当たり前のことが当たり前じゃないLGBT層

突然ですが、いま私は独身で、将来とくに結婚したいとも思ってないですし、したくないとも思っていません。
「どうしてか?」と聞かれたとしても、「ただ昔から何となくそう思っていたから」と答えるしかありません。
よくメディアで偏見を持って描かれるOLのように「〇〇歳までに絶対結婚しなきゃ!」とまで思い詰めたことはないですし、かといって、かたくなに「絶対しない主義」を掲げているわけでもありません。

基本的には、「なるようになれ」といった感じです。
私は、おそらく結婚を“人生を左右する唯一の選択”ではなく、単に数ある色々なイベントの一つと捉えているのだと思います。
一度結婚をすることを選択したからといって、別に無理して続けなきゃいけないものでもないですし、いい意味でもっと軽く考えてもいいんじゃないでしょうか?

周りにも似たような考えの人や、たとえ結婚していても私の想いに同調してくれる人は、最近わりとたくさん見つかるようになってきたと肌で感じます。
「その考えはおかしい」とか「強がっているだけ」とか、人から一方的にジャッジされないってありがたいことです。

ですが、たまに「それはまだ若いだけだからだよ」とか「もうちょっと年をとったら絶対変わるから」とか「親が悲しむんじゃない?」とか、熱心に語りだす人にたまに遭遇することがあります。
そういうときは、内心「運が悪かったな」とただ苦笑いをしてその場をやり過ごしたり、ときには上手く反論したりします。
(そのときは、ドヤ顔にならないように必死に耐えています)


相手の立場や境遇に配慮せず、自分の考えを押し付けてしまいがちな人もいる

とはいえ、熱く語るその内容をよく分析してみると、「まあ、一理あるな」と、不服ながら思わないこともないです。
“先のことは分からないから、自分の将来を決めつけるようなことを言うのはよくない”だとか、“人生の先輩として経験してきたことをフィードバックしよう”としている熱意は一応しぶしぶながら感じるところはあります。

ですが、こちらとしても将来が全く読めないことを織り込んだうえで、「結婚したいとも思っていないし、したくないとも思ってない。そのへんの選択は十人十色だし、『あっちがダメならこれで行こう』のようにもっと柔軟に考えてもいいんじゃない?」という結論に達しているのであって……。
「本当に人の話聞いてました?」と言いたくなりますし、そして「親が悲しむよ」という説得には「いや、私の親知らないですよね? 勝手に親の代弁されても……」と言いたくなります。
もちろん、その人の価値観や、その人の世代の時代背景などを考慮すべきなのは承知のうえですが、他者への理解を示そうともせずに自分の考えを無理やり押し付け、結果的に相手に窮屈な想いをさせてしまうのは、「ちょっと違うんじゃない?」と思ったり思わなかったり……。

……自分語りが長くなってしまいました。
ただ、よく考えてみれば、「結婚する」「結婚しない」「離婚する」という当たり前の選択は、「結婚する」という権利が国から保証されているからこそできるものです。
そして、国から保証されるということは、家族としてさまざまな社会保障が受けられるということを意味します。
しかし、この法律で守られた「結婚」は、日本では今のところ男女間のみに認められています。

同性同士での結婚を望む場合、「パートナーシップ制度」という自治体の制度を利用することはできますが、“相続や入院時の面会、パートナーのための介護休業の取得、パートナーの医療行為への同意”などの家族として当然の社会保障を受けることができません。
パートナーシップ制度は、いわゆる“形式だけの結婚”。
この制度のみでは、パートナー同士がともに人生を過ごし、さまざまなライフステージを経ていくうえでは、心許ないといえるでしょう(詳しくは、「【広まるLGBT対応の保険・前編】同性カップルに寄り添うパートナーシップ制度」でも説明しています)。

最近は「結婚していてもしていなくても、どちらの選択肢も尊重されるべき」という風潮が強まりつつありますが、そういう異性愛者の人ですら、世間の風当たりが強いと感じることもあります。
愛するパートナーに対して「結婚する or 結婚しない」の選択肢が最初から奪われているLGBTの人たちにとって、世間の風はどれほど厳しいことでしょうか。

もちろん、LGBTの人の中でも“とくに結婚という形にこだわっていない”と考える人もいるでしょう。
それでも、“選択肢が一つしかない状況で選んだ答え”と、“さまざまな選択肢がある中から選び取った答え”は、たとえ同じ答えだとしても、まったく意味合いが違います。

政府や自治体のLGBT層への法整備がなかなか進まない中で、いまは民間の企業がLGBTのライフステージをサポートするさまざまなサービスを提供し、国の法律が行き届かない領域を補完しようと努力しています。
先日は“結婚”に対するサポートについて紹介しました(【広まるLGBT対応の保険・後編】同性パートナーも受け取れる保険一覧)。

今回紹介するテーマは“就職”です!

LGBT向け民間サービス【就職編】

最近では、LGBT層に向けて“雇用機会の均等”や“働きやすさの向上”を掲げ、さまざまな施策を行っている企業が増えてきました。
ただLGBTといっても、生き方も悩みも千差万別です。自分らしく働くために譲れない条件も、その人それぞれの価値観や許容できるラインごとに千差万別なはず。その中で自分に合った企業を探すのは大変です。

そうした中で、より自分にピッタリな企業を見つけるために“LGBT向けの就職支援サイト”が役立ちます。

① ichoose


「ichoose」ホームページ

サイト独自の審査を通過した、LGBTフレンドリーな企業の求人情報のみを掲載しているLGBT求人サイト。
就職支援業界初の試みとして、自由に性別欄を記入できるエントリーシートでの応募が可能となっています。
さらに、入社後の配慮事項を事前に登録できるので、より一人ひとりにあった働き方を追求することができます。

運営会社は、「株式会社JobRainbow」。
“LGBTがありたい姿、ありたい性で就職活動・転職活動できるよう支援する”ことを目的に掲げ、働くLGBTの人へのインタビューやコラム、セクシュアリティにまつわるLGBT用語解説などを発信する「LGBTしごと情報サイト JobRainbow」の運営なども行っています。
最近では、企業へのLGBT研修やコンサルティング事業なども手掛けており、LGBTの“働く”にあらゆる方向からアプローチしている企業といえるでしょう。

●こだわり条件検索

一般的な求人サイトと同様、「未経験可」「転勤なし」などのこだわりたい条件にチェックを入れて、企業を絞って検索することができます。
ただ、ichooseには、LGBTの人々の要望に応えた一風変わった“こだわり条件”もあるんです。

例えば、
・社内LGBTサークルあり
・だれでもトイレがある
・通称名使用OK
・制服の男女別なし
・LGBT対応の社内制度あり
などなど。

他の求人サイトではまず見られないこれらの条件は、まさにLGBT層に特化した就職サイトならではです。

●LGBT就活コラム

ichooseのサイト内には、「LGBT就活コラム」という特集が載っています。
ここでは、“LGBTの人が就活の際に困ったこと”や“地方のLGBT求人特集”、“LGBTフレンドリー企業が対象のインターンや合同企業説明会の情報”など、さまざまな情報が満載です。

この「LGBT就活コラム」はLGBTではない人が見ても、非常に新鮮かつ勉強になること間違いなし。
例えば、“Xジェンダーの人は職場で、男性用か女性用のどちらのスーツを着るか迷っている!”という内容のコラムは、私自身読んでみて目から鱗でした。

(※Xジェンダーとは、出生時の性別に関わらず、女性でも男性でもないという性自認を持つ人のこと。人それぞれ性自認の解釈が異なるため、複雑なセクシュアリティといえます。例えば、自分を男性と女性の中間と位置付けるのもOK。また、そもそも男性、女性、両性といったセクシュアリティの概念がないという人もいます。さらには、男性と女性、両方のセクシュアリティを持ち、流動的に性別が変わるという人たちも。まさに自分次第で定義できるセクシュアリティです。)

考えるまでもなく、Xジェンダーの人たちにとって、男性向けか女性向けかで大きくデザインが異なるスーツを着用する際には、当然出てくる悩みだろうと予想されます。
しかし、Xジェンダーではない人にとっては、普段からスーツは躊躇せずに選んだり着たりしています。
そのため、なかなか当事者でないと、Xジェンダーの人の葛藤に気づくことが難しいかもしれません。

職場でLGBTの人が周りにいるにしても、いないにしても、「世の中にはどんなセクシュアリティがあるのか」「仕事上、生活上で何に不便を感じているのか」を知っておくことは、単なる労働時間短縮だけでない、もっと広い意味での“働き方改革”につながっていくのではと思います。

② マイナビ


LGBT特集 – マイナビ2020

LGBTに特化した求人情報は特段載っていませんが、“LGBT当事者のワークスタイル”や“LGBTを含め広くダイバーシティに取り組む企業”や“LGBTアクティビストによる対談特集”など、幅広い就職支援情報を発信する「特集『LGBT就職』」という特設ページがあります。
大学生向けの新卒の就活にフォーカスしています。

言わずと知れた、大手就職支援サイト。
私も新卒の就職時には、かなりお世話になったものです。当時(2010年代中頃)は、就活が始まると、私を含めてみんなとりあえず「マイナビ」や「リクナビ」に登録するというのが、主流の就活の進め方だったように思います。
そういえば、大学に「マイナビ」の人が来て、就活の話をするとともに、マイナビのロゴ入り付箋やノートなど、あふれるぐらいたくさんもらった記憶があります。
とくに大学生認知度は計り知れないほどだと思います。

●LGBTコラム

LGBTアクティビストとして、政界にも進出する増原裕子さんが連載するコラムです。
増原さんのセクシュアリティはレズビアン。
昨年、評論家の勝間和代さんがレズビアンであることや、勝間さんのパートナーが増原さんであることが公になり、世間で話題にのぼったことも記憶に新しいでしょう。

このコラムは全5回にわたって、“LGBTの人が自分らしく働くためのアドバイス”を優しくそして的確に伝授するコーナー。
「就活時にカミングアウトするべきか」「偏見や悪意から身を守る方法」「ストレスなく働くにはどうすればいいか」などの問題を、一貫してLGBT就活生の味方でありながら、綺麗ごとを並べず、企業の現状を踏まえながら真摯にアドバイスする姿勢が心に強く残りました。

例えば、“就活時にカミングアウトするべきか”という問題に対しては、様子見姿勢も方策の一つとして挙げています。
大企業でもLGBTへの取り組みは始まったばかり。“ポジティブな方向に向かってはいるものの、多くの企業ではまだまだステレオタイプ的な発言をする人もいる”と正直に語ります。
その上で、セクシュアリティのことで不要に傷つくのを防ぐために、「とりあえず実際に就職するまでは黙っておく」「嘘にならない程度にごまかす」などの方法も提案します。
同時に「慎重になるのもアリ」「長いスパンの問題として捉え、信頼できる人から徐々にカミングアウトしていく」などのアドバイスも送ります。カミングアウトする意志はあるけれどなかなか踏み切れないLGBTの人にとっては救いになる言葉かもしれません。

さらに、カミングアウトをすると決めた場合には、“他のLGBTの就活仲間や事情を理解してくれている友人や家族、ときには公的な相談窓口などのセーフティーネットを事前に用意しておくべき”と実践的なアドバイスを送ります。
“当時は自分のセクシュアリティを隠すしかなかった”という増原さん自身の経験を踏まえながら語る重みのあるアドバイスは必見です!

●ダイバーシティ推進企業レポート

LGBTを含むダイバーシティ(多様性)への取り組みに熱心な企業を紹介するコーナーです。
人事担当者へのインタビューを通じて、LGBTに対する企業の方針や、実際に企業で行っている施策などを紹介します。
連ねる企業は、「ライフネット生命」や「日本たばこ産業株式会社」など、業種も職種もさまざまで見ごたえがあります。
質問内容は、「ダイバーシティ推進への取り組み」「LGBTに関してどのような認識を持っているか」「LGBT就活生に対するサポートはあるか」など、LGBTに関する項目に焦点が当てられています。

実際に行っている取り組みとして、管理職や新入社員に対してLGBTの基礎知識に関する研修を義務付けていたり、企業の採用メッセージに“すべてのセクシュアリティがありのまま働ける土壌をつくる”という文言を盛り込んだり、採用活動の際にLGBTの就活生が不安に思っていることや希望をヒアリングする場を設けたりなど、各社によって多種多様です。

また、人事担当者のLGBTに対する想いは熱意を感じるものばかり。
「LGBTの人のイメージをテレビに出てくるタレントそのままだと誤解している人が多いことに対して、正しい理解を徹底させたい」という決意や、「デリケートな問題だからといって、一切セクシュアリティの話題に触れないようにしようと決めつけるのは間違い」という姿勢が光ります。
LGBT層への施策に関して、いまの企業の最前線を知りたいときはこのような企業インタビューもぜひ参考にしてみてください!

③ LGBT就活

LGBT就活
「LGBT就活」ホームページ

“LGBTの人もそうでない人も、自分らしくはたらく。自分らしく生きる。”をミッションに、就活にまつわるイベントや企業のLGBTへの取り組み、LGBT当事者へのインタビューなどを発信しています。

また、日本で初めての「LGBTキャリア情報センター」を立ち上げ、LGBTの就活や就労に関して幅広い情報交換・発信も行っています。
さらに不定期開催のイベント「キャリアカフェ」では、年齢やセクシュアリティの垣根を超えて、お茶やお菓子を飲みながら、気軽に悩みを話し合える場を提供しています。

運営会社は、認定NPO法人ReBit(りびっと)。
支援企業は、NECや“遺贈”のサポート等で知られる日本財団です。

一風変わった試みは「LGBT成人式」というイベント。
なんと、2011年度より毎年全国13地域で開催されています。
このイベントは「着たい性別の晴れ着が着られない」「地元ではカミングアウトしていないから、自分らしく振舞えない」などの若者の要望に応えたいという想いから誕生しました。
また、教育現場を対象とした教材づくり、学校や教育委員会、児童や教職員を対象にLGBTへの理解を深めるグループワークや講義なども行っています。

●ロールモデル

LGBT就活のサイト内には、「ロールモデル」というコーナーがあります。
これは、働くLGBT当事者にインタビューし、仕事やキャリアの話以外にも、“セクシュアリティを初めて認識したとき”や“カミングアウトしたとき”などのパーソナルな話を幼少期からさかのぼって話してもらい、その人の人生や今後のキャリアパスに迫っていくというものです。

読んだ感想としては、登場する人たちがみな、プライベートな部分を含めた実体験を隠さずオープンに話してくれているため、1つ1つの言葉が非常に濃く、重みがあると感じました。
“いじめられるのではないかとの恐れから、なかなかカミングアウトができず、大人になるまでずっと隠していたケース”や、“幼少期から周りに理解のある人が多く、中学生の頃からセクシュアリティをオープンにしていたケース”など、自身のセクシュアリティとの付き合い方がは人それぞれ大きく異なります。

就職活動のときのエピソードも、“心無い言葉を投げつけられた人”や、“会社によって、カミングアウトするかどうか使い分けた人”、“すべての企業に対してカミングアウトをして臨んだところ、とくに差別はされず多くの面接官から関心を持って話を聞いてもらえた人”など、まさにバラバラ。
等身大の人生を語ってくれているからこそ、1人ひとりが誰かの“ロールモデル”として勇気づけることができるのだろうと思いました。

●イベント

LGBT就活では、就活に役立つ一風変わったイベントが盛りだくさん。
例えば、「LGBT就活生/社会人応援!自分らしいスーツを探そう!」というイベント。
「自分の体とは違う性別のスーツがほしいけど、1人で買いに行くのは不安」という人たちのために、完全個別対応でスーツの採寸やフィッティングをします。
主催は、認定NPO法人ReBitのほかに、なんと株式会社丸井グループが連なります!
マルイの服飾売り場の専門スタッフに対応してもらえるので、安心して任せられることでしょう。