資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。

ネットやテレビのニュース、新聞を見ていると、何となく投資している企業の株価が気になってくる。株式投資をされている方にはご経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、株式投資が未経験の方にとっては、ニュースなどで「日経平均株価が大きく下落しました」「ニューヨークダウ平均が史上最高値を更新しました」という見出しを見てもピンとこないと思います。

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そこで今回は、「株価は私たちの生活にどのような影響を与えるのか?」について考えてみたいと思います。

株価が上がるとプラスの資産効果をもたらす

まず、いちばんわかりやすい影響は資産効果です。持っている株の株価が上がると、資産の額が増え、消費に回す金額が増える。いわゆる「財布のひもが緩くなる」ということです。資産効果は個人だけでなく、株式を保有している企業の資産にもプラス効果をもたらします。

2018年末の日本の家計の金融資産は約1,800兆円に膨らんでおり、1%の上昇でも10兆円以上のプラスとなることから、株価が消費にもたらす影響が大きいことが分かりいただけると思います。

株価は経営者の成績表

上場企業の経営者の立場から見ると、自社の株価はまさに経営の成績表のようなもの。市場からの評価によって経営の方向性が左右されることもあります。また、株式を発行して市場から資金を集めたい時は、当然株価が高い方が資金をたくさん集めやすいことは言うまでもありません。

従業員の立場から見ても持株会に加入していたり、ストックオプションの権利を持っていたりすれば資産の形成にダイレクトに影響しますし、株価は業績や業界の成長性を判断するバロメーターにもなっています。

株価は景気の先行指標になる

株価は投資家の景気の先行きに対する期待を反映しており、実際に内閣府が発表する経済指標の計算にも使われています。投資家は先行きの景気がどうなるかを予測して株を買ったり売ったりします。先行きの景気が悪いと予測する投資家が多ければ株価は下がることになります。

「景気の気は気分の気」と言われており、先行きの景気が良くなると思う人が増えてくると、先回りして株を買うだけでなく、工場を新しく作ったり、人を雇い入れたり、実際の経済にプラスの効果をもたらします。

株価が上がると年金運用にもプラスに働く

株価は私たちの年金にも影響を与えています。日本の年金制度は現役世代が払った年金保険料が退職世代に支払われる賦課(ふか)方式です。仕送り方式とも呼ばれるこの方式では、現役世代からの仕送りで残った部分は積立金として運用されます。

公的年金を運用しているのは、GPIF(独立積立金管理運用独立行政法人)です。このGPIFはおよそ160兆円を運用しており、世界最大の機関投資家となっています。運用資産の半分は国内株式と外国株式で運用されています。そのため、株価が上がると我々の年金の仕送りで余った積立金の運用にとってはプラスになります。

GPIFが基本ポートフォリオで定める資産構成割合GPIFが基本ポートフォリオで定める資産構成割合
出所:年金積立金管理運用独立行政法人HPよりMonJa作成

確定拠出年金の運用にも影響あり

人生100年時代が本格化する中、老後の資産形成への関心が高まっています。中でも私的年金と呼ばれる「確定拠出年金」では、加入者自身がどのような商品をどのくらいの割合で運用するのかを選びます。

リスクをとって積極的に運用する場合は、プロが運用する株式投資信託での運用が選択肢となります。また、バランス型と呼ばれる債券や株式をバランスよく組み入れて運用する投資信託もあります。株価の変動は、こうした投資信託の値動きを通じて、確定拠出年金の運用にも影響を与えます。

直接株を持たなくても、私たちに無関係ではない

いかがでしょうか?

直接企業の株を持っていなくても、株価は間接的に私たちの生活にさまざまな影響を与えていることがお分かりいただけましたか?

そのような観点を持って株価や株に関するニュースを見てみると、経済の違った面が見えるようになるのではないでしょうか?

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