宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回に引き続いて、間もなく60歳を迎える50代後半のiDeCoのポートフォリオについて考えます。キーワードは「スイッチング」です。
- iDeCoのメンテナンスの理想は安値で買い、高値で売ることだが、判断は難しい
- iDeCoのメンテナンスを行う目安として「7つのケース」を想定する
- 株安が懸念される局面ではスイッチングで利益を確定、株式の割合を減らす
安値で買って、高値で売るには
【質問】
iDeCoで積立を始めて4年です。リスクを承知で、株式を多く配分してたので順調に増えちゃっているのですが、最近の株式市場は不安定で、マネー雑誌などを見ても「そろそろヤバイかも」などと書かれています。せっかくここまでプラスで運用できているのに、下落リスクが不安でなりません。もうすぐ60歳になる自分に、iDeCoの配分のメンテナンスなどについてアドバイスをください。
今回は、前回に引き続きポートフォリオのメンテナンスについて話していきます。
前回までにも話をしてきましたが、一般的にはiDeCo(個人型確定拠出年金)に限らず、老後資金のための運用は「長期」、具体的な期間は「10年超」が原則と思ってください。したがって、本来はiDeCoのメンテナンス自体も、運用を「長期」で考えるなら、必要ではなくなるかもしれません。
とはいえ、もうすぐ60歳になるという相談者のように、「短期」ベースでしか運用できないケースがありますので、その場合はideCoのメンテナンスは怠れません。連載32回目の復習になりますが、メンテナンスは「安値で買って高値で売る」が基本になります。
ただし、投資信託のような元本保証がない金融商品は、「安値」と「高値」が刻々と変動していくことが難点となります。この見極めは運用する人を苦労させる原因ですから、運用が初めての方には、適切な判断は無理でしょう。
ではメンテナンスの時期は、どう考えればいいのでしょうか?
iDeCoのメンテナンスを検討する7つのケース
ここでは、以下の7つのケースをご紹介いたします。
① 景気が回復しそうな時
② 景気が悪化しそうな時
③ 株価が上がりそうな時
④ 株価が下がりそうな時
⑤ 金利が上がりそうな時
⑥ 金利が下がりそうな時
⑦ 金融機関破たんなどの不測の事態
① 景気が回復しそうな時
景気の回復は企業業績の改善、株価の上昇、賃金アップと、経済の好循環につながります。景気の先行きを示す指標のひとつが株価であり、株価は景気の半年先を読んで動くといわれています。
② 景気が悪化しそうな時
経済が縮小していく過程では、徐々に企業業績が悪化し、決算も減収減益に転じます。株価はそれに先行して、下落が予想されます。一方、金利は過熱した景気を抑制するために高金利になっていることが考えられます。
③ 株価が上がりそうな時
株価が上がれば当然、株式に投資する投資信託などの値上がり益が期待できます。
④ 株価が下がりそうな時
③と同様に、運用商品の値下がり損の発生が予想されます。
⑤ 金利が上がりそうな時
景気と金利は相関関係があります。②でも少し触れましたが、金利の引き上げは基本、景気の過熱感を抑えるために行われる金融政策のひとつです。
⑥ 金利が下がりそうな時
金利の低下は企業にとってはプラスに働きます。銀行から借入がしやすくなるために設備投資などもしやすくなり、業績回復のシナリオも立てやすくなります。
⑦ 金融機関破たんなどの不測の事態
「不測の事態」の可能性を忘れてはいけません。過去のサブプライムローン問題やリーマン・ショックのような、破たんの影響が全世界に及ぶようになる時です。
不測の事態には東日本大震災のような未曾有の天災もありますが、経済が天災を乗り越えるには、今までの歴史が物語るように「復興力」がすべて。現代社会の復興力は強く、株価も短期的には動いても、少し経てば落ち着いているのが現実です。