レポート提供:ニッセイアセットマネジメント(2019年3月15日)

  • 英国議会は合意なき離脱の回避とメイ首相案可決を前提に離脱期限延期を可決。
  • 否決されたメイ首相案のみがEU側と合意に達しており、EU側は現時点で再交渉を否定。2度否決の首相案が3度目にして可決との憶測もあり、混沌とした状況に拍車がかかる。

条件付きながら6月30日までの離脱延期

英国下院議会は3月14日、何らかの離脱協定案(現段階ではメイ首相案が前提)が3月20日まで承認された場合に限り6月30日までのEU(欧州連合)離脱期限の延期案を可決しました。それに先立ち12日には離脱協定案(メイ首相案)の否決、13日に時期を限定しない合意なき離脱の回避決議案が可決されています。

メイ首相は、11日最大の争点とされていたバックストップ条項(アイルランドと厳格な国境再発を避けるため、包括的な通商協定などが合意されるまで英国を実質的にEU貿易圏にとどめること)において、EU側が一方的に英国をEU貿易圏にとどめることがないよう法的拘束力のある変更を行うことでEU側と合意しました。しかし、この変更案には与党:保守党議員の75名が反対するなど広く支持を得ることができず、歴代4番目の大差(149票差)で2度目の否決がなされました(1月にも歴代最大票差で否決)。

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今回可決された離脱期限延期案は、延期期間を最小限に止め、7月の改選後の欧州議会招集(5月選挙:英国は離脱予定のため選挙せず)前の6月を想定した3カ月延期案です。合意なき離脱がなくなった今、すでに2度否決されたメイ首相案のみがEUと合意できており、最終的にこの案が支持されなければ、離脱期限は長期なものになると首相は発言しています。離脱期限の長期延期は野党:労働党やEU残留派などが選択肢とする2回目の国民投票の準備期間(22カ月程度)を得ることとなります。

【図表1】メイ政権の離脱方針決議結果
【図表1】メイ政権の離脱方針決議結果
出所:各種報道資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

メイ首相案が3度目で可決の可能性も

可決された延期案は、延期によりEU残留や穏健離脱に向かうことを嫌う強硬離脱派や事態がさらに流動化する長期間の離脱延期を嫌う100名を超える保守党議員が反対しています。長期間の離脱延期を嫌う閣外協力政党:民主統一党(DUP)がメイ首相案への賛成を匂わせており、これをきっかけに保守党内の強硬離脱派が賛成に回り、2度否決されているメイ首相案が土壇場で逆転可決される可能性も指摘されています。

ただし、事態はまったく読めない状況といえます。13日の合意なき離脱の回避案の可決を受けて大きく上昇していたポンドは想定内の結果に反応は限定的でした。英国株は合意なき離脱回避可決などを受けて4日続伸となっています。今後の離脱方針の行方は不透明感が増しており、英国政権と議会の動向に産業界やマーケットが振り回される状況が当面続くものと思われます。

【図表2】株価と為替の動き
【図表2】株価と為替の動き
出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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