子どもたちを待ち受ける不確実な未来に対して、日本の教育はどのような方向に向かおうとしているのでしょうか。そして、AIの時代に生き抜くスキルを身につけるために、子どもたちの親にできることは?

前回の記事「「読解力」で生き抜く未来」はこちらから

  • 「思考力・判断力・表現力」からなる「学力の3要素」が教育課程に盛り込まれる
  • 日本の教育が向かっている方向は「AIの時代を生き抜くための力」に合致する
  • 教育投資を行うなら、親が「金融リテラシーを高めて備える」という意識を持つべき

思考力、判断力、表現力を養う

前回の記事で、AIの時代を生き抜いていくために、今までの教育で重視されてきた「知識」にとどまらず、持っている 1)知識、2)スキル、3)主体性、4)周りの人たちの多様性や価値観を尊重しながら協働する力、それら全てを総動員して、今までのやり方が通用しない未来の課題に対して対応できるように、子どもたちを育てていくことが必要であることをお伝えしました。

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では、子どもたちを待ち受ける不確実な未来に対して、日本の教育はどのような方向に向かおうとしているのでしょうか。

2016年に、中央教育審議会(教育の振興、生涯学習の推進を中心とした人材育成、スポーツの振興に関する重要事項を審議することを目的として文部科学省に設置された機関)が文部科学省に対してこのような答申をしています。

将来の予測が困難な社会の中でも、未来を切り拓いていくために必要なのは思考力・判断力・表現力等である。思考・判断・表現の過程には、大きく分類して以下の三つがあると考えられる。

・物事の中から問題を見い出し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、振り返って次の問題発見・解決につなげていく過程

・精査した情報を基に自分の考えを形成し、文章や発話によって表現したり、目的や場面、状況等に応じて互いの考えを適切に伝え合い、多様な考えを理解したり、 集団としての考えを形成したりしていく過程

・思いや考えを基に構想し、意味や価値を創造していく過程

出所:幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について 平成28年12月21日 中央教育審議会 答申

この答申に基づき、「思考力・判断力・表現力」からなる「学力の3要素」として、今年度から展開される学習指導要領(小学校、中学校、高等学校、それぞれの学校で、教育課程(カリキュラム)の中身を決める際の基準)に盛り込まれ、そして、全面的に実施されていきます。

新しい学習指導要領改訂の方向性

新しい時代に必要となる資質・能力の育成と学習評価の充実
出所:文部科学省「新しい学習要領の考え方 -中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ-」より筆者作成

これらが、「AIの時代を生き抜くための力」であることに、読者の方々はお気づきになられたでしょうか。身の周りや世の中の問題・課題を見つけて、「自分だったらこうしていこう」と自分なりに考えや意見を出す。その姿勢がクリエイティブなアイデアを生む。自らの知識や経験をわかりやすく伝え、そして、周りの仲間と試行錯誤しながら、新しい考え、新しい価値を作り上げていく。

正解がない不確実な未来に対して、日本の教育が向かっていこうとしている方向は、間違っていない、ということは言えそうです。

ただ、そうであっても、多くの保護者は「将来の日本の教育」に対しての漠然とした不安を持たれているのではないでしょうか?

導入すること自体が正しかったかどうか、専門家の間で議論が分かれている大学共通テストにおける「民間英語検定試験の導入」「国語と数学への記述式問題導入」の延期や見送りなど、長い期間かけて準備してきたことが土壇場で変わってしまう、そのような状況を目の当たりにして、「本当に大丈夫か」というのが保護者の本音でしょう。

親が備えるべき「金融リテラシー」

では、文部科学省に対して単に不満を持つことが正しいのでしょうか。
筆者はそう思いません。日本国憲法では、日本の義務教育として、国民一人ひとりが教育を受ける権利を保障されています。前回の記事で示したPISAの結果からも、世界有数の教育機会を日本の子どもたちは享受できているのです。

国として、できることには限界があります。子どもを持つ親が「それ以上の教育」を求めるのであれば、子どもたちがAIの時代に生き抜くスキルを身につけるための教育投資ができるように、金融リテラシーを高めて備える、という意識をもっと持たなければなりません。

次回では、将来の教育投資に備えるために筆者が考える投資ポートフォリオについてお伝えします。

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