「米国株は高配当株が多いから魅力的だけど、課税関係が複雑そうで手が出ない……」。そう思っている人も多いのではないでしょうか。米国株の配当金は日本とアメリカの両方で課税されるため、税負担を軽減するためには確定申告が必要になります。二重課税の仕組みとその対処法をまとめたので、米国株投資初心者の人は参考にしてください。

  • 米国では、株式の配当金にのみ10%課税される。売却益は非課税
  • 日本で確定申告をすれば、日米での二重課税を回避できる
  • 米国株の売却益や配当金は損益通算の対象となり、損失の繰り越しも可能

外国税額控除を賢く使って、日米での二重課税を回避

日本と異なる米国の税制の仕組み

米国株にまつわる税制は、日本とやや異なる部分があります。まずアメリカでは、株式の売却益には課税されません

アメリカでは配当金にのみ課税が行われ、税率は10%です。日本にくらべると株式売買にかかわる税金が、かなり優遇されていることがわかります。

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  日本 米国
売却益(譲渡益) 20.315% 非課税
配当金 20.315% 10%

※2021年4月時点の税制に基づく

日本在住で米国株の取引をする場合は、アメリカでかかる税金と日本でかかる税金の両方を納付することになります。売却益だけであればアメリカは非課税なので、日本株の取引をする場合と何ら変わりありません。

問題となるのは配当金の受取が発生する場合です。配当金は日本とアメリカの両方で課税されるため、その税率は合わせて30.315%にものぼります。
ただし、このままだと手元に70%弱しか残らないことになってしまい、日米両方で課税される二重課税を回避するためには「外国税額控除」と呼ばれる手続きが必要です。

外国税額控除を受けるために必要なこと

日本で米国株の配当金を受け取った場合、アメリカと日本の両方から税金を引かれる「二重課税」という状態になります。二重課税を回避するためには日本での確定申告が必要です。
確定申告を行えば、アメリカで天引きされた10%のうち一定の額を所得税から控除できます。この手続きを「外国税額控除」といい、控除額は以下の計算式で算出します。

外国税額控除額 = その年の国内外所得税額 × (その年の国外所得税額 ÷ その年の所得総額)

外国税額控除額は総所得における国外所得の割合を所得税額にかけた金額ですので、累進課税の仕組みにより、所得税額が多い人の方が外国税額控除の金額が大きくなります。

日米のイメージ
外国税額控除を受けずに日本で米国株の配当金を受け取ると、日米両方に税金を納めなければいけない。

節税効果の大きい損益通算も忘れずに。損失の繰り越しも可能

損益通算で節税対策できる

米国株の売却益や配当金は、日本株と同様に損益通算の対象にできます。株式だけでなくETFや投資信託も対象です。
節税対策として損益通算するには確定申告が必要です。申告分離課税を選択し譲渡損失を譲渡益と相殺することで、その分の税額を削減できます。

また、繰越控除の手続きをすれば損失を3年間にわたって繰り越しができるので、翌年以降売却益が出た際には損益通算し税金の負担を軽減できます。損益通算は節税効果が大きいため、株式やETFの売買で損失が出た場合はぜひ検討してみてください。

NISA口座で投資している場合はどうなる?

NISA口座は日本で非課税の扱いのため、これまで説明してきた「二重課税」の状態にはあたりません。そのため、外国税額控除の対象にはならず、アメリカで10%課税されて課税関係は終了です。NISA口座で米国株の取引をする場合は頭の片隅に入れておきましょう。

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