「10年物国債の利回り」を指すことが多い

まず、長期金利がどのようなものなのか解説します。そもそも「金利」とは、債券などを購入した際に支払われる利息の、元本に対する割合のことです。たとえば100万円で債券を購入し、年1万円の利息が支払われる場合、金利は1%となります。

金利の中でも長期金利は、期間が1年以上ある債券の金利を指します。これに対して、期間が1年未満の債券の金利は「短期金利」と呼びます。日銀は政策金利を上げ下げすることで短期金利をコントロールしていますが、長期金利は市場の需給で決まり、物価変動などの影響も受けます。

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一般的に、経済ニュースなどで報じられる長期金利は「10年物国債の利回り」を指します。「利回り」という言葉が出てきましたが、ここでいう利回りは「債券を購入した際に支払われる利息の、購入価格に対する割合」のことです。債券価格は市場の需給などの影響で変動するため、利回りは債券を発行した時点の利率(「表面利率」といいます)とは一致せず、絶えず変動します。

【図表1】日本国債10年利回りの推移
日本国債10年利回りの推移
【図表2】米国債10年利回りの推移
米国債10年利回りの推移

長期金利=10年物国債金利は、投資や融資などの金利情勢を表す指標として使われていることを覚えておくとよいでしょう。長期金利の水準は企業が銀行から融資を受ける企業だけでなく、住宅ローンなど個人がお金を借りる際にも基準となります。生活にも非常に関係があるものとして認識しておきましょう。

通常は「長期金利が上がると株価は下がりやすい」

長期金利が上昇する局面では株価は下落することが多いといわれています。その理由は企業の資金調達コストの増加です。

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金利と株価は逆の動きをしやすいといわれている

企業は経営活動をするために、銀行などからお金を借りることが多くあります。例えば、1億円の融資を受けて会社経営をしている場合、1%の金利であれば、年間の金利コストは100万円です。しかし、金利が3%になった場合、年間の金利コストは300万円まで上昇します。

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このように金利が上昇すると、それ以上に本業で利益を出すか別の部分でコスト削減をしなければ、企業の収益を圧迫してしまうことになるのです。金利コストは企業努力で減らすことが難しいため、金利上昇は経営者にとって非常に悩ましい問題といえるでしょう。

しかし、金利上昇が必ずしも株価下落につながるわけではありません。長期金利は主に市場の需給によって決まりますが、短期金利は日銀などの中央銀行が金融政策でコントロールしており、長期金利もその影響を一定程度受けるからです。一般に中央銀行は、景気が後退する局面では政策金利を引き下げる金融緩和、景気が拡大する局面では金利を引き上げる金融引き締めを行います。

中央銀行が金融引き締めを行い、金利が上昇する際は景気が拡大局面であることが多いため、企業の資金調達コストが上昇したとしても、それ以上に利益を出せることも多くあります。金利上昇局面で株式投資をする場合は、企業が金利コストの増加以上に収益を生み出せるか見極めることが重要です。景気拡大の恩恵を受けて、金利上昇以上の売り上げ増によって利益を出せるのであれば、長期金利の上昇が株価下落につながらないこともあります。

コロナ後は金利も株価も上昇

新型コロナウイルスが世界的に感染拡大した、2020年4月頃には株価が大幅に下落しました。また、各国政府も新型コロナウイルスの影響で経営が苦しくなった企業や失業者を救済するため、無利子の融資を実施する施策などの金融緩和を行い、その影響で長期金利が低下しました。

その後、2021年前半はテレワークや「巣ごもり」などの新たな需要の高まりや、ワクチンへの期待などもあり、日本でも米国でも、長期金利とともに株価が上昇に向かいました。金利上昇は企業にとっては資金調達コストの増加につながりますが、自粛によって消費を控えていた個人の消費意欲は旺盛であり、リベンジ消費によって企業業績は向上し、金利上昇のコスト増以上に利益が出せると考えている投資家が多かったと推察されます。

【図表3】米国の長期金利と株価指数の推移
米国の長期金利と株価指数の推移

このように金利上昇局面でも、それ以上に利益を出せると考える投資家が多くいる場合は、必ずしも金利上昇が株価下落につながるわけではありません。むしろ、景気の好循環ととらえ、長期的な株価の上昇につながる場合もあります。

2021年12月時点では長期金利は下落傾向にありますが、今後もさまざまなイベントによって金利は変動していくでしょう。金利上昇局面では株価は下落することが多いものの、必ずしも金利上昇=株価下落となるわけではありませんので、その時の情勢をしっかりと見極めて投資をすることが重要です。

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