元始、投資信託はアクティブであった……。市場平均への連動を目指すインデックスファンドが全盛の今、あえてアクティブファンドに注目する短期集中連載。第5回は、アクティブファンドの肝である「銘柄選び」の具体的な方法に迫ります。

【第4回】運用実績を支える「銘柄選択のプロセス」に注目

銘柄選びの基準や調査体制は交付目論見書で確認

日経平均株価のような指数に連動する仕組みのインデックスファンドとは異なり、アクティブファンドは投資対象を運用担当者が自ら選びます。
投資先の企業をどのように選ぶかの「目利き」によって、投資信託の収益が決まります。銘柄選びがうまくいくかどうかが、アクティブファンドの生命線なのです。

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第4回でも書いたとおり、アクティブファンドを選ぶときには過去の運用実績とともに、下記の項目について事前に調べておくことが大切です。

・どんな「目利き」をしているか?(レストランにたとえると……)

銘柄選びの基準(レシピ)
→銘柄選びの根拠となる、資産運用会社の調査体制(料理人)
ファンドが実際に投資している銘柄とその理由(メニュー)

・その「目利き」を信頼できるか?

運用担当者の方針や運用哲学、人となり

アクティブファンドがどのような基準で投資対象を選んでいるのか。銘柄選択の判断を支える調査体制は……。これらの情報は「交付目論見書」に書かれています。

交付目論見書は「投資信託説明書」とも呼ばれる、いわば投資信託の仕様書で、投資信託を買う際に、販売会社(銀行や証券会社など)が交付することを義務づけられています。

実際のアクティブファンドを例に確認してみましょう。
下記はフィデリティ投信の『フィデリティ・日本成長株・ファンド』の交付目論見書からの抜粋です。

トラリピインタビュー

フィデリティ・日本成長株・ファンド
出所:フィデリティ投信(交付目論見書全文はこちら
※2020年2月版の交付目論見書から抜粋

同ファンドでは、銘柄選びの基準として、「日本企業の成長力に注目し、広く日本市場全体に投資機会を求める」としています。交付目論見書のこの先のページでは、どのような切り口で企業を発見し、選別するかがより詳しく書かれています。
中華料理でも四川料理と広東料理で味付けが違うように、「どういう味付けをするか=どうやって投資対象を選ぶか」は、投資信託の個性を決める重要な要素です。

その銘柄選びを支える根拠となる資産運用会社の調査体制が、フィデリティ投信においては、下半分に書かれている「ボトム・アップ・アプローチ」です。フィデリティ投信がどのような考え方に基づいて企業を調査しているか、調査体制における同社の強みがどこにあるかを、ページを割いて説明しています。

いくらレシピが良くても、料理人の腕が良くなければおいしい料理は作れません。良い素材を見極めて鮮やかに調理する料理人、投資信託で言えばリサーチ部門のスタッフの役割はとても重要です。

これらの情報は、どのアクティブファンドの交付目論見書にも書かれています。買う前にしっかり読んでおきたいところです。

実際に投資している銘柄は運用報告書で確認

アクティブファンドが実際に投資している株式などの情報は、最新の運用レポートで確認します。

下記はコモンズ投信の『コモンズ30ファンド』の組み入れ上位10銘柄の一覧です。

コモンズ30ファンド・組み入れ上位銘柄
出所:コモンズ投信(運用レポート一覧はこちら
※2020年7月版の月次レポートから抜粋

レシピ(銘柄を選ぶ基準)とメニュー(実際に投資している銘柄)が合っているか、組み入れ銘柄を見ることで答え合わせができます。
銘柄選びのプロセスと、その結果としての組み入れ銘柄の両方を見て、「このアクティブファンドは信頼できる」と感じられるかどうかは、もしかしたら過去1年の騰落率より重要なポイントかもしれません。

運用担当者のメッセージはホームページで確認

投資信託は私たちの大切なお金を預ける先ですから、どんな人たちが、どのような考え方に基づいて運用しているのか、気になりますよね。

資産運用会社の中には、ホームページで運用担当者の経歴やメッセージを紹介しているところもあります。こうした情報が最も充実しているホームページのひとつが、『ひふみ投信』のレオス・キャピタルワークスです。運用担当者の皆さんがなぜこの業界を志したかなど、かなり深いところまで掘り下げたインタビューが掲載されています。

ひふみの運用哲学(「ひふみ」ホームページ)

ここまで情報が充実している資産運用会社はまれですが、社長や会長のメッセージは多くの会社が公開しているので、目を通しておくといいと思います。
会社としての方針に共感できれば、マーケット環境が悪くなったときにもアクティブファンドを手放さずに耐えることができ、数年後に「あのとき手放さないでよかった」と実感できる日が来るかもしれません。

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