排除するよりも、居場所を提供し続ける

やはりアセクシュアルの中では、なかけんさんのように性欲が湧かない方が多いのでしょうか?

なかけん 性欲とアセクシュアルというセクシュアリティの関連性はありません。まったく別の次元の話です。性欲の「あり/なし」がアセクシュアルというセクシュアリティを定義づけているわけではありません。

例えば、性欲はあっても他者に向かない人もいます。確かに性欲が湧き上がってくる感覚はあるらしいので、性欲自体はあるんです。

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それはどうやって対処しているんでしょうか? かなり生きにくそうな気がします。

なかけん それで悩む方も勿論いらっしゃいます、中には自身の性欲との向き合い方に悩む方もいますよね。

なかけん

そういった方の受け皿となる交流会はたくさんあるのでしょうか?

なかけん いいえ。把握している限りでは、定期的にアセクシュアルの交流会を主催している団体は、現在日本で3つしかありません。
私が行っている「セクシャリティ別交流会」もその中の一つです。

うちの交流会では、居場所を提供したいという想いが根底にあります。
お互いセクシュアリティに対するグレードがさまざまなので、共感し合えないこともあります。
そこを無理やりどうこうするようなことは、私たちにはできません。
ですが、セクシュアリティのグレードで排除したりはしません。
誰にとっても安心できる場であってほしいという想いを持ちながら、まずは居場所を提供し続けることが一歩だと考えています。

世の中の恋愛至上主義に対してはどう思いますか? 今もやっぱり「恋愛していない、相手がいないということは、その人に何か欠点があるのでは?」といった感覚が、口には出さずとも何となく漂っているような気がします。

なかけん 理想を言うならば、そんなことは気にせずに生きたいように生きるのがベストなんでしょうね……。
ですが、私たちが生活するに当たって、色んな所で恋愛至上主義の壁にぶち当たってしまします。
例えば、歌一つをとっても、「夏祭りに気になる子を誘いたい~♪」「待ちに待ったバレンタイン/クリスマス~♪」みたいなやつって本当に多いですよね。
映画でも漫画でも同じです。

もちろん面白いものもたくさんありますが、あまりにも私たちの日常に“恋愛が正義”的な感覚が溢れていると、まったく気にしないなんてもはや不可能ですよね。
生きていれば勝手に目に飛び込んできますから。

例えば、実生活で嫌な目に合ったときはどうすべきでしょうか? 家庭を持ちたくない、今は誰とも交際する気分じゃないと言うと、強がっているだけとか相手にする人がいないだけなど、悪意のある言葉を投げる人はいます。

なかけん 私も同じような目にあったことはあります。
「ロボットみたい」とか「誰かいい子を紹介するよ」だとか言われたことがあって……。
相手に悪意がないことが多いんですよね。
ただ、その人にとっての“普通”の基準がゆるぎなく存在して、その基準から外れた人を見ると、何かアドバイスをしたくなっちゃうとか、“普通”になれるように手助けしたいという想いからそういった発言が生まれているのだと思います。

こちらからすれば、正直あまりそういったアドバイスを必要としていないのですが、本人は“良いことをしている”と思っているので、厄介なシチュエーションです。
まあ、単純に悪意や差別的な感情から来る発言の場合もあるんですけどね……。

なかけん

そういうときは、なかけんさんならどのように対処しますか?

なかけん 端的に言うならば、とりあえずこちらの意見や気持ちを伝えるだけ伝えて、後は諦めます。
というのも、やっぱり相手の意見や生き方そのものを頭ごなしに否定してしまうのもちょっと違うかな……と感じるので。そこは侵害してはいけない領域ですよね。

でも、はなから「どうせ分かってくれないから、我慢しよう」と諦めることはしません。
例えば私の場合、もし誰かから「恋愛するのって普通だよね?」と同意を求められたとしたら、そこは「いやいや、それは違う」とはっきり言うべきなんです。

なので、望んでもないのに人を紹介された場合には、「私はあまり関心がないので大丈夫です」などとやんわりと意思を伝えるようにしています。

それでもまだ噛みついてくるような粘り強い人もいますよね。
拒否しているのに、「それはまだいい人に出会ってないだけ!」「絶対紹介するから!」「あなたはおかしい!」だとか言うような人です……。
そのとき、私だったらまたきっぱりと「いいえ、大丈夫です」と伝えて、あとはもう諦めます。説得したり食いついたりしても良いんですけど、それじゃ身が持たない。
ときには諦めて、こちらからはその人になるべく近づかないだとか、自分が楽になれる方法をとってもいいんです。

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