投資信託で運用している資産を小分けして受け取る方法として「投資信託 定期売却サービス」を提供している証券会社があります。定期売却サービスの仕組みや特徴、毎月分配型投資信託との違いなどについて、ファイナンシャルプランナーの恩田雅之さんが解説します。

  • 投資信託の定期売却サービスは、運用資産の定期的な取り崩しが可能
  • 証券会社により、定期売却サービスの有無、対象銘柄、対象口座などが異なる
  • 投資家自身が定期売却する金額などを決定できることが毎月分配型投資信託との違い

投資信託の運用資産を定期的に取り崩していく

定期売却サービスは、リタイア後の生活資金を賄うことなどを目的として、投資信託の運用で積み上げてきた資産を定期的に取り崩していくことを証券会社がサポートするサービスです。

全ての証券会社が提供しているものではなく、定期売却の方法や対象となる投資信託、対象となる口座、受取日の設定などは提供している証券会社により異なります。

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以下、売却の方法から順にその内容についてみていきます。

定期売却の方法

定期売却は「金額」や「率」「口数」を指定する3つの方法があります。

金額を指定する場合は「1,000円以上1円単位」「10,000円以上1円単位」など各証券会社が指定する方法から投資家自身で定期売却の金額を決めます。

率についても、金額指定と同じように1%以上50%以内、0.1%刻みなど各証券会社で条件が設けられています。こちらも指定された範囲内で投資家自身が何%にするかを決めます。毎月の売却する率を設定する会社と、年間の売却率を設定し毎月売却でしたら÷12、隔月でしたら÷6で計算した率で売却していく会社があります。

口数による売却では、口数を設定して売却期間を計算するタイプと、売却期間を決めて定期的に売却する口数を計算するタイプの2つがあります。
※分配金再投資や追加投資などよる口数の増加は考慮していません。

金額指定の場合は、毎月受け取る金額は一定しますが「率」や「口数」の場合は売却時の基準価額の変動により受け取る金額も変動します。また、「口数」指定以外は基準価格の変動などにより受取期間を計算することはできません。

  定期的に受け取る金額 受け取り期間
金額指定 一定 未定
率指定 変動 未定
口数指定 変動 確定

※追加投資や分配金再投資をしない場合

対象となる投資信託

このサービスが利用できる投資信託は、証券会社ごとに異なります。楽天証券は「投資信託積立可能銘柄」、SBI証券は「「金額買付」および「積立買付」でお買付(他社移管)いただいたファンド」などさまざまです。また、積立買付を設定中のファンドは対象外となるケースが多いようです。

対象となる口座

対象となる口座は、ジュニアNISA口座以外の一般口座、特定口座、一般NISA口座、つみたてNISA口座、法人口座で利用できる会社もあれば、特定口座のみに限定している会社もあります。

受取日

受取日の設定方法も会社により異なります。毎月はどの証券会社も対応していますが、隔月の場合は偶数月・奇数月から選択できるところと、奇数月だけのところがあります。
受取日は15日や20日など受取日を会社が指定しているところと、1日~31日、1日~28日など利用者が指定できるところの2タイプがあります。

毎月分配型投資信託とどう違う?

毎月分配型投資信託の分配金の額はその投資信託の運用会社が決定します。当期収益と過去の分配金対象額から分配金の支払いを行うため、金額が上下することが多いです。

投資信託定期売却サービスは、投資家自身が定期売却する金額や率、口数を決定します。金額で設定した場合は、その投資信託の残高がゼロに近づくまで一定の金額を受け取ることができます。分配金のように額の変動を心配することはありません。口数や率で設定した場合でも、売却時の基準価格から受け取れる金額は計算することができます。また、分配金のように50円(1万口当たり)が20円(1万口当たり)に急に受取額が減るような可能性が低くなります。
ただし、投資信託の分配金のようにその投資信託の運用状況に応じて定期売却の金額や率、口数を調整してくれる訳ではありません

定期売却サービスは、最終的にその投資信託の残高がゼロに近づくまで定期的に売却を繰り返します。金額指定の場合は、基準価額の値上がりが続けば受取期間が長くなり、値下がり続けば受取期間へ短くなります。また、率や口数を指定した場合は、基準価格の変動によりその都度受取金額は異なります。

以上、定期売却サービスに仕組みや特徴についてみてきました。このサービスが利用できる証券会社でも、対象銘柄、対象口座、定期売却の方法、受取日などは各証券会社により異なります。
それぞれの特徴を理解した上で利用するかどうか検討しましょう。

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