資産形成の基本は長期・分散・積立投資。少額の投資であれば利益が最大5年間非課税になるNISAも、どちらかといえば中長期の投資を念頭に置いて作られた制度です。しかし、NISAで投資できる金融商品の中には長期投資に向かないものもあります。今回は、NISA口座を使って短期投資をする際の注意点などを解説します。

  • 一般NISAの非課税期間は最大5年なので、5年以内に利益を確定させるのが有効
  • 5年以内に利益を狙う方法のひとつは、特定の業種に投資するテーマ型ファンド
  • ブル型・ベア型の投資信託の活用や、個別銘柄に投資する方法も考えられる

「5年以内に利益を出して売却する」という戦略

国の非課税投資制度は、2023年に制度が終了するジュニアNISAを除くと、2014年に始まったNISA(一般NISA)と、2018年に始まったつみたてNISAの2つがあります。2022年10月時点では、2つの制度を併用することはできず、どちらか一方しか選べません。

一般NISAに向いているのはどんな人?

一般NISAとつみたてNISAの違いはいくつかありますが、重要な違いのひとつが「非課税投資期間」です。一般NISA(2023年まで。2024年からは新NISAに移行して制度の内容が変わる予定)は、投資で得た利益が非課税になるのは最大5年間。つみたてNISAは最大20年間となっています。

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一般NISAもつみたてNISAも、中長期での投資を念頭に置いて作られた制度です。しかし、長期の資産形成を目的とした投資では、一般NISAの5年という非課税投資期間は、やや短いかもしれません。一般NISAでは、株式や投資信託を5年以上保有すると、5年目までの利益はすべて受け取れますが、6年目以降は約20%の税金が引かれてしまいます。

したがって、一般NISAでは「5年目までに売却して利益を確定させて、そのお金を新しい非課税投資枠での投資に回す」という手法が効率的となります。一般NISAは5年を超える長期投資ではなく、5年以内の短期・中期投資のために活用するのがいいかもしれません。

短距離走
ゴールを「5年以内」に定めて、非課税期間内に利益を確定させるという戦略

かといって、株式のデイトレードのような超短期の投資を繰り返せば、年間120万円の非課税投資枠をすぐに使い切ることになってしまいます。保有期間を少なくとも数カ月から2~3年、最大で5年間に設定して、その間に売却してまとまった利益を狙う戦略がよさそうです。

それでは、5年以内にまとまった利益を狙うには、どのような金融商品を活用するのがいいのでしょうか?

テーマ型の投資信託

NISA口座を活用して5年以内で利益を狙う場合、「テーマ型」と呼ばれる投資信託を購入することが一つの選択肢となるでしょう。テーマ型の投資信託とは、たとえばITや医療・ヘルスケア、インフラなど、特定の業種やテーマに沿って銘柄を選ぶタイプの投資信託です。

テーマ型ファンドの運用期間・コストに要注目

テーマ型の投資信託の多くは、時代の流れに沿って成長する業種の株式に投資をすることになるので、短期から中期で利益を狙うことができます。例えば、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって旅行業界や外食事業が大きくダメージを受けた一方で、ワクチンの開発などが行われたことで医療・ヘルスケア関連の株式は大きく上昇しました。そして、コロナ禍が去りつつある今後は、逆に旅行業界が伸びることも考えられます。このように、世の中の情勢によって利益が出やすい業種が変化していくので、テーマ型の投資信託は長期で保有するより、数年程度で利益を狙うような運用に向いているといえます。

そして、同じ業種が長期にわたって好調を維持し続けることは少ないので、流行の終わりを見極めて、売却の時期を間違えないようにすることが大切です。

以上のように、NISA口座で短期から中期での利益獲得を目指す場合、テーマ型の投資信託に投資をして、1年~3年くらいの期間で利益を上げて売却する戦略は有効といえるでしょう。

ただし、今流行のテーマに投資しているように見えても、その投資信託が必ず利益をあげられるとは限りません。投資家が思っていたように社会情勢が動かないこともあるでしょう。状況によっては、早めの損切りを決断することも必要になります。

ブル型(レバレッジ型)・ベア型の投資信託やETF

ブル型(レバレッジ型)・ベア型の投資信託やETFは、どちらかといえば長期投資には不向きといえます。逆に考えれば、NISA口座での短期投資であれば有効活用することもできます。

レバレッジ型投資信託は積立投資に向いているのか?

ブル型(レバレッジ型)の投資信託とは、連動する株価指数などの2倍、3倍の値動きをするように運用する投資信託です。例えば、日経平均に連動し、3倍の値動きをするように設定したブル型(レバレッジ型)であれば、たとえば1日で日経平均が2%上昇した場合、3倍の6%の利益をあげることができます。

一方のベア型は、日経平均などの指数と逆の値動きをします。日経平均に連動し、3倍の値動きをするベア型であれば、日経平均が2%上昇した際には、投資信託の基準価額が6%下落。逆に、2%下落した場合は6%の上昇となります。株式市場の下げ相場でも利益を狙えるのがベア型のメリットです。

下げ相場で利益を狙う投資① ベア型ファンド

ブル型(レバレッジ型)・ベア型の投資信託を活用することで、短期的に大きく利益を上げることが可能です。ただし、同じ方向に相場が動き続けることはありませんので、ある程度利益をあげることができたら、相場が逆方向に動く前に早めに売却することも重要となってきます。

また、NISA口座では年間120万円までの投資が上限となりますが、ブル型(レバレッジ型)・ベア型の場合は、通常のインデックスファンドに120万円投資する場合より大きな利益を狙えるのが魅力です。もちろん、大きな損失を抱えるリスクもあるので、相場が思った方向に動かなかったときには早めの損切りが重要となります。

NISAの非課税枠の上限である年間120万円では枠が足りないと考えている方はブル型(レバレッジ型)・ベア型の活用を検討してみてもよいでしょう。

株式の個別銘柄

株式の個別銘柄に投資をする際は、さまざまな手法があります。大型株を配当狙いで購入するのであれば、長期で持つことで安定的な利益の獲得が期待できます。
一方で中小型株を保有して、企業が成長した際の株価の上昇を狙うのであれば、長期で持つより、短期から中期で勝負することになるでしょう。

ただし、テーマ型の投資信託などと比べると、成長する個別銘柄を選定するのは難しく、銘柄選定に失敗すると大きく損失を抱える可能性がありますので、どちらかといえば投資中級者以上の方に向けた手法といえるでしょう。

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