本連載では、税理士に寄せられた相談者からの質問をもとに、主に「おひとりさま」の相続に関するさまざまな疑問に答えていきます。第6回は、子どもを産んだあとに離婚して親権を手放した後に、その子どもが別の人の養子になった場合の相続権について見ていきます。

実子が別の人と養子縁組を成立させたら「他人の子」?

なんと2人の実子のほかに、4人の養子を迎え入れているマドンナ。その他にもメグ・ライアン、シャロン・ストーン、スティーヴン・スピルバーグ等々、セレブの間で養子を受け入れることにオープンな国であるアメリカ。不妊などやむを得ない理由のある夫婦が養子を受け入れる例が多い日本とは、ずいぶん違う印象を受けますね。
「全ての子供には幸せになる権利がある」。日本でも、前向きでオープンな養子縁組制度の活用が増えることを願います。

ということで、今日は養子縁組制度についてご説明いたします。

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Q.
子どもが1人いるのですが、離婚をした元夫に親権があったため、子どもとはずっと離れて暮らしてきました。子どもはすでに成人しています。
最近元夫は再婚し、その妻と私の子どもが養子縁組をしたと聞きました。もう私との親子関係はなくなってしまったのでしょうか?

A.
成人したお子さんとの養子縁組は「普通養子縁組」となり、戸籍上の実親との関係は残ります。したがって、相続権もそのまま残ります。

今回はやや込み入った質問です。結婚して子どもを1人産んだものの、離婚をして子どもの親権を相手方が持ったことで、「おひとりさま」となった女性のケースです。

これまでに見てきたとおり、子どもは法定相続人の第1順位となります。たとえ離婚していても、自身が亡くなったときには、財産は子どもの手に渡ることになります。

法定相続人

問題は、今回の質問者のように、自分の子どもがほかの誰かの養子になった場合も、法定相続人の第1順位に該当するのかということです。直感的には、養子縁組をもって「他人の子ども」になったのだから、法定相続人からも外れるのではないかと考えてしまうのですが……。

そもそも「養子」とは法律上、どのような扱いになっているのでしょうか?

普通養子縁組では、実親との関係は変わらない

日本の現行の民法では、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。
普通養子縁組は、戸籍上の実親との関係は残ります。つまり、子どもは法定相続人となります。一方、特別養子縁組では実親との関係はなくなります。養親(養子縁組により、新たに親となった人)の立場から見ると、養子と実子の扱いは同じになります。

普通養子縁組と特別養子縁組の違いは下記のとおりです。

  普通養子縁組 特別養子縁組
縁組の成立 養親と養子の同意により成立 養親の請求に対し家裁の決定により成立
実父母の同意が必要(ただし、実父母が意思を表示できない場合や実父母による虐待など養子となる者の利益を著しく害する理由がある場合は、この限りでない)
要件 養親:成年に達した者
養子:尊属又は養親より年長でない者
養親:原則25歳以上(夫婦の一方が25歳以上であれば、一方は20歳以上で可)、配偶者がある者(夫婦双方とも養親)
養子:原則、15歳に達していない者
子の利益のために特に必要があるときに成立
実父母との親族関係 実父母との親族関係は終了しない 実父母との親族関係が終了する
監護期間 特段の設定はない 6月以上の監護期間を考慮して縁組
離縁 原則、養親及び養子の同意により離縁 養子の利益のため特に必要があるときに養子、実親、検察官の請求により離縁
戸籍の表記 実親の名前が記載され、養子の続柄は「養子(養女)」と記載 実親の名前が記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」等と記載

出所:厚生労働省

特別養子縁組では実親との親族関係が終了するため、養子縁組が成立する要件は特別養子縁組の方が厳しくなっています。養親が家庭裁判所に請求を行い、上記の要件を満たすことが認められてはじめて、特別養子縁組が成立します。
一方、普通養子縁組の手続きは、所定の届書を市区町村の役所に提出するだけです。

質問に戻りますと、質問者のお子さんはすでに成人しているので、原則として15歳未満でなければ成立しない特別養子縁組である可能性はきわめて低く、普通養子縁組が成立しているものと考えられます。したがって、民法上も質問者がお子さんの実母であることに代わりはなく、質問者がおひとりさまであり続ける限りは、お子さんが唯一の法定相続人ということになります。

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