インフラ点検の重要性が高まるが人手が足りない
インフラの老朽化に伴って、点検の重要性も急速に高まっています。しかしここでも人手が足りません。
道路橋の点検では、設計、施工、管理に関する相当の専門知識を持つ担当者が定期点検を実施すると定められています。しかし現状では、市区の7%、町の24%、村の59%には、橋梁保全業務に携わる土木技術者が存在しません。
地方自治体による橋梁の点検では、直営点検の54%、委託点検の42%が資格を保有していない者によって行われています。静かな危機がここまで進行していると言える状況にあります。
コンクリートで造った建造物の場合、建設に関わる初期費用(調査費、用地買収費を含む)は、その建造物のライフサイクルにかかるすべての費用のうちの2割に過ぎないとされています。
建設物は完成した時点から劣化が始まるため、その維持費、補修費、最終的な解体費用などが必要となります。老朽化した構造物の維持・補修費用は、年間で初期建設費用の1割とされています。建設物のライフサイクルコストに占める維持・補修費は一般に想像されるよりもはるかに高いものになります。
日本の年間の建設投資額に占める維持・補修費の割合は、1995年の15%から2017年には29%にまで上昇しています。ここに青函トンネルの建設費7000億円、東京湾アクアラインの総事業費1兆4800億円の維持・補修費が乗ってくることになります。これが日本の将来にとって大きな負担となります。
そこに老朽化マンションの問題が重なります。マンションは1950年代から分譲が始まり、ストックとしては2018年末に655万戸に達します。20年後には築40年以上を経過したマンションが367万戸となり、これらが建て替えや補修などで社会問題にならないか心配されています。
高度成長期の道路や橋梁が一斉に更新期を迎える
しかしピンチはチャンスと背中合わせにあります。日本の建設会社は、これまで社会インフラに関する維持・補修工事はあと回しにして、さほど重視してきませんでした。しかしそれだけに最近は大きなビジネスチャンスとしてとらえています。補修計画を提案して建造物の診断にも力を入れています。
国土交通省では、2060年までの50年間で、社会資本の更新費用が190兆円にのぼると見込んでいます。高度成長期に建設された道路や橋梁が一斉に更新期を迎えることが理由です。
長寿命化を図らなければ、2037年度には維持管理と更新だけで現在と同じ規模の公共事業費が必要になると試算されています。そうなれば新規の公共事業はまったくできないという事態に陥ります。そのような事態に至らないためにも、また大規模な災害に備えるためにも、建造物の検査、維持・補修、更新がどうしても必要になってくるのです。
株式市場における注目企業としては、橋梁関連では、ショーボンドHD(1414)、ビーアールHD(1726)、ライト工業(1926)、宮地エンジニアリング(3431)、長大(9624)です。
測量関連では、ITを駆使した測量計測器のシーティーエス(4345)、測量土木CAD(コンピュータ支援設計)の福井コンピュータHD(9790)、土木ソフトのアイサンテクノロジー(4667)、調査測量のオオバ(9765)に注目しておきたいと思います。