宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も戦争の影響で株価が下落している中での、投資をやめたいという相談がテーマ。今回は個別株式について考えていきます。
- インフレ、戦争、円安の進行など見通しづらい世界経済。株価も大きく動く可能性
- 小型株、成長株など売却益が目的の株は、下落が続いたら損切りする
- 配当重視の銘柄は配当金を積み立てるという目的を重視して、あわてて売らない
戦争の影響で、今後も株価が大きく動く可能性
【質問】
昨年度から個別株に投資しています。成長重視と言われる銘柄と、配当が出る銘柄を買っています。ここに来ての戦争で、上がったり下がったりが激しく、ひやひやしながら見ています。長期投資で考えて我慢が必要なのでしょうか? それとも早めの解約も考えた方がいいのでしょうか?
今回も前回から引き続き、最近増えている解約の相談について、個別銘柄の株式にスポットを当てて考えていきます。
今回は株式投資ということですが、投資家の考えは千差万別でしょうから、誰にでもあてはまるような答えを出すのは難しいものがあります。ただ、相談者は資産運用のために個別銘柄が欲しいと自ら考えて買ったのですから、なんとかしたいという思いは強いと思います。
相談者にとっては、今年に入ってからインフレの進行や、ロシアによる一方的なウクライナへの侵略と、不安が募るようなことが立て続けに起きています。米国では、インフレを抑制するために利上げを実行しました。一方で日本はいまだにデフレ脱却が終焉したかどうか疑問符がついたような状態で、インフレと言われても実感がわかないかもしれませんが、日本でも米国に続いて、これからいよいよ物価上昇が続くことになるでしょう。
ここに来て日銀の強力な金利抑制策が発動して、米国との金利差がさらに開いていくとの懸念から、円安が進行しています。
以前なら円安は株高を招き、円高では株は下落と言われましたが、今はあてはまりません。それだけ、今の世界経済は見通しのしづらい状況ではないかと思っています。
世界経済の景気のサイクルを見てみると、その変化はいずれも国際秩序を揺るがす大事件から始まっています。サイクルの前半は、経済成長とインフレの同時進行。後半は成長が鈍化してインフレが収まる。今回のウクライナ戦争は、まさにそうした景気サイクルの始まりを告げる合図かもしれません。
戦争の影響で、株価はこれからどうなるのか? 今は誰にもわかるすべはありません。ハッキリ言えるのは、比較的リスクを抑えた投資信託と違い、個別銘柄の株式投資では、投資金額が半分以下になるのは当たり前に起きることだと自覚する必要があることです。
最近、私は投資信託運用会社の勉強会に参加する機会がありました。参加者の「銘柄を買うタイミングはどう決めているのですか?」という質問に対して、運用会社は
「株価は市場と投資家の思惑で動くことが多々あります。メディアなどで騒がれた時の買いはやめてください。すでに高くなっています。私たちはそうではなく、企業の価値を見定めて、安いと思えば買いを入れています」
と答えていました。
なるほどですね。この回答に、個人投資家の株式運用のヒントが隠されているのではないかと思います。
さてここからは、株式投資の「解約」について考えていきたいと思います。
売却益が目的の株は、下落が続いたら損切り
そもそも株式投資とは、利益を期待して企業の株を買う行為です。株を買えば株主として企業に意見を言えますし、企業が上げた利益を配当金として受け取れます。
株式投資で得られる利益はいろいろありますが、その利益の中でどれを重視しているかによって、解約の時期に関わってきます。
株の利益は大きく分けると売却益(キャピタルゲイン)、配当金(インカムゲイン)、そして株主優待という3つの種類があります。
長期での運用を考えるならば、有名企業の株を買って、配当金や株主優待を目的にする方法もあります。
配当金を目的として買った銘柄であれば、長期間持ち続けて、配当金をもらい続けたいものです。ただ、株式投資に絶対はありません。今回の戦争の影響で起きたような株価の急落も普通にありますので、1銘柄だけにお金をつぎ込むのは危険です。したがって、投資する場合は複数の銘柄を買うことや、手元に余剰金がある場合でも、買う時期をずらす(円安進行を見極める)などタイミングを分けて投資するのが大事です。
ところで、株価の下落がなかなか収まらないケースがあります。これは主に小型株に多い傾向ですが、赤字決算がしばらく続くことがあり、成長力があっても業績や株価に反映されないことになります。つまり、株価が上がるまでに期間がかかってしまう。このような銘柄を、「いつかは上がる」「下がっているから買い増そう」と、含み損を取り返すために感情的になってしまい、損したままずっと保有し続ける、いわゆる「塩漬け」になってしまうことがあります。
売却益を目的とした株式であれば、このような場合に我慢は必要ありません。私も経験者ですが、下落が続くときこそ、勇気を出して解約(損切り)することが大切です。損が少ないうちにマイナスを確定させて、現金化しましょう。
私もそうしていますが、成長銘柄への投資は短期運用と割り切って、「20%上がったら売る、20%下がったら売る」など、利益確定と損切りのルールを作っておくのもいいかもしれません。小型株や成長銘柄は配当金ではなく、短期の売却益重視で挑む方がベストではないでしょうか。
それでは配当重視の銘柄も、下がったら解約した方がいいのでしょうか?
今一度、個別株を購入した目的を考えてください。最初は配当金が目的だったのに、たとえば株価が上がったからといって成長重視の投資に目的を変更すると、安定して配当金を積み立てるという本来の運用目的とずれてしまいます。配当金が目的の銘柄は、株価の上げ下げが激しいからといってあわてて手放したりせず、あくまで配当金をもらうことを優先した方がいいでしょう。
最後に私個人の考えですが、仮に100万円があったとした場合、安全な運用方法は、個別銘柄の株式投資は多くても20%以内に抑えることが資産全体のリスクコントロールになって、賢明だと思っています。