現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第5回は、再生エネルギー関連の成長企業であるエヌ・ピー・シー(6255)を取り上げます。

  • エヌ・ピー・シーは、太陽電池に関連するさまざまな周辺事業を手掛ける
  • リサイクル・リユース事業に期待。特許を保有するリサイクル技術は業界で高評価
  • 2021年8月期は減収減益見込みだが、引き続き太陽光関連への需要は高まる

エヌ・ピー・シーはどんな会社?

エヌ・ピー・シーは東証マザーズ市場に上場する再生エネルギー関連の成長企業です。設立は1992年で、太陽電池に関連するさまざまな周辺事業を手掛けています。

「ものづくりを通して自然と社会と人間に必要とされる企業を目指す」を企業方針とし、太陽電池の製造装置のほか、太陽光発電所の検査・メンテナンスや太陽光パネルのリユース、リサイクル、パネル解体装置の提供を行っています。

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世界的な脱炭素や再生エネルギーへのシフトの中、太陽光発電は量産や技術開発により発電コストが年々低下しています。2021年7月に経済産業省が発表した発電コストワーキンググループの資料によりますと、2030年時点での事業用太陽光発電の1キロワットアワーあたりの発電コストは8円~11円程度と原子力の11円程度~、LNG火力の11円台後半を下回る想定となっています。

すでにドイツや中国などを筆頭に各国で大規模事業者や自治体によるインフラ整備が進められ、太陽光の発電容量は大きな成長が続いています

エヌ・ピー・シーの強みは?

エヌ・ピー・シーの強みは、創業以来20年以上にわたり、太陽電池製造装置から始まり、太陽光発電所の検査機器・検査サービスなど、太陽電池に関するあらゆる事業を手がけて来た知見です。

例えば、太陽電池モジュールであれば電力の変換効率を向上されるための新たな素材の開発や構造技術の改善などを顧客メーカーとともに進めて来ました。大口取引先として米国の太陽光発電システムメーカーのファーストソーラー社との関係が深く、バイデン政権が進める脱炭素を軸足としたインフラ投資計画が追い風となります。

また太陽光パネルのリサイクルやリユース事業も先行きの伸びが期待されます。今後は国内外で老朽化した大量の太陽光パネルが耐用年数を迎え、処理やリサイクルが課題となります。太陽光パネルは金属やガラスを使用しているため環境に配慮した廃棄や再利用が求められています。

太陽光発電装置
固定価格買取制度(FIT制度)などの後押しを受け、近年急速に普及が進む太陽光発電システム。今後は環境に配慮した廃棄や再利用が課題に

エヌ・ピー・シーは災害によって一部が破損した太陽光パネルを引き取って整備し再度販売するリユース事業やリサイクル事業、パネルの解体装置の販売を行っています。特に同社が特許を保有する「ホットナイフ分離法」は300℃に加熱したナイフでパネルを分離し、ガラスを割ることなく金属とともに完全リサイクルが可能です。低コストで効率的な処理方法として日本産業技術対象の特別賞を受賞するなど業界でも高い評価を得ています。

エヌ・ピー・シーの業績や株価は?

エヌ・ピー・シーの前期2021年8月期は、売上高が前期比30%減の55億円、営業利益が41%減の5億1500万円を見込んでいます

前の期まであった米ファーストソーラー社への装置ラインへの売上高が一服したことや客先のプロジェクトでの遅れがあったことにより減収減益を見込んでいます。もっとも米国ではパリ協定への復帰、中国からの輸入パネルに対する関税の継続などの政策による後押し、国内でも新築住宅への太陽光発電システムの設置義務が議論されるなど引き続き太陽光関連への需要は高まると思われます。

エヌ・ピー・シー(6255)の株価(週足、終値)
エヌ・ピー・・シーの株価チャート期間:2021年1月4日~2021年10月4日

2021年10月8日の終値は675円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約7万円弱です。直近では自民党総裁選で再生エネルギー関連がテーマとして関心が向かい上昇する場面もありましたが、その後の株価は落ち着きを見せています。再生エネルギーは長期にわたる成長テーマなので、また再度折りに触れ脚光を帯びる機会は多いと思われます。

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