米国株は一気に30%程度下落する可能性も

高値圏にある米国株も下がりますか?

エミンさん アメリカの株式市場は相当にリスクが高まっています。米連邦準備制度理事会(FRB)は近いうちにテーパリング(金融緩和の縮小)に踏み切ると思いますが、あまりに長く引っ張り過ぎました。

米国株の危うさを知るうえで分かりやすいのは、S&P500とNASDAQです。両指数は3月以降、右肩上がりで推移しています。一方で、個別に銘柄を見ると50%以上の銘柄が50日移動平均線を下回っています。つまり、大半の銘柄が調整しているにもかかわらず、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)をはじめとする一部の銘柄が牽引する形で指数が上がり続けているということです。

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現状は極めて不健康でバランスの悪い相場と言わざるを得ません。信用取引が増えていることも相まって、ひとたび大きな調整が起これば強制決済が加速し、一気に30%程度下落する可能性もあるでしょう。このフラジャイルな相場をつくったのは、FRBによるスーパーウルトラ緩和政策にほかなりません。もっと早く、少しずつでもガス抜きを進めるべきでした。

日銀のETF買い停止は英断だった

米国株が大きく調整すれば、最近元気がない日本株も一段と下がってしまうでしょうか?

エミンさん もちろん影響はありますが、米国株ほど下がらないでしょう。なぜなら、日本株は3月ごろからすでに調整を進めているからです。この背景には、日銀が日本株ETF買いを停止したことがあります。3月19日の金融政策決定会合で政策変更し、4月から買いを止めています。

この政策変更は日銀の英断だったと思います。それまでは「高値でも日銀が買ってくれる」という安心感があり、ソフトバンクやファナック、東京エレクトロンといった値嵩株が日経平均を押し上げていました。それがなくなったことで、割高だった値嵩株が適正価格に戻りつつあり、指数のバランスも良くなってきています。

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かたくなにガス抜きをしなかったFRBとは違い、日銀は半ば意図的に、日経平均を緩やかに調整させたわけです。

3月以降、日経平均が30,000円台から27,000円台に下げていることはむしろポジティブにとらえてよいのですね。

エミンさん はい。この調整は投資家に逃げるチャンスを与えました。今は米国株が強いから日本株に元気がないように思うかもしれませんが、この先の下落局面では米国株は日本株以上に下げることになるでしょう。次のショック後には、日経平均とNYダウは逆転すると見ています。

中国株に対する日本株の強さも目立っています。以前は中国株が下がれば日本株はそれ以上に下がっていましたが、現状の下げ幅は緩やかです。米中対立が鮮明になり、中国に資金が向かわなくなってきました。米国株は割高ですから、資金の行き先は日本しかありません。私がかねてより長期シナリオとして主張している、日本株が世界の株式市場の主役になる日が近づいていると感じます。

4つの条件を満たす銘柄に注目

次のショックが日本株の転機になるのなら、そのときが来るのが楽しみな気さえしてきます。どんな銘柄に注目するといいでしょうか?

エミンさん 今の状況は2000年代のITバブルと似ています。そのあと10年くらいはバリュー株の相場が続きました。足元では、鉄鋼、自動車、陸運、機械、化学といった日本の伝統的なセクターがかなり安くなっています。

例えば、私は以前から日本製鉄(5401)に注目していました。「もっとキラキラした銘柄がたくさんあるのに」という声もありましたが、その後しっかりと上がりました。引き続き、割安かつ業績の回復が見込まれるバリュー株を見ていくといいでしょう。

あとは、売られすぎてすごく割安になっている中小型のグロース株も悪くありません

銘柄選定ではどんな指標に注目すればいいですか?

エミンさん よく注目される株価収益率(PER)ではなく、株価純資産倍率(PBR)と株価売上倍率(PSR)を見ましょう。①低PBR、低PSR、②自己資本比率が50%以上、できれば70%以上、③営業キャッシュフローがプラス、④できれば配当あり。この4つの条件を満たす銘柄に注目してみてください。

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