レポート提供:イーストスプリング・インベストメンツ(2019年6月20日)
毎年1億本以上の木が植えられる見込み
今年5月、フィリピンで環境保護のためのユニークな法案が下院で可決されました。フィリピンの全ての学校の生徒が卒業する際、少なくとも1人10本以上の植樹を義務付ける、というものです。
フィリピンでは古くからの伝統で卒業前に植樹することが広く行われていましたが、義務化することで新しい環境対策としようとするものです。
フィリピンは若年層に厚みのある人口構成となっており、毎年1,200万人を超える学生が初等教育学校を、約500万人が中等教育学校を、約50万人が大学を卒業します。
もし新法通りに植樹が行われれば、毎年少なくとも1億7,500万本の木が植えられることとなります。これらの木はマングローブ林や保護地域の他、一部の都市エリア等にも植えられる予定です。
この新法は、教育省と高等教育委員会が窓口の管理機関となり、環境天然資源省や農業省といった複数の機関とが協力して実行されます。まさに国をあげた環境保護プログラムといえます。
環境保護が産業保護につながる
美しいビーチが魅力のボラカイ島(写真:アセアンセンター)
フィリピン政府が環境対策に力を入れる理由の一つに、経済発展による環境破壊があります。20世紀初頭には国土の約70%あった森林面積は、1990年代には20%以下にまで減少しました。
近年、フィリピン政府は新たな成長産業の一つとして観光業を振興しており、特に有名なリゾート地として知られるボラカイ島は、2017年には200万人近い観光客が訪れたとされています。
ところが、急速な開発により島の環境破壊が進み、ついに2018年4月からの半年間、観光客の立ち入りが禁止されることになりました。閉鎖期間中には老朽化した下水処理施設の改修や道路の補修工事等が行われ、島の環境回復が図られました。
今回の閉鎖を決めたドゥテルテ大統領や環境相らは、「ボラカイ島を持続可能な観光地のモデルとしなければならない」と強調、環境保護対策により一時的に産業が悪影響を受けても、結果として観光保護につながるという考えを示しました。
【図表】フィリピンの観光業収入および観光客数の推移
(2010年~2018年)
出所:Bloomberg L.P.およびフィリピン統計機構のデータに基づきイーストスプリング・インベストメンツ作成
ドゥテルテ大統領の今後の政策に注目
2016年に大統領に就任したドゥテルテ大統領は、積極的なインフラ整備政策「Build,Build,Build」を打ち出し、フィリピンの最大の課題であるインフラ整備に取り組んでいます。マニラ島の都市や道路整備だけに留まらず、ボラカイ島の様な地方の島の課題解決にも着手し、急激な経済発展による環境問題にも取り組んでいます。
今年5月に行われた中間選挙で、上院・下院ともにドゥテルテ大統領を支持する勢力が圧勝し、任期が終了する2022年まで安定した政権が続くと見込まれています。これまでも大胆な政策を打ち出してきたドゥテルテ大統領が、どのようにフィリピンの持続可能な成長を目指していくのか、今後の政策に注目です。
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